※日経エンタテインメント! 2022年8月号の記事を再構成

注目のバーチャルタレントに、ニッポン放送の吉田尚記アナと一心同体の〝バーチャル部下〟である一翔剣アナが聞く連載。今回のゲストは、YouTubeチャンネルの登録者数が5月に100万人を突破した、にじさんじ所属の叶(かなえ)さん。ゲーム実況の配信では、並々ならぬこだわりを感じさせる一方、7月にはランティスよりメジャーデビューも果たします。

叶(かなえ)
7月7日生まれ。「にじさんじ」に所属しているバーチャルライバー。2018年より活動開始。VTuberユニット「ChroNoiR」のメンバー。22年7月27日にランティスより1st mini album『flores』でメジャーデビュー。同日、葛葉、ROF-MAOとともに3マンライブ「Aim Higher」をぴあアリーナMMにて開催する。歌ってみた動画では、再生回数が軒並み100万回再生を超えるなどその歌声への需要も高い

――VTuberデビューの時から、ゲーム配信を柱にすると決めていたのでしょうか?

 決めていたというより、僕にとって動画配信=ゲーム実況のイメージしかなかったんですよ。雑談もゲームをしながら、という認識でした。そもそも当時見ていたストリーマーの方がゲーム実況者ばかりで、自分が配信する上でも自然とそうなった感じです。

――RPGを5時間とか長時間配信することもありますよね。

 デビューする前から、1週間毎日12時間とか平気でやっていて。長時間プレーが苦にならないので、それなら多くの人の目に留まる可能性がある長時間配信をしてみようと。質より量を優先しました。それに1時間の中で質の高い雑談を考えて、とかはあまり得意じゃなかったので、長く続けるのは向かないだろうって。自分の中で1番バランスの良い活動スタイルを考えた結果でしたね。好きでやっていることだから、しんどさを感じることはないです。

――以前、「つらいことがあった時ほど長時間配信をしがち」と言っていましたけど、納得ですね。

 自分の配信は自分がルールだから、自由に優しい世界を作れるというのもあります。嫌なものは嫌、好きなものは好きを通し続けられる場所なんですよ。1番ありのままの自分でいられます。

――そんななかでも視聴者のために意識していることは?

 物語重視のゲームの長時間配信を減らしています。物語重視のゲームって最初から配信を見ないと分からないんですよね。そういう配信をする時は日時をしっかり決めて告知をするようにしていて。逆に『Apex Legends』や『VALORANT』などのFPS(一人称シューティングゲーム)は、どこから見ても楽しめるから、割とラフに配信しています。配信を全部見られなくても楽しめる形にはしたいなと思っています。

――全編を見てもらいたいとは思っていないんですね。

 それは1度も思ったことはないですね。配信しかしていない人の生活をすべて追うと、学生さんや社会人のみなさんは自分の時間がままならなくなるじゃないですか。ただ、毎日見に来てくれたらうれしいなとは思います。今はいろんな配信者さんがいますし、見たい人を見終わってから来てくれればそれで十分。変に義務感を持たずに見てほしいですね。

――それほどゲームが好きだったのに、プロゲーマーやゲーム開発者の道に進もうとは?

 思わなかったですね。プロゲーマーに誘われたことはありますけど、当時は今以上に実力世界でしたし、自分の身を投じられるほどの熱量はなくて。ゲームはあくまでも趣味。その時すでにストリーマーに憧れていたのもありますね。開発側に関しても、夢の国で遊ぶのが好きなだけで、それを作って誰かが遊んでいるのを見たいわけではなかったんですよね。

音楽という新しいステージ

――ただ、クリエーティブな活動という意味では、7月にアーティストデビューされますね。

 音楽活動については、事務所の方に興味があるとは伝えていましたが、積極的ではなかったんです。「歌ってみた」にしても、喜んでくださる方が多かったという面が強かった。僕、自分の声は好きなんですけど、自分の歌をうまいと感じることはなかったんですよね。

――ミニアルバム『flores』の制作で何かが変わった?

 制作を始めた頃は、表現したい音楽性とかも特になかったのですが、次第に「こういう音楽を届けたい!」とこだわりが強くなって。レコーディングでも、最初と後のほうの曲では、意識がかなり変わりました。レベル1からレベル10くらいの変化を感じています。

――「音楽」という超自由度の高いゲームタイトルを始めた感じ?

 本当にそうですね。アーティストという職業をレベル1からスタートしている感じ。まだまだ音楽は未熟で学ぶことだらけですが、アルバム制作で少しレベル上げして装備の選択肢が増えた感覚があります(笑)。今回のアルバムで、音楽を1から作ったことで、勉強させていただくこと、吸収したことがすごく多かったですね。

――タイトルの意味は「花」。

 ミニアルバムに収録した5曲は、それぞれテーマが違っていて、「幸せ」といったポジティブな感情の曲から、「心の弱さ」を見せるセンチメンタルな曲も入っています。タイトルの通りのアルバムになったので、いろんな花を楽しむように、いろんな楽曲を楽しんでいただけたらうれしいです。

――叶さんにとって音楽が新しい活動の軸になりそうですか?

 はい。自分が思っている以上に、学びが多く楽しかったので、今芽生えている感情を大事に育んでいきたいなって。もっと表現したいことを明確にしていきたいので、今後は自分でも作詞などに関わっていきたいと思っています。

1枚を通じて“花”がテーマ
多彩な5曲を収録
自身の初配信記念日である5月2日に先行配信され、アップテンポでポップな曲調が本人の優しい歌声とマッチする『ブロードキャストパレード』など5曲を収録。子どもから大人への成長を歌った『Kids』はBBHFの尾崎雄貴が楽曲提供。7月27日発売/ランティス/初回限定盤3520円、通常盤2200円
一翔剣(いっしょう・けん)
ニッポン放送アナウンサー吉田尚記と声と経験を全て共有する、「部下」。毎週日曜23時30分から放送中のメタバースラジオ『ミューコミVR』パーソナリティー。「毎日しゃべりすぎていたので、2022年7月は初のお休み月間。8月から復活します!」
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