※日経エンタテインメント! 2022年12月号の記事を再構成
注目のバーチャルタレントに、ニッポン放送の吉田尚記アナと一心同体の“バーチャル部下”である一翔剣アナが聞く連載。今回のゲストは、魔界からやってきた悪魔の女王にして、774inc.所属のバーチャルYouTuberユニット「ハニーストラップ」のメンバー周防パトラさん。YouTubeのチャンネル登録者数62万人超。ゲーム実況のほか、本格的なASMR動画(人の聴覚や視覚を刺激する、ゾクゾクしたり、心地よくなる音を収録した動画)に定評があり、「DLsite ASMR オブ・ザ・イヤー」を2年連続で受賞しています。
――配信を見ていると美少女系オタクコンテンツに造詣が深いなと。
周防パトラ 『らき☆すた』(注1)の(泉)こなたちゃんと同じように、父親がガチオタクで、家に男性向けオタクコンテンツがたくさんある環境で育って。幼少期に『シスター・プリンセス』(注2)を見て、美少女系コンテンツが好きになりました(笑)。ちっちゃくてカワイイ金髪美少女が大好きです! あとは、メイド喫茶巡りも趣味で。今でも仕事前に気合を入れるときなど、メイド喫茶に通っています。
――一オタクコンテンツ関連のお仕事をしたいと思ったことは?
周防パトラ オタクは趣味で続けながら、真面目に生きようと思っていました。でも、地声がアニメ声なので周りからは「普通の会社員は難しいのではないか」と言われていまして。1度は社会に出てみたのですが、真面目に生きられないと思って…。そんな時に「ハニーストラップで働かない?」と誘っていただいたんです。美少女ゲームの中に入ったように、カワイイ女の子たちに囲まれて生きられるなんて素晴らしいと思い、働いていた会社を辞めました(笑)。
――VTuber(以下、V)として生きるのを決めた時もオタク的な思考だったんですね。
周防パトラ はい(笑)。今でもオタク目線でVのイベントに行ったり、グッズを買ったりしています。お友達のVの子のフィギュアを買うこともありますね。良かったグッズは参考にできると思っているので、運営さんに「こういうグッズ、めちゃくちゃ良くないですか?」と報告します。オタ活が生かされるので、めっちゃ楽しいです。
注2…1999年からアニメや雑誌連載などで展開されたメディアミックスプロジェクト。12の妹が登場する
意識してきた2つのこと
――ASMRが超本格的なのも、オタク気質ならではでしょうか?
周防パトラ そうですね。Vになる前からいろいろなASMR作品を買って聴いていたんです。自分でも癒やしたいと思って、Vになってすぐに始めました。特に「人の声がないと眠れない」という意見を参考に始めたのがマッサージ系のASMRで。音だけでリアルさを追求するために、マッサージの講習会に通ってテクニックを学んだり、掛け声や声のトーンを意識したり、1本1万円のオイルを買って使ってみたり…。見えていないけど服までそろえています(笑)。
――すごく気合が入っている…。
周防パトラ 常に全力です(笑)。ここまでガチでASMRに熱を入れている人がいなかったから、多くの方に注目していただけたのだと感じています。先日も声優の上坂すみれさんがラジオで「パトラさんのASMRが大好き!」「パトラさんは全人類を救う!」とラブコールしてくださってすごくうれしかったです。
――今、チャンネル登録者数62万人超なのもASMRのおかげだと感じていますか?
周防パトラ それはかなり大きいと思います。あとは4年間、真面目に取り組んできたのも大きいと思っていて。コロナ禍の影響から家で楽しめるエンタメの1つとしてVそのものが、オタクではない方の目にもとまり、受け入れてもらってきたように感じています。その中でコツコツ続けてきたことは、大きかったのではないかなと。
――4年間の活動の中で、特に意識してきたことはありますか?
周防パトラ 2つあって、1つは知らない作品の案件は受けないようにしています。ゲーム実況で初めてプレーする作品もあるのですが、その場合は必ず初見プレーとして1から学ぶスタンスでやっています。中途半端な知識で作品の魅力を語られたくないのはオタク心としてとても理解できるので、みなさんの前でお話する時は「しっかり理解してから」と気を付けています。面白いことを言えないタイプですし、真面目に作品を愛すことが強みだと思います。
2つ目は、続かないことはしないようにしています。例えば、Vになってすぐ「ツンデレロリの女王」という自己紹介をしていたんですよ。初配信でツンデレをやってみたら、これは向いていないと気づいて…そこからツンデレは辞めました(笑)。好きなことをしているからこそ、楽しくいられる意識をしています。
――活動5年目ですが、今後したいことはありますか?
周防パトラ もっと身近な存在になっていきたいです。ホログラム化などでみなさんの日常に溶け込みたいと思っています。友達や恋人のように近い距離にいて好きな時に会いに行けるようになりたいですし、ASMRであれば香りや温度の共感を目指したいです。
――そうなるためにしていこうと考えている具体的な行動は?
周防パトラ リスナーさんの興味や何を求めているかは、調べたり聞いたりするようにしています。ゲーム実況やASMRをやったり、雑談配信でコメントを欠かさず見たり、今できる範囲で身近に感じてもらえることをいろいろしてみる。近い未来にテクノロジーが発展してより近い存在として会える時には、「周防パトラしかいない」という唯一無二の存在になれるように頑張りたいと思います。