※日経エンタテインメント! 2022年6月号の記事を再構成

今回のゲストは、にじさんじ唯一の男子高校生ライバーの剣持刀也さん。ネットの人気投票上位の常連で、YouTubeチャンネルの登録者数は63万人超。配信は雑談とゲーム実況が中心ですが抜群のトーク力を持ち、VTuberユニット「ROF-MAO」のメンバーでもあります。聞き手は、ニッポン放送の吉田尚記アナと一心同体の“バーチャル部下”である一翔剣アナです。

剣持刀也(けんもち・とうや)
8月22日生まれ、16歳。2018年「にじさんじ」バーチャルライバー2期生として活動開始。配信内容はゲーム実況や雑談など。21年にVTuberユニットROF-MAOを結成。22年7月27日ぴあアリーナMMにてリアルイベント『Kuzuha & Kanae & ROF-MAO Three- Man LIVE「Aim Higher」』を開催予定

――様々なメディアにも出演している剣持さんの配信は、コンテンツにまつわる話が非常に多いですよね。もともとアニメやマンガはお好きだったんですか?

剣持 VTuberを始める前はかなり分かりやすいオタクで。兄の影響で家にマンガがあって、気づいたら読んでいたので、どこからオタクになったか分からないくらい生粋です(笑)。アニメとマンガをこよなく愛し、剣道にいそしむ学生だったのですが、ある時そこにVTuberが加わりました。

――VTuberのどんなところに魅力を感じたのでしょう。

剣持 多種多様な世界の方たちがネットという場で交じり合う混沌としたところに魅力を感じたのだと思います。今のVTuberは一般視聴者を意識した配信者の側面が強いですが、2017年頃のVTuberは、人間だけでなく天使や動物が配信していたり、逆に何かを“演じる”人間がいたり、自分の世界観を動画配信で展開する表現者の側面が強かった。それが世界観の枠を越えて交流をしたり、今でいうメタバースに近いようなバーチャル空間も生まれて、その人たちが交わって、それぞれの世界が見えるようになったんですよ。その中で表現される彼ら彼女らの多様な世界観にすごく引かれて、いろんな世界を見てみたいとハマっていったように感じます。

――VTuberを始めたのは自分の世界を表現したかったから?

剣持 特に表現したい何かがあったわけではなく、単純に好きが高じてこの世界に交ざってみたいと思ったからです。高校生の剣持刀也のまま、VTuberを始めました。これはこれで楽でしたけど、今となっては別の生命体を演じるのも楽しそうだなとは思います(笑)。

――当時、特に影響を受けたVTuberの方は覚えていますか?

剣持 にじさんじの委員長(月ノ美兎)ですね。キズナアイさんを筆頭にバーチャルYouTuber四天王と呼ばれる人たちが台頭していくのを見て、今後どんどんいろんな世界が交わっていく瞬間なのかもしれないと衝撃を受けました。とはいえ、最初はバーチャル界のスターが集まってくる場所という印象があったんです。それを身近で自分も行けそうな場所と、いい意味で敷居を低くしてくれたのが委員長でした。普通に生きている僕でもこの場所に入れそうと思えて、VTuberを始めましたね。

意識は今でも普通の学生

――“普通に生きている僕”がVTuberの世界に飛び込んで、今では登録者数60万人超にまでなったけどまだ自意識は“普通”?

剣持 いまだにそうです。ファンが高じてこの世界に入ったから、自分のことは“最前線にいるファン”という認識です(笑)。後輩だとしても、何回も一緒に仕事をする方でも、VTuberへのリスペクトはかなり大きく持っています。

――そうはいっても、長く配信を続けるのは大変ですよね。

剣持 人気になろうと思って今流行のゲームを調べて毎日配信して…とやるのは大変だと思います。でも僕は週1回くらいの頻度で、やりたいゲームをやる、話したいことを話すだけなので、ちょっと違うのかなって。本来もう少しちゃんとやらないといけないと思っていますけど、やっぱりどこか仕事にしたくないんですよ。自分の中で“趣味”の範囲から抜けないように一線引いているし、高校生ライフが毎日大変だから、そんなにガチでやろうと思っていない。非常に省エネです(笑)。

――ほとんどの場合、ガチに取り組まないと剣持さんほどの規模にはならないと思うのですが…。

剣持 運の良さとメンタルの強さでどうにかなっています。これだけマイペースに配信しているのに、想像以上の見え方になっていることを説明するにはそれしかない。隣の芝生は青いと言いますけど、僕が1番青いと思います(笑)。

――VTuberとして将来こうなりたい、という目標もない?

剣持 不思議なことに自分が何かをしたいと思うより先に、想像以上のことができているんですよ。僕の夢が現実的なのかもしれないけど、周囲のおかげで簡単にその夢を上回ってしまう。例えば、昨年の夏、ROF-MAOメンバーと一緒に無人島に連行されてロケをさせられたのですが、普通VTuberでそんなことをしようとは思わない。だけど、絶対に無理だろうと思う制約を破壊して、結果できてしまった。それは本当にありがたい限りで、この業界でできることはかなりやらせてもらっているから、願望はあまりないんですよね。

――今年7月にはぴあアリーナMMでROF-MAOのイベントが予定されています。この状況についてどう感じていますか?

剣持 いまだに自分でもよく分かっていなくて…。僕は「VTuber=ビジネスとして成功できる存在」という感覚がない時代に趣味で始めていて、今もその地続きなんですよ。僕はずっと何も変わらずに活動を続けていて、周りの見え方が変わってきただけだと思っているので、正直フワフワしています。今も、僕はただの高校生なんです、としか思っていないですね。まぁそんなこと言いながらしっかり良いライブにはするんですけど(笑)。

一翔剣(いっしょう・けん)
ニッポン放送アナウンサー吉田尚記と声と経験を全て共有する、「部下」。毎週日曜23時30分から放送中のメタバースラジオ『ミューコミVR』パーソナリティー。
(C)ANYCOLOR, Inc.
10
この記事をいいね!する