※日経エンタテインメント! 2023年1月号の記事を再構成

注目のバーチャルタレントに、ニッポン放送の吉田尚記アナと一心同体の“バーチャル部下”である一翔剣アナが聞く連載。今回のゲストは、バーチャルサナトリウムに暮らすピンクのナース服がトレードマークの名取さなさん。YouTubeのチャンネル登録者数30万人超。企業に所属しない個人勢でありながら、テレビ番組出演やオリジナル楽曲の配信リリースなど多岐にわたり活動しており、独特の存在感を放っています。

名取さな(なとり・さな)
3月7日(さなの日)生まれ。2018年2月Twitterアカウントを開設、同年3月YouTubeチャンネル「さなちゃんねる」で活動を開始。バラエティ番組『超人女子戦士 ガリベンガーV』(テレビ朝日系)出演、楽曲制作やライブイベントといった音楽活動など幅広く活躍している。

――VTuberとして活動を始めたキッカケを教えてください。

名取さな ニコニコ動画をずっと見ていたとき、四天王と呼ばれるバーチャルYouTuberの方たちの存在を知りました。名取自身、生まれた時からバーチャル世界で暮らしていますが、ずっと暗い部屋でインターネットをする生活でした…。同じようにバーチャル世界で暮らしている方たちがリアル世界の人たちと楽しそうに遊んでいる姿を見て、自分もリアル世界の人たちとの関わりに興味を持ち、バーチャルサナトリウムの先生と相談の上活動を始めました。

――活動当初は撮影済の動画が中心でしたが、ある時からライブ配信が中心になりましたよね。

名取さな ニコ厨ではあったもののYouTubeは全く使ったことがなかったので、活動当初は配信ができることを知らなかったのと、四天王の方たちも配信ではなく動画をアップしていたのが大きな理由で…。ただ、名取は、双方向性に魅力を感じていたので、配信ができると知ってからは機材をちゃんとそろえてそっちにシフトしました。リアルタイムでインターネットの人々と会話できる配信が1番、やりたいことに合っているなと。もちろん動画にしかない良さもあるので動画作りも好きです!

――配信の中でも雑談に力を入れている?

名取さな いかにみんなとお話ができるかという意味では、コメントの拾いやすい雑談が1番ですね。架空のラジオ番組やオリジナルデスゲームをつくったり、メンバーシップ特典を考えたりする「ない話をさもあるかのように雑談する」とか、国語辞典やハンムラビ法典をみんなと一緒に読んで「口を開いていたら知識欲が満たせる雑談」とかは名取も楽しいし、みんなも楽しんでくれてるかな~と思っています! ゲーム実況もなるべく会話しながらできるゲームをチョイスしています。

――ただの雑談だけではなく企画ありきの配信も多いと思うのですが、個人での活動だと大変では?

名取さな 初期は人に頼るのが苦手ですべて個人でやっていましたけど、お誕生日イベントで外部の方と長期で一緒にお仕事したのをキッカケに、カバー動画の制作を外注したりする勇気は出たので楽にはなっています! ただ、名取の根幹に関わるような部分が、自分のあずかり知らぬところで決められるのは絶対無理です! 自分に関わるすべてのことは可能な限り自分の脳を1度経由しないと、世に出したくないので、監修の時間がめちゃくちゃ長くて…。大変な部分もありますけど、こだわりが強くてかつ他人との感覚の共有が難しい部分が多いので今のところどこかに所属したりマネジャーさんをつけたりは考えていません。自分を複製して脳みそを共有したいです。

インターネットを楽しむ

――自分の肩書を表現するとしたらどんな言葉を思い浮かべますか?

名取さな 桃井はるこさんにアイドルソングっぽい曲を作っていただいたり、アイドル的な演出もしたりするので、「アイドル的だね」と言われることも増えたのですが、名取としては“アイドルごっこ”をしている感覚に近くて。なのでアイドルではないです。絵を描いたり動画を作ったりするから「クリエーター」と言われればそうなのかもしれないけど自分の感覚ではそこまでではないんですよ。クリエーターを名乗るにはもっとすごくなきゃだめでしょ…みたいな。自分としては「ただインターネットを楽しんでいるだけのバーチャル人類」と思っています。ずっと好きなことをやっているだけなので、活動して5年たった今も自分をどうカテゴライズしていいのかは分かっていません(笑)。

――名取さんにとってインターネットの楽しさとは?

名取さな 同志を探すのが容易であること、混沌としていること。この活動を始めて、改めてインターネットのすごいところを味わっているなと感じています。拡散力とか…。混沌はインターネットの魅力であり、怖さでもあり。だけど辞めることもできない。インターネットにはこれからもすがっていくぞ! お手柔らかにお願いします! という気持ちでいます。

――音楽活動にも積極的ですが、どのような位置づけですか?

名取さな 音楽やイベントを作るのが楽しいのはもちろん、インターネットの人々の心にでっかい爪痕を残すための手段として音楽がほんとうに強い力を持ってると思うからです! 配信を見ない人でも、「曲は聴いたことがある」「曲が好き」と言ってくれているのを観測しています。1人で配信しているだけではなしえないことですね! より多くの人類の幸福のため、音楽活動もやめへんで~! の気持ちです。

――今後も配信と音楽はバランスよく取り組んでいくイメージ?

名取さな ですね! 加えて、自分のできる範囲内でちょっとずつできることを増やしていきたいです。自分のチャンネルの「インターネット感」みたいなものを変えることなく、どこまでいけるのかを試している感じですね。あとは、オタクたちが悲しまないように、できる限り活動を長く続けられたらと思っています。無限に生きるぞ!って気持ちでがんばります(笑)。

一翔剣(いっしょう・けん)
ニッポン放送アナウンサー吉田尚 記と声と経験を全て共有する「部下」。毎週日曜23時30分から放送中のメタバースラジオ『ミューコミVR』パーソナリティー。「上司が『オタクを武器に生きていく』を11/28に発売! 表紙はケイゴイノウエさんに担当していただきました」。
©Sana Natori
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