※日経エンタテインメント! 2022年4月号の記事を再構成

結成して約20年が経過するUVERworldのフロントマンTAKUYA∞と、2019年結成のYOASOBIのコンポーザーAyase。世代やスタイルは違えど、今の日本の音楽シーンをけん引する2人に、曲作り、SNS、対海外など、互いの音楽論について語り合ってもらうスペシャル対談。後編はSNSやネットとの関わり方から。

YOASOBIのAyase(左)とUVERworldのTAKUYA∞
YOASOBIのAyase(左)とUVERworldのTAKUYA∞
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ファンとの距離感が近すぎて「距離感バグってる」

――音楽の伝播にSNSの果たす役割は大きくなるばかりだ。TikTokから多くのヒットが生まれており、YOASOBIの成功にも大きく寄与している。一方で手軽さと引き換えに、ファンとの距離感に悩まされるケースも少なくないようだ。

 またネットを介して、常に世界への扉は開かれている。韓国から羽ばたいたBTSやBLACKPINKのように、J-POPシーンから世界の頂を目指せるだろうか。

TAKUYA∞ SNSは個人で楽しんでいますし、もともと僕はファンとの距離感が近すぎて、よく「距離感バグってる」と言われるくらいだからあまり気にならないかな(笑)。

Ayase 今の当たり前の出方として、YOASOBIもネット、SNSから広がりました。だからこそ、オフィシャルでの発信は丁寧にするよう心掛けていますし、それによってファンの皆さんとも良いコミュニケーションが取れたらとも思います。距離感を近く感じてほしいと思う一方で、個人的にはSNSは精神衛生上あまり良くないなと思うときもあります(笑)。

TAKUYA∞ 自分の名前を検索したりする?

Ayase はい。以前はコミュニケーションツールとしてうまく活用できていたと思います。でも、知ってくださる人が増えると数も膨大になり、全く無関係な飛び火をしていることもある。気にしないと思っていても、やはり強い言葉には傷つきますね。

TAKUYA∞ 僕らもデビュー当初は、そうだった。指摘されることに心当たりもあったから、「バレたか」とぐさりときたし、ダサいところは修正していきました。今はどんなに距離が近くなっても、知られても困るようなことは1つもない。今の自分たちに納得できているから、この形が好きじゃない人もいるよねって思えるようになったかな。ただ、ファンクラブ限定のSNSでの厳しい言葉にはちゃんと向き合って傷つこうと思っているし、反省もしますね。

曲作りと歌が好きという原点に

――自粛生活の中で、今まで以上に音楽に接する人が世界中で増えたという。音楽との関わりに変化が生じた今を、2人は好機と感じているようだ。

TAKUYA∞ YOASOBIは、コロナ禍の生活の一部として流れてきた音楽で、僕自身どこで知ったか…。たぶんTikTokだったと思うけど、それくらい日常になじんでいたと思うし、近い感覚で捉えているんだろうね。

Ayase 走り出した途端にこういったご時世になったので、この環境じゃないYOASOBIを僕らも知りません。みんなが家から出られない、手元にあるもので楽しむ術を探していたタイミングに、僕らは救われた部分はあるのかなと。

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今はすごくチャンスのある時代

TAKUYA∞ 始まったとき、もうコロナ禍になってた?

Ayase 『夜に駆ける』は19年末なので、ギリギリ前ですね。

TAKUYA∞ 1曲目でいきなりガンと売れたんだ。

Ayase そう…ですね。最初のうちは、1発目としては上々かなというくらいの動き出しでしたが、2、3、4月にガンと上がりました。みんなが家の中で音楽やミュージックビデオを見聴きして、シェアするというタイミングのときに、あの曲があったのだと思います。

TAKUYA∞ すごい夢がある話だよね。いま、歌がめちゃくちゃうまい子ってたくさんいると言われているけど、昔からそういう人はいたはず。今なら、才能があれば披露したり出ていける場所がある。YOASOBIもそうだと思うし、チャンスを自分でつかめる、伝えるツールがあるのは理想的だと思いますね。

Ayase ありがとうございます。そういう意味では、今はすごくチャンスのある時代だと思います。

TAKUYA∞ 世界という話では、2年前から世界でも僕らのミュージックビデオが見られるようになったのはうれしいですね。コロナがなければ、アジア圏でライブをしようと話していたし、願望もあります。

Ayase 僕らも英語のセルフカバーをするようになって、ミュージックビデオやSNSで国外からのコメントが見られるようになり、思った以上に反応はあるのかなと。海外を意識した発信も続けたいですね。

