日本最大級のメタバースプラットフォーム「cluster」を運営するクラスター(東京・品川)が、9月15日から18日まで幕張メッセ(千葉市)で開催された「東京ゲームショウ2022」(以下、TGS2022)に初出展した。クラスターによる法人のバーチャルイベントの開催は世界最多の年間150回に及び、メタバース上の生活空間「ワールド」が4万4000個を超えるなど、個人ユーザーも急増している。このタイミングでのTGS2022出展は、クラスターにとってどのような意義があったのか。初日のビジネスデイに、代表取締役CEOの加藤直人氏と取締役COOの成田暁彦氏に話を聞いた。

加藤直人氏、成田暁彦氏(写真/辺見真也)
(写真/辺見真也)
加藤直人(かとう・なおと、左)
クラスター代表取締役CEO
1988年生まれ。大阪府出身。2015年にクラスターを創業。17年、メタバースプラットフォーム「cluster」をリリース。経済紙『Forbes JAPAN』の「世界を変える30歳未満30人の日本人」に選出。著書に『メタバース さよならアトムの時代』(集英社)。「TGS2022」では基調講演「ゲームは、絶対、とまらない。」にも出演
成田暁彦(なりた・あきひこ、右)
クラスター取締役COO
1983年生まれ。神奈川県出身。サイバーエージェントでネット広告営業を経験後、子会社による新規事業立ち上げを担当。その後、CyberZで広告部門の営業統括および企画マーケティング部門、海外支社の責任者を兼務。2019年10月よりクラスターに参画し、ビジネス、アライアンス、マーケティング全般を管掌。20年9月より取締役就任

「最も敷居の低いメタバース」体験を提供

 3年ぶりのリアル開催となったTGS2022。そのなかの最重要キーワードの1つが「メタバース」だった。メタバースとは何か。ゲーム業界にとってどんな存在なのか。業界関係者や一般来場者からも注目が集まるなか、日本最大級のメタバースプラットフォーム「cluster」を運営するクラスターのブースは、一際目立つ派手なデザインで会場に現れた。

 クラスターが目指しているのは「最も敷居の低いメタバース」。VR(仮想現実)やスマートフォンなどで体験できるコーナーには長い列ができ、多くの来場者がメタバースに触れた。またアプリの「cluster」内にもTGS特設ワールドが開設され、ブースで行われたイベントはワールド内に再現されたブースでもリアルタイム配信された。

 クラスターにとってTGS出展は初めてのことだ。しかも加藤氏は、TGSの会場に来ること自体も初めてだという。

初日のビジネスデイの午後、TGS2022のクラスターブースでプレゼンを行う加藤CEO(写真/辺見真也)
初日のビジネスデイの午後、TGS2022のクラスターブースでプレゼンを行う加藤CEO(写真/辺見真也)
会見には、各テレビ局、ウェブなど多くのメディアが詰めかけた
会見には、各テレビ局、ウェブなど多くのメディアが詰めかけた

加藤 メタバースは、ゲームの技術をベースにウェブやアプリのカルチャーを取り入れて、今までになかった新しいものを作る試みです。今回TGSに初出展するにあたって派手なブースにしたのは、メタバースというものがただのゲームの1ジャンルではないことを、しっかりと示したかったからです。大いに盛り上げて情報発信することで、この想いが届いてくれたらいいなと思っています。

成田 私は加藤とは対照的に、10年くらいTGSの会場に来ています。今回は来場者数が(入場制限等で最後のリアル開催時より)半減すると聞いていましたので、ブースが閑散とするんじゃないかと昨日まで心配していました。でも、蓋を開けてみたら例年に負けないような熱量を感じています。

 これまでクラスターのカラーはブルーなどの寒色を基調としていましたが、今回はチャレンジの1つとして、ポップさ、手軽さ、取っ付きやすさを意識して暖色系に振り切りました。みなさんに「雰囲気が変わったね」と言われて、手応えを感じています。

