
先行販売分が即完売。緊急追加するほどの人気となり、2020年2月の一般販売後も大ヒットを記録したクレンジング剤(メーク落とし)が、化粧品メーカーのオルビスが提供する「オフクリーム」だ。女性にとってクレンジングとは何か、どうすれば思わず手に取りたくなるかについて、定量・定性調査でインサイトを突き詰め、正解を導き出した。
ポーラ・オルビスホールディングス傘下の化粧品メーカーであるオルビス(東京・品川)の「オルビス オフクリーム」は、発売以来、美容アカウントを持つインフルエンサーを中心にSNSで大きくバズり、2年以上たった今でも人気が持続するクレンジングクリームだ。美容雑誌である「美的」「VOCE(ヴォーチェ)」「MAQUIA(マキア)」が発表した2020年上半期ベストコスメランキングのクレンジング部門で1位を獲得。オルビスの全商品の中でも、美容ジャンルの主要3誌で1位を同時に獲得したものはなく、同社史上初の快挙となった。
どんなに疲れていても一日の最後には頑張ってメークを落とさなければいけない、というネガティブな作業を、クリームの組成や容器デザインを工夫することで“癒やしの時間”に変換。女性たちの心をつかんだ。
だが、こうしたアイデアはすぐに出てきたわけではない。それは、クレンジング剤を使う女性のインサイトを徹底的に掘り下げた、商品企画者の執念によって生まれたのだ。担当したのは、開発が始まった19年当時、入社5年目だったオルビス商品企画部主任の馬場愛氏。オルビスは「ここちを美しく。」をブランドコンセプトとして18年にリブランディングを敢行。そのコンセプトを軸にリニューアルした主力ブランドの「オルビスユー」、“飲むスキンケア”の「オルビス ディフェンセラ」、しわ改善と美白ができる美容液の「リンクルホワイトエッセンス」がいずれもヒットしていた。
▼関連記事 オルビスのリブランディング成功の秘密 衰退からの逆転法しかし、まだ女性にとって心地よい時間になってない“穴”があるのではないか。馬場氏はそう考え、スキンケアのルーティンを再検討してみた。オルビスでは、登録会員を対象にアンケート調査を行っている。このプラットフォームを活用し「スキンケアのステップの中で大事だと思っているものは何か」と聞いてみると、美容液など肌にオン(塗る)する商品とともに、化粧をオフ(落とす)するクレンジングも上位に食い込んだ。一方で、「おっくうだったり、面倒臭かったりするものは何か」と聞くと、ここでもクレンジングが上位に入ってきた。「定量調査から、クレンジングは気持ちと現実に大きなギャップがあると分かったのは大きな発見だった。多くの女性はクレンジングを面倒で煩わしいと思っている。では、なぜそう思うのか。その心の内を探るために、自身のまわりにいる女性社員や友人に徹底的にヒアリングすることにした」(馬場氏)
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