※日経エンタテインメント! 2022年4月号の記事を再構成

 2005年にデビューしたUVERworldは、08年に『儚くも永久のカナシ』でオリコンチャート1位を獲得。以後、コンスタントに作品を発表し続け、40枚目のシングル『AVALANCHE』(21年)は、綾野剛出演のドラマ『アバランチ』の主題歌となるなど、シーンの第一線で活動し続けている。

 一方、19年のデビュー曲『夜に駆ける』がSNSから爆発的に広がり、21年12月には配信日からの累計ストリーミング再生数が7億回を突破、史上初のダイヤモンド認定を受けたほか、同年『NHK紅白歌合戦』に2年連続出場したYOASOBI。小説などをベースに作られたコンセプチュアルな楽曲を、キャッチーなメロディーと色鮮やかな打ち込みサウンドで彩る。

 ライブを主戦場とし、パワフルなサウンドとパフォーマンスで魅せるUVERworldのフロントマン・TAKUYA∞と、トレンドを巧みに取り入れたクールでロジカルな作品を世に送り出すYOASOBIのコンポーザー、Ayase。音楽界の先頭を独自に駆ける2人が、シーンの過去・現在・未来について語った。

UVERworldのTAKUYA∞(左)とYOASOBIのAyase
UVERworldのTAKUYA∞(左)とYOASOBIのAyase

目に見える形で聴かれ方が変わった

TAKUYA∞ 僕らがデビューした05年頃は、ORANGE RANGEが300万枚売れたとか、そういう時代。僕らも、売上枚数や、年間に300アーティストがメジャーデビューしても翌年まで残るのは10組程度だとか、レコード会社から具体的な数字を提示されることが多かったですね。当時は、結果を出したい気持ちもあったし、数字に敏感になっていました。今はメジャーデビューとか、あまり関係ないし、1年に何組デビューしているか数も分からないですよね。レコード会社に頼らず自分たちでやったほうがいいんじゃないとかアドバイスされたこともある。ただ、中高生の頃からメジャーデビューを目標に音楽をやってきた僕らには、今も素敵な響きですね。

Ayase UVERworldさんがデビューしたとき、僕は10歳。おこづかいで初めて買ったCDがまさにORANGE RANGEさんでした。『ミュージックステーション』(テレ朝系)に出たらクラスで流行するという感じで、今よりみんなが同じものを聴いていた気がします。

TAKUYA∞ CDを買う人がいる一方で、僕らのデビュー頃から違法ダウンロードも出てきた。それが自分たちの将来にどう関わるのか考えもしなかったけど、今思うとそこが転換点だったように思いますね。「もう少し早ければ、10万枚ではなく100万枚は売れたよ」と先輩方から言われましたから。ただ、仮に違法ダウンロードでも曲が聴かれれば、きっとライブには人が来てくれると前向きに捉えてました。

Ayase 次第に音楽がダウンロードできるようになり、気軽に聴けるようになった感覚はありました。当時、携帯はまだ音楽を聴くツールではなく、その代わりに音楽プレーヤーが普及して、目に見える形で聴かれ方が変わったなと感じました。

アルバムに縛られなくてもいい

TAKUYA∞ 個人的には、好きな音楽をフィジカルで持っていたいし、アルバムという形が好きです。ツアーを考えるときも、アルバムがあるほうが演奏曲などを組み立てやすい。一方で、いい曲が出来たらその都度出せばいいとも思っているので、アルバムに縛られなくてもいいのかなと。アルバムを作る側としては、曲順にもこだわってるし、頭から通して聴いてほしいけど、自分も誰かのアルバムを飛ばして聴いたりするから(笑)、無理強いはできませんね。

Ayase アルバムに対しては、僕も近い考えです。「最新のアルバムです」とまとめると分かりやすいし、オフィシャルのプレイリストのような感覚かなと。フィジカルに関しては、音源というよりもファングッズという意味合いが強いのかなとも。モノとして手元に置きたい気持ちは分かるので、総集編を出すようなイメージです。

 音楽の聴かれ方は、CDから配信ダウンロード、そしてストリーミングと時代と共に変遷してきた。作り手として、それらに応じたサウンドを模索する日々だという。

TAKUYA∞ ほかのアーティストがどんな作り方をしているかは気になりますね。YOASOBIの音作りにアレンジャーは入ってるの?