経済圏を形成「ワールドクラフトストア」

 初日には「cluster」の新機能である「ワールドクラフトストア」のオープンを、加藤氏が自ら発表した。ワールドはメタバース上の生活空間のことで、「cluster」内に誰でもつくることができる。ストアはワールドに置くことができるデジタルアイテムを売買できる機能で、メタバース内での経済活動を可能にするものだ。

 加藤氏は、メタバースの基本要素を「作る」「遊ぶ」「集まる」と表現する。ここに加わる「ワールドクラフトストア」を、クラスターが目指してきた経済圏のインフラを作る「最後のピース」と説明した。

加藤 メタバースの概念として最上段にあるのは、理想の世界を自分で作って、その中で生活できることです。ただ、楽しいだけでは続きません。人間のモチベーションや行動が持続的になるためには、そこにエコシステムが組み込まれていることが重要です。

 そのためにクリエイターが楽しみながらしっかり稼げる場所を作ることを、最初から意識していました。「ワールドクラフトストア」によって経済圏ができたことは、クラスターにとってもターニングポイントになると思っています。

成田 表現したい欲求は多くの人が持っていて、表現するメディアが時代とともに変わってきたと思っています。TikTokやInstagramがそうですし、YouTuberも憧れの職業になっています。表現者が好きなことをして生きていけることに対して、すごく憧れがあるのでしょう。

 同じように「cluster」に経済性があることも、サービスが永続的に発展していくうえで必要な要素だと思っています。「ワールドクラフトストア」はそのための最後のピースではありますが、経済圏としての第一歩を踏み出せたことに感慨もあります。

 ワールドクラフトストアにはクリエイターが作った膨大な数のデジタルアイテムが並んでいる。キーワードからアイテムを検索できる機能や、購入する前に自分のワールドに試し置きができる機能が用意された。アイテムは手頃な値段で買えるものばかりだ。

9月15日に正式オープンとなった「ワールドクラフトストア」。メタバースのエコシステムをけん引する新機能だ
9月15日に正式オープンとなった「ワールドクラフトストア」。メタバースのエコシステムをけん引する新機能だ

加藤 ストアができたからといって、いきなり多額のお金が動くわけではありません。本当に少しずつ、ゆっくりとお金が巡り始めるイメージです。クリエイターが生み出したクリエイティビティーが様々な形で巡るようになり、気づいたときにはとてつもなく大きくなっている。その結果として、バーチャル空間で稼いで生活していけるようになる人がたくさん生まれているような世界を目指しています。

ゲーム業界と一緒にグローバルに展開する

 クラスターがTGS2022の出展で重視したのは、メタバースの在り方を示すとともに、ゲーム業界にメッセージを発することだ。クラスターはクリエイターエコノミーを形成することと併せて、グローバルでの展開も視野に入れている。グローバルで必要だと考えているのは、ゲーム業界と一緒に取り組んでいくことだ。

加藤 僕が今大事にしているのは、人を巻き込んでいくことと、発信することです。成田のように優秀な人間が入社してくることも、メタバースのマーケットを作るうえでは大事です。社員だけでなく、ユーザーもクリエイターもどんどん巻き込んで、僕の考えに共感してくれる人を増やしていきたい。

 ひいてはゲーム業界も巻き込んで、メタバースを日本の一大産業に成長させていきたいと考えています。その際に、様々な産業がお互いのことを理解せず、「しようもないな」などと言い合っていると、日本にとって大きな損失になります。

 メタバースの根底にある技術はゲームの技術です。メタバースの世界観は、ゲーム業界と様々な業界がコラボレーションすることで実現できると思っています。

成田 クラスターはメタバースのプラットフォームですが、明確な競合がいるなかで1社単体でグローバルに出ていってすぐに何とかなるものではありません。そんななかで日本でコンシューマーゲームのIP(知的財産)を持たれている会社と手を携えて、一緒に海外へ出ていくことがすごく大事だと思っています。日本が世界に誇れるコンテンツはたくさんあります。ゲーム会社さんとはぜひ一緒にやりたいですね。

 クラスターはTGS2022で、企業とのコラボレーションを積極的に展開した。その背景を後編でお伝えする。

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