※日経エンタテインメント! 2022年4月号の記事を再構成

デジタル化の波が音楽業界にも押し寄せるなか、レコード会社の取り組みにも変化が表れている。では具体的にどのようなことを行っているのだろうか。第3回に紹介するのは、SNS研究やストリーミングサービスとの取り組みなどに力を入れるユニバーサルミュージックだ。

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 今やSNSが日常の一部となり、音楽の聴き方もCDからストリーミングへと変わりつつある。そんななかで、デジタルを活用したプロモーションは、レコード会社にとって不可欠なだけでなく、存在意義にも関わる重要なものだ。Adoや、ずっと真夜中でいいのに。、ヨルシカといったSNS発のヒットアーティストを多数抱えるユニバーサルミュージックは、近年デジタルのプロモーションに力を入れている。ストリーミングの普及や音楽の楽しみ方の多様化に合わせて、組織の形も変化させているのだ。

 ユニバーサルシグマ・メディアストラテジー本部、USM洋楽マーケティングストラテジー部 部長の久田耕平氏は、「プロモーションを打っていくには、リスナーの動向をしっかりと把握する必要があります。特にZ世代が今どこにいるのかというのは注視していますね。SNSで言えば、Z世代の可処分時間消費の中心は今やTikTokです」と語る。

 そのためにTikTokの特性を研究し、ヒットしている曲を分析。それらの情報をアーティスト側に常に共有できる体制を取っているそうだ。「TikTokは、頭の3秒を聴いてジャッジされると言われているので、本当に0.5秒や1秒ぐらいで無意識にいいなと思ってもらえるメロディーや歌詞が大切です。また、日本はカラオケ文化が強いので、カラオケで歌いたくなるような王道のメロディーかつ、瞬時にリスナーを引きつけられる歌詞を持つ曲は、TikTokでもやはり強いと分析しています」(久田氏、以下同)。

Z世代の動向を注視

 さらに、TikTok内で大きな影響力を持つ、インフルエンサー、歌い手、ダンサーなども常にチェックしているそうで、彼らが所属するエージェントとのリレーションも欠かさないという。

 また、TikTokで曲を知ったリスナーたちは、次のステップとしてストリーミングで曲を聴くため、ストリーミングサービスとの連携にも力を入れる。

 「日本でユーザーの多いApple Musicと、Z世代ユーザーの多いLINE MUSICの2つは、SNSのバズをいち早く再生数に反映しやすいという特徴があります。また、SpotifyのバイラルチャートはSNSでのバズを可視化できるチャートとして、楽曲ヒット、新人開発両面で日々注視しています。Amazon Musicは30代~40代に強い特徴があり、若者だけではなく、お茶の間にまで届けられる国民的ヒット創出には欠かせません。YouTubeはSNS、ストリーミング両面の機能を兼ね備えており、TikTokと並んで最も重要なデジタル宣伝プラットフォームと捉えています。そのようなパートナーと連携して、SNSでバイラルしている楽曲をストリーミングサービスでも見つけやすいよう編成していただいたり、ストリーミングサービスでのチャートやプレイリスト編成状況をアーティストのSNSからも発信することで、さらに楽曲を聴いてもらえるチャンスを広げることを意識しています」。

 Z世代の動向を注視するなかで、タイアップへの意識も変わってきている。テレビのドラマやアニメといった王道のタイアップに加え、映像系のサブスクサービスの存在も見逃せなくなってきているのだ。「この数年で会員数や視聴者が大きく伸びている分野で、若者たちからの注目度も高い。なので、ABEMAの恋愛リアリティショー番組や、Netflix、Amazonプライムのドラマなども、新しいタイアップの選択肢となってきています」。

 ストリーミング発のヒットが求められるようになるなかで、ユニバーサルシグマでは昨年、デジタル部と宣伝部を1つの部署にまとめるという組織変更を行った。久田氏は、「その結果、アーティストのSNS戦略からテレビに出て行くところまでを一気通貫で行えるようになった」と手応えを語る。

 今後のプロモーションのあり方については、「レコード会社だからこそできる多角的なプロモーションが大切です。最先端のSNS活用法、ストリーミングサービスとの取り組み、ラジオやテレビのキャスティングなど、それぞれどのタイミングでどのカードを切るかを見極める能力が求められていると思います」と先を見据える。

男女2人組ユニット・ヨルシカの『花に亡霊』は、Netflixアニメ映画『泣きたい私は猫をかぶる』の主題歌に起用された。同作品は2020年6月18日よりNetflixで独占配信中
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2020年夏にユニバーサルからメジャーデビューした5人組ロックバンドのNovelbrightは、西島秀俊主演のドラマ『真犯人フラグ』(日テレ系)の主題歌『seeker』を担当している
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