TAKUYA∞ BTSの成功を見て思うのは、かっこいい音楽をかっこよく届ければちゃんと受け止められるんだということ。自分たちがかっこいいと思えるものを作り続けようと勇気をもらえますね。メジャーで15年以上やってきて、売れたい気持ちが強かった時期もありますが、今は身近な人たちを大事にしたいという思いが強い。自分たちのファンを大切にしていれば、その周りの人たちも、自分たちの姿や音楽を素敵だと思ってくれるんじゃないかなって。

――ツアーが思うように行えないなど、3年目となるコロナ禍の見通しは不透明感をぬぐえない。厳しい環境下で気づいたこと、前に進められたことはあるだろうか。

TAKUYA∞ ここ何年もの流れから、CDはいずれ消えると思っていたけど、ライブはなくならないと考えていました。でも、それをいとも簡単に失う恐ろしさを知ったのがコロナです。分かってはいたけど、思い知らされた。大切にしなければ、いつか失うかもしれないもの…。ならば、できるうちにやっておこうと、ライブができない期間に1日6時間とか、めちゃめちゃ歌を練習したんです。その結果、声帯の振るわせ方などで、「あ、いいな」と思えるようになりましたね。以前は、パッションを大事にしていたから、あまり歌を練習するものじゃないと思っていたけど、歌ってみたらまだまだうまくなる。それが楽しくて(笑)。

Ayase 世間が騒がしくなり始めた頃、ここから音楽で何ができなくなるんだろうかということはチームのみんなですごく話し合いました。会えなくなる直前に、スタジオに入ってレコーディングをできるだけやったりもしましたね。

TAKUYA∞ 自分の生活が本当にシンプルになることで、改めて気づいたことも多くて。思っていた以上に、UVERworldの音楽を作ることが好きだと再認識できた気がします。

Ayase 僕も、YOASOBIの曲を作るのが好きです。最初は自分から始めたプロジェクトではなかったので、正直、複雑な気持ちもありました。やっていたバンドが解散になり、わらにもすがる思いがあったからかもしれないし。自分が歌わない曲を作るにあたり、すごく葛藤しながら1曲目を書きました。でも、相方の努力している姿や、これまでにない評価をしてもらったことで、これも自分にできることなんだと自覚できるようになりました。

TAKUYA∞ 自分で歌う曲は書かないの?

Ayase これから書くつもりです。

TAKUYA∞ すごくいいね。YOASOBIではその曲は歌わない?

Ayase 歌いません。うちのボーカルはikuraですから。ただ、僕はもともと歌うために音楽を始めたので…。

TAKUYA∞ 声、いいもんな。

Ayase ありがとうございます。YOASOBIを大事にしつつ、ソロで歌に挑戦しようと思っています。YOASOBIでも自分がやりたい音楽をやれているので、今は自分が1番ワクワクしています。

TAKUYA∞ 足かせみたいなものがあると、今まで以上のところに行けることもあるんですよ、逆に。20年末のアリーナライブから、事前に曲の一部をファンの方たちに歌ってもらい、アプリで送ってもらっているんです。それをライブ中にスピーカーで流したら、僕らもみんなが歌っていたことを鮮明に思い出せたし、見てる人たちもそれを脳内で再生できたみたいで。うねるような一体感がフロアに生まれ、微妙なズレがなくなっていきました。21年末のアリーナツアーは、過去1番のツアーができたと感じて、うれしくて涙が止まりませんでした。音楽の、今まで知らなかった素晴らしさを感じられた瞬間でした。この新しく知れた気持ちを持ちながら、自由にライブができるようになったら、よりすごいものになるんじゃないかと期待しています。

TAKUYA∞(タクヤ)
1979年12月21日生まれ、滋賀県出身。2000年に、同郷の幼馴染と前身となるバンドを結成。UVERRworldのボーカルで作詞、作曲も手掛ける。05年にデビュー。UVERRworldとしては、21年12月にアルバム『30』をリリース。数年でメンバーがそれぞれプライベートスタジオを制作しており、「僕の新しいスタジオも間もなく完成するので楽しみ」だという
Ayase(アヤセ)
1994年4月4日生まれ、山口県出身。小説を元に楽曲を作る音楽プロジェクト、YOASOBIのコンポーザー。2018年よりボカロPとしても活動中で、様々なアーティストへの楽曲提供も手掛ける。現在、YOASOBIは4人の直木賞作家とのコラボプロジェクトが進行中。また、ストリーミングの累計再生数が3億回超えの『群青』が、第94回選抜高校野球大会の行進曲に決まった

(写真/中村嘉昭 ヘアメイク/mikitaro(octbre.)【TAKUYA∞】 YOUCA【Ayase】 スタイリスト/橘昌吾 【TAKUYA∞】 藤本大輔(tas)【Ayase】 衣装協力/masterkey、WIZZARD(TEENY RANCH 03-6812-9341)【Ayase】)