Ayase 全部基本は自分でやっています。ボーカルレックとミックスはそれぞれずっと同じエンジニアさんにお願いしています。作詞作曲編曲と、ボーカルディレクションをした後に、歌入れした後のものをもう1度ミックスして最終形に持っていくまで僕は関わります。

TAKUYA∞ ギターも弾く?

Ayase いいえ。ギターの入った曲も少ないですし、基本的に打ち込みです。僕はYOASOBIの前にバンドをずっとやっていて、TAKUYA∞さんの記事をいろいろと読んでいるから、作り方も知ってるつもりになっているんですが(笑)、実際に歌先行で作ることが多いですか?

TAKUYA∞ 歌詞が先にあることは多いですね。メロディーが浮かんだときに、書き溜めてきたテーマとかサビの頭とかのかけらを当てはめるので、歌詞とメロディーはほぼ同時にできる。メンバーがメロディーを作ることもあるから、ほかの人に触らせないのは歌詞くらいかな。

Ayase メンバーとコライト形式で作ることも?

TAKUYA∞ 20年近く、全員で「Logic」(※)を使って共有してます。昔は説明書も辞書みたいなのが3冊もあって、録音する機能しかないような感じだった。今は、パソコン1台で曲が作れるから、「こんなに簡単に曲を作ってるの?」と思われそうで怖いなと思うこともありますね。

※Apple社が開発したMac専用の総合音楽制作ソフト

Ayase 分かります。YOASOBIは打ち込みなので余計にそう見えるらしく、実際に言われることもありますね。

TAKUYA∞ 俺らはドラムやベースが演奏するけど、打ち込みのほうが安定しているから音源では差し替えることが多いですね。iTunesでダウンロードされて聴かれるなら最終形はこれがいい、Spotifyならこのミックスにしようとか、今でもそれは研究し続けている状態です。その際は、海外のアーティストの音も参考にしています。6人編成で音に厚みがあるので、自分らが創りたい音とストリーミングで聴いてもらう音源では多少違うことも。ただ、そのなかの最大値を探りつつ、ライブで完結すればいいかなと思っていて。ライブを求める人が時代とともに増えたことはありがたいですね。

Ayase 僕らも、海外のアーティストを研究することは多いです。音質にこだわるのは、僕らが聴いてほしいと思う形で届けたいから。ストリーミングとYouTubeでは違った聴こえ方になるし、今はいろんなところから聴けるので、日々悩みながら探っています。

(後編へ続く)

TAKUYA∞(タクヤ)
1979年12月21日生まれ、滋賀県出身。2000年に、同郷の幼馴染と前身となるバンドを結成。UVERRworldのボーカルで作詞、作曲も手掛ける。05年にデビュー。UVERRworldとしては、21年12月にアルバム『30』をリリース。数年でメンバーがそれぞれプライベートスタジオを制作しており、「僕の新しいスタジオも間もなく完成するので楽しみ」だという
Ayase(アヤセ)
1994年4月4日生まれ、山口県出身。小説を元に楽曲を作る音楽プロジェクト、YOASOBIのコンポーザー。2018年よりボカロPとしても活動中で、様々なアーティストへの楽曲提供も手掛ける。現在、YOASOBIは4人の直木賞作家とのコラボプロジェクトが進行中。また、ストリーミングの累計再生数が3億回超えの『群青』が、第94回選抜高校野球大会の行進曲に決まった

(写真/中村嘉昭 ヘアメイク/mikitaro(octbre.)【TAKUYA∞】 YOUCA【Ayase】 スタイリスト/橘昌吾 【TAKUYA∞】 藤本大輔(tas)【Ayase】 衣装協力/masterkey、WIZZARD(TEENY RANCH 03-6812-9341)【Ayase】)

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