2022年4月4日発売の「日経トレンディ2022年5月号」 ▼Amazonで購入する では、「老いない食事&ゆるトレ」を特集。元プロテニス選手の松岡修造氏は、50代の現在でもなぜ老いを感じさせないのか。その秘密は、「“ハッピー食い”」「ミトコンドリアに集中」といった幸せな感覚を優先させている点にある。松岡流の老いを楽しむ方法をインタビューした。

※日経トレンディ2022年5月号より。詳しくは本誌参照

松岡修造さんがいつまでも若い理由は、老いを楽しんでいるから
松岡修造さんがいつまでも若い理由は、老いを楽しんでいるから
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 松岡 修造
1967年11月生まれ、54歳。10歳でテニスを本格的に始める。95年のウィンブルドン選手権で、日本人男子として62年ぶりにベスト8進出の快挙を成し遂げた。98年にプロツアーから卒業。2000年からはテレビ番組『くいしん坊!万才』に出演するなど、幅広い分野で活躍中。188㎝、85kg

──はつらつとしている松岡さんは、老いと無縁に思えます。秘訣は何でしょうか。

 僕も現役選手時代と比べれば体脂肪率は増えたし、白髪も生える。その意味では読者の皆さんと同じで、「松岡修造はすごい」というわけではありません。

 僕自身は「幸せな感覚で老いを受け入れたい」といつも考えています。ケーキは1度に4つくらい食べるときがあるし、食事が楽しくなるお酒もほどほどに飲みます。糖分もアルコールも、老化を進めることは間違いない。けれども、それらを遠ざけるかどうかを決めるのは自分自身で、僕は「取る」判断をする。脳が喜ぶと思うし、それは色々な意味で活性化につながっているんじゃないかと思います。

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──では食生活に何らかの縛りはなく、結構自由?

 僕は太りやすい体質ですが、ジュニア選手に指導する立場であり、人前に出る機会も多い。だからこそ体重計に毎日乗ったり、食べ過ぎたら翌日は控えたりと、最低限のコントロールはします。そして食事そのものは栄養バランスを考え、野菜であればニンジンやピーマンなど、色とりどりの食材で食卓がカラフルになるように意識。このことはジュニア選手にも教えています。テニスの技術以外に、「アスリートとして、どう食べるべきか」ということについても、伝える必要がありますから。

 他にやっているのは「16時間ダイエット」です。夕食から16時間は何も食べないことで体重をコントロールするのですが、それとは別に「朝たん」(編集部注:「朝ご飯たんぱく質」の略)というメソッドもやっていて(笑)。夜眠っている間に減ってしまうアミノ酸を朝のたんぱく質摂取で補い、筋肉量の低下を抑えるのです。だから厳密には「16時間何も食べない」のでなく、起床後にヨーグルトなど乳製品は口にしています。

──それ以降の食事はどうしているのですか。

 朝昼兼用で、自分では「ハッピー食い」と呼んでいます。僕にとって「食」は唯一の趣味。だから「何となく」ではなく、「本気」で食に向かいます。例えば、飲食店で寿司や天ぷらを食べるときは、職人さんの一挙一動から目を離さず、作ってくださったものに集中して食べます。一言も喋らず、2時間、3時間と食べ続けることも珍しくなく、結果的にたくさん食べることになる。とても幸せです。その間、他のことは一切考えません。食べることに集中するのは、ファストフードもお弁当も同じです。本気で食べることによって、“若返り液”が出ているような気がするんですよ。

 加えて気を付けていることとしては、夕食なら睡眠の質を良くするために就寝の3〜4時間前、大体18時台に取るようにしていることでしょうか。

──寝ることについても、真剣なのですね。

 できるだけ8時間の睡眠を確保するようにしています。寝る1時間半前までにはお風呂に入り、39〜40度のお湯に15分ほどつかって体をゆっくり温める。そうすると布団に入る頃に体温が下がって、睡眠に入りやすいんです。枕は自分に合ったものを使っています。ただ、寝ることに一所懸命ではあるのですが、大事なのは「寝るぞ、寝るぞ!」ではなく「どうすれば最もリラックスして眠れるか」と考えること。自分の体の声に耳を傾けながら対応している感じです。あと、寝具選びは自分に合うものをどこまでも突き詰めようとは思っていません。本気が過ぎると「それが無いと眠れない」事態になりかねず、ひいては心の乱れにつながると思うからです。完璧主義にならず、その手前あたりがちょうどいい。

──運動はどうでしょう。そのスリムな体形を見る限り、さぞハードなトレーニングを課しているのだろうと思うのですが。

 運動を毎日のルーティンにはしていますが、きついことはしてないですね。テニス指導に必要な体力を養うため、1日1時間の体幹トレーニングを日課にしています。基本は部屋でできる自重トレーニングで、その間は録画したニュース番組や情報番組、あるいは映画やドラマも見るので、僕の中ではトレーニングというより、映像を見るすごく楽しい時間。泣いたり笑ったりしながら取り組んでいます。だから苦しさやつらさとは無縁です。

 秘訣として言えるのは、「体の中のミトコンドリアを強く意識すること」です。例えば負荷レベル6で始めたら、5分経ったところで7に上げる。負荷を少しだけ重くすることで、ミトコンドリアを活性化させて増やすんです。細胞の活動に必要なエネルギーはミトコンドリアによって生産され、活性化することで老化防止に効果があるという研究結果が出ていると知り、意識するようになりました。ウオーキングなら、速度を速くしたり遅くしたりして、負荷を変えるようにしています。

──実際に「おお、ミトコンドリアがイキイキし始めたな」とイメージしながら、やっているんですか。

 まさにその通りで、何にでもポジティブなイメージを持つことはとても大切。僕はものすごくネガティブな人間で、現役選手時代もその点で苦労しました。だから、マインドを前向きに持つための考え方や技術を学んだんです。大きな声を出したり、笑顔でいたり、手を大きく動かして表現したり。日ごろ、僕がやっているこうしたアクションは全部、自分を前向きにするための技術です。皆さんが僕を見て「元気で健康そう」と思ってくれているのだとしたら、これの賜物かもしれません。

──老いない秘訣を追求していくと、最後はマインドに行き着く?

 「昔だったらできたのに」とマイナス思考が芽生えた瞬間に、老いはきっと加速するのだと思います。それよりは、今の自分ができることをやりながら幸せな毎日を過ごせるようになるためにはどうすればいいかを考える。老いをネガティブに捉えるのではなく、できなくなったことも含めて、ありのままの自分を受け入れれば前向きになれるし、自信だって生まれてくる。そうすれば老いも楽しめる気がしているんです、僕は。

注)松岡修造さんの具体的な実践例は、「日経トレンディ」2022年5月号に掲載しています。日経クロストレンド有料会員の方は、電子版でご覧いただけます。
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(写真/長田洋平=アフロスポーツ、つのだよしお=アフロ)