2022年7月期ドラマの話題作として注目を集めているのが、TBS系で毎週日曜21時から放送中の日曜劇場『オールドルーキー』だ。綾野剛が演じる元サッカー日本代表の新町亮太郎が、サッカーJ3チームの解散により現役の道を断たれ、37歳の社会人ルーキーとして奮闘するストーリー。現役のアスリートをサポートするスポーツマネジメント会社の「ビクトリー」を舞台に、主人公が新たな目標に向かって生きる姿を描いたヒューマンドラマであると同時に、もう一度娘が誇れる父親になるために奮闘する家族再生の物語でもある。

日曜劇場『オールドルーキー』で、主人公の新町亮太郎(綾野剛)らが勤める「ビクトリー」。これがメタバースとなり、誰もが楽しめる空間に
日曜劇場『オールドルーキー』で、主人公の新町亮太郎(綾野剛)らが務める「ビクトリー」。これがメタバースとなり、誰もが楽しめる空間に
『オールドルーキー』
『オールドルーキー』
現役を引退した元サッカー日本代表・新町亮太郎(綾野剛)がスポーツマネジメント会社「ビクトリー」で、現役アスリートたちのために奮闘。8月28日、第9話が放送。(日曜21時/TBS系)

ドラマの第5話が放送された7月31日から、新たな試みが始まった。メタバースの活用だ。主人公が働く「ビクトリー」のオフィスを、メタバースプラットフォームの「cluster」に100%に近い形で再現。視聴者はアバターでセットの中に入ることができるほか、出演者によるライブでのトークイベントなども予定されている。

 ドラマでメタバースを活用する狙いを、TBSテレビ編成局の東仲恵吾氏とTBSホールディングス事業投資戦略局の西川直樹氏に聞く。

東仲恵吾(ひがしなか・けいご)
TBSテレビ総合編成本部編成局所属。2007年TBS入社。『99.9-刑事専門弁護士-』『グランメゾン東京』『おカネの切れ目が恋のはじまり』『日本沈没―希望のひと―』などのプロデューサーを歴任。今作の番組の編成担当であり企画立案者
西川直樹(にしかわ・なおき)
TBSホールディングス事業投資戦略局所属。新卒でヤフーに入社し、M&Aやグループ会社の経営管理の業務に従事。2015年4月よりTBSホールディングスにてメディア・エンターテインメント領域のスタートアップへの投資を担当。22年3月にメタバース関連の新規事業開発を担う「バーチャルエンタメ推進プロジェクト」を立ち上げ、TBSらしいメタバースの取り組みについて日々模索中

オフィスのセットをメタバース空間に再現

――メタバース空間に現れたのは、『オールドルーキー』の主な舞台となるスポーツマネジメント会社「ビクトリー」の体験ワールド。アバターで入ってみると、奥行きのある空間や壁に掛けられたパネルなど、オフィスの細部が忠実に再現されている。セットをメタバース空間で体験できるのは、これまでのドラマにはなかった楽しみ方だ。

 ドラマのセットをメタバース空間に再現したのは、『オールドルーキー』が初めて。クラスターが手掛けるプラットフォーム「cluster」に、体験ワールドがオープンしたのは第5話が放送される1時間前の7月31日20時だった。番組が放送される前後の毎週日曜日20時から23時までの時間帯に、スマートフォンやPCを使って誰でも入ることができる。

 この取り組みを構想したきっかけを、東仲氏と西川氏は次のように説明する。

東仲恵吾氏(以下、東仲) スポーツマネジメントを題材にした企画を考えたのは、放送の2年ほど前からでした。立ち上げの段階から、オフィスで演じる時間が長くなると思い、「見ていて飽きないセットを作ってほしい」とオーダーしました。同時に、視聴者と触れ合えるように、セットをメタバース空間に作れないだろうかと相談していました。

 ただ、立ち上げの段階ではどのようなセットが出来上がってくるのかは想像できませんでした。実際にセットが固まってきたのは今年1月くらいで、メタバースの活用を本格的に検討し始めたのはそこからです。バーチャルエンタメ推進プロジェクトの西川さんに相談したのは4月頃だったと思います。

西川直樹氏(以下、西川) ドラマチームのみなさんに企画書をいただいてから、メタバース空間の制作をクラスターさんにお願いしました。クラスターさんを選んだのは、これまでのクラスターさんの各企業との取り組みを拝見し、短期間で開発できると思ったからです。

 オーダーはシンプルで、主人公たちが働いているオフィスを再現したメタバース空間を作って、視聴者やファンの方々が集える場所を作りたい。そこで何かインタラクティブなことをしたいというものでした。

 ドラマの舞台やセットをメタバース空間で再現するのは、発想としてはあったと思いますが、実際にはこれまでほとんどなかったのではないでしょうか。ドラマチームも私たちもぜひ取り組みたいと考えて、どうすればドラマにいい影響が出るのかを意識しました。

「遊び心」でドラマの視聴につなげる

――「ビクトリー」の体験ワールドには、7月31日のオープン初日から多くの人がアバターで訪れた。セットの中を自由に動いて、ドラマではなかなかアップで映し出されない部分に近づいて見るなど、美術館のように楽しむことができる。セットの中で自分のアバターで記念写真を撮影することも可能だ。さらに、時期は未定だが、出演者と交流できるイベントなどを計画していると東仲氏は明かす。

一般の人がアバター姿で「ビクトリー」の体験ワールドを訪れ、自由にセットを見て回ることができる
一般の人がアバター姿で「ビクトリー」の体験ワールドを訪れ、自由にセットを見て回ることができる

東仲 ドラマの出演者がこのメタバース空間に来て、ライブで話をしてもらうイベントを予定しています。タイミングは流動的になるとは思いますが、ドラマが放送される直前の時間帯に開催するのがベストだと考えています。

 アバターではありますが、ドラマのセットを再現した場所に出演者が来て、そこに視聴者も入って交流できるのは、すごく不思議で面白い空間になるのではないでしょうか。ドラマでもインスタライブなどを活用するケースは増えていますが、これは新しい試みではないかと。

 他にも体験ワールドを訪れた人に番組への応援メッセージなどのコメントをいただいて、そのコメントをメタバース空間と、実際のセットにも反映させることを計画しています。遊び心があるセットなので、違和感なく連携できると思っています。

――東仲氏が説明するように、『オールドルーキー』ではかなり意欲的なメタバースの活用を進めている。一方で、メタバース空間をオープンしたのは、ドラマの最初からではなく、物語が中盤から後半へと進むタイミングだった。その狙いを東仲氏は次のように説明する。

東仲 日曜劇場はターゲットを絞るというよりは、親子で視聴できるものを目指しています。スポーツという題材も、若い人から大人まで見てもらえて、世代関係なく共感できるジャンルの1つです。

 その上でメタバースを活用した理由は、ドラマに親近感を持ってもらう方法として、セットを体感できることが魅力的だと思ったことが1つ。もう1つは、ドラマの資源を活用する方法として単純に面白そうだったからです。

 物語がある程度進んだ時点でメタバース空間をオープンすることで、ドラマを見ている人がセットを認知した上で楽しんでもらえるだろうと考えました。また、一番期待しているのは、メタバース空間を楽しんでいる若い人たちに来てもらって、翻ってドラマの視聴に戻ってきてもらうことです。ドラマやメタバースに盛り込まれた遊び心を楽しんでいただきたいですね。

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