
パッケージの役割としてますます重要になっているのが、体験価値の向上だ。ZOZOの限定配送箱、通称「花火箱」が「JPM POPクリエイティブ・アワード」金賞を受賞。箱を開けた瞬間の驚きが、買い物体験の価値を最大限に高めている。通販サイト「ZOZOTOWN」の配送箱を使った顧客コミュニケーションの一環だ。
ZOZOの限定配送箱(以下、花火箱)を開けたら、びっくりするに違いない。開封すると内蔵の光センサーが反応して、鈴虫の声や風鈴の音色が流れる。続いて「ド、ドン」と花火の音が響く。内側には全面に打ち上げ花火が広がる夜景と、顧客に向けたメッセージが印刷されている。
箱の外観はZOZOが通常の配送に使っているものと同じ。黒地の段ボール箱に「ZOZOTOWN」の白いロゴが入っているだけなので、なおさらサプライズ感が強い(現在、配送箱のデザインは一部変更されている)。この花火箱の送り先は2020年の8月末に、ZOZOTOWNで商品を購入した顧客の中からランダムに選ばれた(件数は非公表)。これがプロモーション業界におけるPOPツールのコンテスト「JPM POPクリエイティブ・アワード」で高く評価され、2021年の金賞を受賞した。
ZOZOは配送箱を「ZOZO箱」と呼び、顧客接点におけるコミュニケーションツールとして活用してきた。普段は定番の「黒いZOZO箱」で届く商品が、時折、違うデザインになって届く。これまでも『スター・ウォーズ』や現代アーティストのバスキアの絵画をモチーフにデザインしたZOZO箱で話題になった。「ZOZOで買い物をして、商品が届いた瞬間が一番うれしいタイミングではないか。お客様にとって感情がピークに達する瞬間だと考えて、施策を打っている」。ZOZOのCI室ブランディングデザイン部ディレクターの佐藤大介氏はこう語る。
新型コロナウイルス禍の影響によって全国各地で様々なイベントの開催が自粛されていることから、佐藤氏は「世の中を元気にできないか?」と思っていたという。20年夏にはZOZOが協賛する「幕張ビーチ花火フェスタ」も中止となり、「配送箱を使って少しでも夏を感じられる体験を仕掛けられないか」と発案。プロジェクトが動き出した。
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