
日本の半歩先を行く米国Z世代は今、どんなトレンドをつくり出しているのか。(1)サステナビリティー(社会正義)、(2)ファイナンシャルヘルス、(3)マインドフルネス(瞑想、めいそう)という3つの視点から、注目を集める最新の商品・サービスを紹介する。
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が起こったこの2年間で、米国のトレンドは大きく変貌した。それをけん引しているのがZ世代(10~25歳前後)だ。すでに人口比で米国最大の世代グループとなっているZ世代は、次々に大学を卒業し、消費の担い手になりつつある。トータルの可処分所得は3600億ドル(約45兆円)ともいわれ、2019年の3倍に膨れ上がった。
米国でも彼ら彼女らが生み出すトレンドを知ることがビジネス成功の大前提であり、逆についていけない企業は取り残される時代が来ている。そのトレンドは大きく見て、次の3つの視点で切ることができる。
(1)サステナビリティー(社会正義)
(2)ファイナンシャルヘルス
(3)マインドフルネス(瞑想、めいそう)
まず、米国のZ世代はあらゆるビジネスに対し、「サステナブル」であることを要求する。日本でサステナブルといえば、「環境」を連想するかもしれない。しかし、米国ではサステナブルという言葉が、雇用における差別や搾取の撤廃など、社会正義を含む広い意味で捉えられている。社会正義は、Instagramの2022年トレンド予想でカテゴリーの一つにも入っているほどだ。
その背景には、人種的に多様なこの世代にとってダイバーシティー(多様性)&インクルーシブ(包摂)が重要な要素になっていることがある。さらに、パンデミック中に燃え上がったブラック・ライブズ・マター運動と大統領選の影響で、Z世代がこれまでになく政治的な関心を強めたことも要因だ。
今やサステナブルはあらゆるヒット商品・サービスの大前提。ビーガンミートと呼ばれる完全植物性の代替肉はどのスーパーでも買えるようになり、ビーガンメニューはファストフード店から高級レストランまで必須アイテムとなった。ファッション市場では、動物由来の革を使わないビーガンスニーカーからサーキュラー(循環型)ストアまで、その動きは急速に進んでいる。
一方でパンデミックが雇用の大変動をもたらし、政府による社会保障の破綻が懸念される中、Z世代の間でも将来への危機感が広がっている。そこで老後設計の要として、暗号資産(仮想通貨)や株の新たな運用により健全な未来設計をする「ファイナンシャルヘルス」を求める動きも強まっている。同時にパンデミックで深刻化したメンタルの問題に立ち向かうために、「マインドフルネス(瞑想)」への希求も高まる一方だ。
これら3つの視点は、SNSやそこから生まれるインフルエンサー、大企業までを巻き込みながら、相互に絡み合って大きな潮流をつくっている。そのダイナミックな動きを体現している7つの事例をこれから紹介していきたい。
注目集める「ビーガンレザー」「サーキュラーストア」
(1)サステナビリティー(社会正義)
【ビーガンレザー】
Telfar(テルファー)は、ニューヨークを拠点とするバッグを中心としたファッションブランドだ。大きな「T」の型抜きが象徴的で、ビーガンレザーを活用するため動物愛護や環境保護の観点からも強い支持を得ている。特に、スタイリッシュなビーガンレザーバッグは「ブッシュウィック(ブルックリン)のバーキン」と称され、人気がありすぎて常に即完売しているほどだ。ブランドを象徴するショッピングバッグは157~257ドル(約2万~3万2000円)と若者が手を出しやすい価格帯でもある。
テルファーは欲しい人全員がバッグを買えるように、定期的に数日間の予約イベントを開催。その期間に予約を受け付けて生産するシステム(バッグ・セキュリティー・プログラム)を構築している。入手まで時間はかかるものの、ファンへ確実に商品を届けるための配慮だ。20年に実施した最初の予約イベントでは、24時間に2000万ドル(約25億円)を売り上げ、業界を驚かせた。
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