※日経エンタテインメント! 2022年7月号の記事を再構成
今回、登場するのは、ライトノベルの挿絵やキャラクターデザインなどを手掛けるイラストレーターが本業のしぐれういさん。2019年にVTuberとして活動を開始し、チャンネル登録者数は73万人超え。配信では雑談やゲーム実況のほか歌ってみた動画も公開し、5月にはアルバム『まだ雨はやまない』でCDデビュー、初の有観客イベントも開催しました。様々な分野で活躍する思いとは? 聞き手は、ニッポン放送の吉田尚記アナと一心同体の“バーチャル部下”である一翔剣アナです。
――どのようなきっかけでイラストのお仕事に?
しぐれうい もともとマンガがすごく好きだったので、小学生の時はマンガ家になろうと思っていました。ただ物語を作るのが得意ではないことに気づいて…。そんな時ライトノベル(以下、ラノベ)の存在を知り、ストーリーを書けなくてもお話に付随した絵の仕事がある、と目指し始めました。1度ゲーム会社に就職したものの、会社員の時にラノベの挿絵のお仕事をいただいて。絶対にやりたいと思ったので、副業禁止だった会社を辞めてしまいました。そこからはずっとフリーで活動しています。
――その後、VTuberとしての活動を始められたんですね。
しぐれうい 会社を辞めてから、1年後くらいでしたね。ただ、フリーになって半年くらいで「娘」と呼んでいる大空スバル(注1)を生み出していて。娘の配信に出してもらう機会があったんですよ。
――大空スバルさんがきっかけ?
しぐれうい そうです。VTuber文化がすごく好きで興味もあったのですが、最初は、裏方仕事であるイラストレーターが表舞台に立つのはどうなのだろう? と思っていました。だけど娘の配信に出てみたら、VTuber世界の楽しさを知ってしまって。それを娘が察して「母ちゃんも自分でVやればいいじゃん!」と。そこで、「じゃあやるか!」と活動を始めました。
――VTuberのどんなところに興味を持っていたのでしょう。
しぐれうい “自分が介入できる2次元”という感覚があります。私、アニメやキャラクターコンテンツがすごく好きなのですが、そんな2次元の世界に、リアルタイムで自分も参加できるのがVTuberの魅力だなと。だからこそ、その素晴らしい世界を自分が壊したくないという気持ちも強くて。VTuberの世界に溶け込める自然な存在として、しぐれういをブランディングしていこうと意識しています。
――「#ういの校内放送」などの雑談配信では頭の回転の速さを感じますが、しぐれさんは、やっぱりクリエーター気質ですよね。
しぐれうい 本当ですか?(笑)。私はVTuberそのものがクリエーターに通じるんじゃないかと思います。みなさん、自分という存在をどうすればうまく表現できるかめちゃめちゃ考えて、1つひとつの要素を作り上げているなって。
作り手としての意識も変化
――クリエーターとしての意識も変化してます?
しぐれうい だいぶ世界が広がりましたね。イラストレーターは人との関わりが少ないのですが、VTuberの活動を始めてからは様々な種類のVTuberさんと関わるようになりました。それこそ人の形をしていない方もいて(笑)。イラストレーターの仕事をしているだけでは知り得ないような表現方法に触れられます。そんな発想があるのかと、みなさんのアイデアにかなり刺激を受けていますね。
――特に影響を受けたと感じることはありますか?
しぐれうい しぐれうい関連のイラストを制作する際は、仕事や趣味で描くのと違い、“エンタメの一部として描く”という意識に変わりました。配信をする時でも、しぐれういが行きたい空間や持たせたいアイテムを、全部自分で描けてしまう。実現したいことが何でもできるんですよ。イラストを描くという能力が、世界を構築するような力として使えることを知れたのは、VTuberになったからですね。
――アルバム『まだ雨はやまない』も、ご自身でディレクションを?
しぐれうい ほぼ私ですね。楽曲を制作してくださる方の選定、アルバムのコンセプト、オリジナル楽曲の内容、パッケージのデザインまですべてワガママを言わせていただきました。出すからには、「1クリエーターとして中途半端なものは出したくない。でっかい作品を作るぞ!」という気持ちを込めて出来上がった作品になっています(笑)。
――そのアルバムが本当に素晴らしかったです! 今後も様々なクリエーションに挑戦していきます?
しぐれうい チャンスがあれば何にでも飛び込みたいです。正直、具体的に何がやりたいとかは特にないのですが、肩書に縛られず、エンタメという形であればどんなクリエーションでも挑戦していきたい気持ちですね。VTuberは先が見えないと言いますか、突発的なイベントやアクシデントが起こって、楽しいものが生まれていくコンテンツだと思うんです。なので、私はその場限りのアドリブ感に身を任せて、与えていただいたことには真摯に楽しくクリエーターをやっていきたいなと思っています。
――その活動のなかで、しぐれさんが表現していきたいことは?
しぐれうい 底なしに明るくて、何事も諦めない前向きでポジティブでありたいですね。「イラストレーターだから絵だけ描け」と言われることもあるのですが、私はイラスト以外のエンタメも諦めたくない。だから、いろんなことに挑戦していきたくて。“しぐれうい=エンタメ”として見てほしいから、マイナスな感情などエンタメとしてノイズになるような要素はいらないなと考えています。そのためにも自己肯定感の高い、最高の存在であれたらいいなって思います。