「売らない店舗」は売れるのか? 第6回

高島屋は2022年4月下旬、ショールーム型店舗「Meetz STORE(ミーツストア)」の1号店を新宿高島屋(東京・渋谷)に開き、「売らない店」に参入する。同店にはZ世代の開拓を狙った秘策がある。それが「ギフト」だ。独自のECサイトと連動して、店内で見た商品を住所を知らない相手にもSNS経由などで届けられるサービスを展開する。SNS時代の新たなギフトに対応することで、若者間のカジュアルギフトを加速させる。

ショールーミング型店舗「Meetz STORE(ミーツストア)」1号店をオープンする新宿高島屋。名称には、(来店客から見た)商品との出合い、(ブランドから見た)新たな消費者との出合い(Meets、ミーツ)という意味を込めている
ショールーミング型店舗「Meetz STORE(ミーツストア)」1号店をオープンする新宿高島屋
 日本一の巨大ターミナル、新宿駅の「新南改札」「ミライナタワー改札」から少し歩くと、新宿高島屋の目印である「Takashimaya」の赤いロゴが目に入る。その2階、店内でも人々の往来が最も多くなる場所に2022年4月下旬、高島屋の新業態、ショールーミング型店舗をオープンする。

 店舗名は「Meetz STORE(ミーツストア)」に決まった。Meetsという言葉には、来店客から見た商品との出合い、ブランド側から見た新たな消費者との出合いという意味を込めているという。D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)ブランドを中心とした約25ブランドの商品に加え、「食・グルメ」「ライフスタイル」「ビューティー」「日本アート&クラフト」「エシカル」の5ジャンルに精通したキュレーターが厳選した商品を出展・販売する。

 特集の第1回でも触れたが、高島屋が売らない店に参入する理由をひもとくキーワードの1つが、「従来の百貨店ビジネスからの脱却」だ。新業態の運営を担うタカシマヤトランスコスモスインターナショナルコマース(TTIC、本社:シンガポール)の川口貴明CEO(最高経営責任者)は、「実店舗における来店者数が減少する中、在庫を抱えて、販促施策を入店するブランドやメーカーに準備してもらう従来型の商売は成り立たなくなることは、もう数年前から見えていた」と百貨店事業の課題を口にする。

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 百貨店ビジネスの脱却で狙うのは、D2Cを始めとする新興ブランドの開拓だ。昨今、ECサイトを主軸にネットを介して顧客と直接つながり、販売する新興ブランドが増えている。中にはネットやSNSを駆使したブランディングや顧客との関係性の構築にたけ、熱烈な支持を集めるブランドも少なくない。ただ、D2Cブランドを展開するのはスタートアップ企業が多く、百貨店に常設店を設けるだけの資本力がないケースもある。

 そこで、Meetz STOREでは重荷になる「在庫」を店頭から切り離し、出展企業が接客に当たるスタッフの派遣も不要とした。これによりブランドやメーカー側の負担を減らしながら、新宿高島屋という都心の一等地への出展が可能になった。

 百貨店側は、在庫の保管場所を削減することなどで生まれた空きスペースを活用し、“売り場”を再構築する。「百貨店にとって、ショールーミングストアは(生き残りの)1つの大きな解答だと考えている」(川口氏)。従来の百貨店から事業構造を大きく変革することで、出展のハードルを大幅に下げる。そうして顧客支持の高いブランドの出展を加速させ、館全体の価値を向上することで、集客力の維持につなげたい考えだ。

 出展企業が出展料に見合った成果を上げられるように、売れる仕組みはきちんとつくる。それが、店舗と連動した専用ECサイトだ。Meetz STOREは在庫を置かないため、来店客は商品を持ち帰ることはできない。商品を購入したい場合は、Meetz STOREと連係した独自のECサイト経由か、出展企業のECサイトで購入する必要がある。Meetz STOREのECサイトで商品を購入した場合は、後日、専用倉庫から指定先に配送される。

 ただ、1つ疑問が残る。商品を購入する際、ブランド自前のECサイトではなく、Meetz STOREのECサイトで購入する利点は何か。そこに百貨店ならではの価値が隠されている。それが「ギフト」需要への対応だ。

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