※日経エンタテインメント! 2023年2月号の記事を再構成
注目のバーチャルタレントに、ニッポン放送の吉田尚記アナと一心同体の“バーチャル部下”である一翔剣アナが聞く連載。今回のゲストは、ホロライブ所属で、チャンネル登録者数が165万人を超える大人気バーチャルアイドルの星街すいせいさん。2018年に活動を開始後、配信やイラスト・デザイン作成と並行し、高い歌唱力を生かした音楽活動にも精力的に取り組んでおり、1月には最新アルバムの発売と東京ガーデンシアターでのワンマンライブ開催を控えています。
――日本武道館ライブを目標に掲げていますが、VTuberの活動前からパフォーマー志向?
星街すいせい 漠然と「大きなステージに立ちたい」とずっと思っていました。文化祭の出し物でエアバンドを披露したことがあって、みんなの前で歌うことがすごく楽しくて。その気持ちが忘れられず、歌でも楽器でもダンスでも、それこそライブペイントでもいい、大きなステージで何かやりたかったんです。
――「歌」と決めていたわけではなかったんですね。
星街すいせい 「これ!」と決めていたわけではないのですが『アイドルマスター』が大好きで『アイマス』キャラになりたかったんです(笑)。近づくために、声優や声優アーティストのオーディションを受けていました。でも日の目を浴びることがなく、どうしようか考えている時にキズナアイちゃんとVTuberの文化に出合って。これなら大きなステージに立つことへ、つながるかもしれないと活動を始めました。
――そこから今のように音楽活動を本気でやろうと思ったのは?
星街すいせい 20年3月に開催した周年ライブで、約1年ぶりにオリジナルソングを披露したら、ありがたいお言葉をたくさんいただいて。その間、「ホロライブプロダクション」が立ち上げた音楽レーベル「イノナカミュージック」に所属して、「ホロライブ」に転籍して…といろいろありました。そんななかでも、私の音楽を待ってくれている人がこんなにいてくれたんだって。そこから「音楽にもっと力を入れていくぞ!」と決心がついて、自分の声を生かせる音楽や、やっていきたい方向性を真面目に考えるようになりました。
幅広いクリエーターとコラボ
――ソロだけでなく、22年にはTAKU INOUEさんとのプロジェクト「Midnight Grand Orchestra(ミドクラ)」としてメジャーデビューされています。活動の方向性には違いも?
星街すいせい ソロは“星街すいせいの経験”から今感じていることや、内面の気持ちを音楽で表現し、ミドクラは「宇宙戦隊」という世界観をテーマにした物語のストーリーテラー的な役割で音楽を紡いでいる感じですね。ソロではできないことをユニットでやらせてもらっているのでそれはすごく楽しいです。
――ソロの最新アルバム『Specter』がリリースされます。
星街すいせい 活動の中で感じた苦悩やつらい気持ちが詰まったアルバムになっています。ありがたいことにいろんな方に広く知っていただけるようになった半面、それに伴っていろいろ感じることが増えていて。でも、それを配信などで出すのは違う。であれば、音楽として表現してみるのはどうだろうと思い、このコンセプトにしました。己の中で葛藤している曲や、とがった曲がズラっと並んでいるので、ファンのみなさんに受け入れてもらえるか少し不安ではあります(笑)。
――Ayaseさん、じんさん、田淵智也さんなどとのコラボ楽曲も収録されています。制作で印象的だったことは?
星街すいせい 今回はご一緒したいクリエーターさんにお声掛けしたので、それぞれ印象的でした。リード曲の『みちづれ』を書いていただいたAyaseさんからは「人となりを知ってから曲が書きたい」とご提案いただき、直接ミーティングをしました。会話のなかで「活動でつらさを感じることの1つに、全く知らない別人みたいな星街すいせいのイメージが独り歩きしていること」と伝えたら、「“もう1人の知らない自分”って歌詞にできそうですね!」とおっしゃって作詞してくださったのが印象的でした。
――1月28日にはワンマンライブを東京ガーデンシアターで開催。
星街すいせい 今回は初の試みとして、生バンドでライブをやります。そのために、アルバムもバンドサウンドがメインの楽曲を中心に制作しました。VTuberとしてできるライブの最先端を行きたいと思い、演出面でも私の意見を取り入れていただいています。「Shout in Crisis」という物騒なライブタイトルではありますが、最後はハッピーエンドで終われるようないいものをみなさんにお届けします。
――アルバム、ワンマンライブを経て、この先の目標は?
星街すいせい 引き続き武道館ライブを目標に掲げつつ、さらにVTuber文化の発展に貢献していきたいと思っています。バラエティ番組や音楽番組に出たり、芸人さんとロケに行ったり、世間にとって当たり前の存在として浸透したらもっとエンタメが面白くなるのではと。以前は「そうなったらいいな」と他力本願だったのですが、今は私自身もその文化を引っ張る一員となれるよう、音楽からの発展を目指していきたいですね。
――最後に、VTuberを目指す方へアドバイスをぜひ。
星街すいせい 自分だけのキャラクターを確立すること。「この人と言えばこれ」と周囲に思ってもらえる要素が1つでもあるだけで、活動がしやすくなるはずです。