D2C時代のパッケージデザイン大変革 第4回

パッケージの役割としてますます重要になっているのが、体験価値の向上だ。ZOZOの限定配送箱、通称「花火箱」が「JPM POPクリエイティブ・アワード」金賞を受賞。箱を開けた瞬間の驚きが、買い物体験の価値を最大限に高めている。通販サイト「ZOZOTOWN」の配送箱を使った顧客コミュニケーションの一環だ。

2021年、ZOZOの限定配送箱(花火箱)が「JPM POPクリエイティブ・アワード」金賞を受賞。花火箱は20年8月にZOZOの通販サイト「ZOZOTOWN」を通じて商品を購入した顧客に向けてランダムに配送した
2021年、ZOZOの限定配送箱(花火箱)が「JPM POPクリエイティブ・アワード」金賞を受賞。花火箱は20年8月にZOZOの通販サイト「ZOZOTOWN」を通じて商品を購入した顧客に向けてランダムに配送した

 ZOZOの限定配送箱(以下、花火箱)を開けたら、びっくりするに違いない。開封すると内蔵の光センサーが反応して、鈴虫の声や風鈴の音色が流れる。続いて「ド、ドン」と花火の音が響く。内側には全面に打ち上げ花火が広がる夜景と、顧客に向けたメッセージが印刷されている。

 箱の外観はZOZOが通常の配送に使っているものと同じ。黒地の段ボール箱に「ZOZOTOWN」の白いロゴが入っているだけなので、なおさらサプライズ感が強い(現在、配送箱のデザインは一部変更されている)。この花火箱の送り先は2020年の8月末に、ZOZOTOWNで商品を購入した顧客の中からランダムに選ばれた(件数は非公表)。これがプロモーション業界におけるPOPツールのコンテスト「JPM POPクリエイティブ・アワード」で高く評価され、2021年の金賞を受賞した。

花火箱を閉じた状態(左) 開封した状態(右)
花火箱を閉じた状態(左) 開封した状態(右)

 ZOZOは配送箱を「ZOZO箱」と呼び、顧客接点におけるコミュニケーションツールとして活用してきた。普段は定番の「黒いZOZO箱」で届く商品が、時折、違うデザインになって届く。これまでも『スター・ウォーズ』や現代アーティストのバスキアの絵画をモチーフにデザインしたZOZO箱で話題になった。「ZOZOで買い物をして、商品が届いた瞬間が一番うれしいタイミングではないか。お客様にとって感情がピークに達する瞬間だと考えて、施策を打っている」。ZOZOのCI室ブランディングデザイン部ディレクターの佐藤大介氏はこう語る。

ZOZOTOWNで購入した際に通常送られてくる「黒いZOZO箱」。20年8月時点では花火箱と外観は全く同じだった
ZOZOTOWNで購入した際に通常送られてくる「黒いZOZO箱」。20年8月時点では花火箱と外観は全く同じだった

 新型コロナウイルス禍の影響によって全国各地で様々なイベントの開催が自粛されていることから、佐藤氏は「世の中を元気にできないか?」と思っていたという。20年夏にはZOZOが協賛する「幕張ビーチ花火フェスタ」も中止となり、「配送箱を使って少しでも夏を感じられる体験を仕掛けられないか」と発案。プロジェクトが動き出した。

QRコードを使う方法も考えた

 プロジェクトが動き出したとき、既に7月に差し掛かっていた。最終的に花火箱を作るまでには様々な案があった。箱そのものに印刷する以外には、例えば中に花火や花を直接梱包するアイデアもあった。演出方法を決めるときにも、箱に印刷するのではなくQRコードにスマートフォンをかざしてVR(仮想現実)で花火を再現したり、音をスマートフォンから流したりする案もあった。最終的に、QRコードなどを使ってしまうと「サプライズ」の意味が薄れてしまうため、よりフィジカルな表現方法を選んだ。「見た目はいつものZOZOの箱だが、開けたら音が鳴る、花火のビジュアルが飛び込んでくるという仕掛けにした」(佐藤氏)。センサーやスピーカーなどのモジュールは大日本印刷が製作した。

 「なぜ花火にしたのか?」という問いに対しては、「夏といえば花火だから」という答えになる。ZOZO箱が届く人のペルソナなどはあまり意識せず、外出を自粛しているために季節感のない生活を送っている人々に向けて「夏を感じられる」ことが「日本を元気にすること」につながるという考え方だ。最大の目的はサプライズだったので、SNSを使ってハッシュタグを使った発信などもしなかった。実は「花火箱」という箱の名称も後付けで呼んでいるもので、正式な名前はないのだという。

 難しかったのは開発期間が短かったことだ。花火と銘打っている以上、夏が終わる前に届けたい。8月中旬までに完成させて、月末までに配り終えた。しかし、企画制作を広告代理店に依頼しているわけではないので、8月に入ってからもモジュールの組み合わせなどのデザインについて調整を続けていた。段ボールの外側の定位置にロゴを印刷し、箱の内側の決まった箇所にメッセージを印刷して、それぞれの位置がずれないようにアッセンブルする調整に時間がかかった。

 花火の画像は、19年以前に「幕張ビーチ花火フェスタ」で撮影した花火の写真と、東京湾の風景を合成した。花火の音や虫の声は、様々な音源のデータを組み合わせてつくった。社内で花火箱の案件を担当したデザインチームは、アートディレクションの佐藤氏とデザイナーの2人。外部のデザイナーに応援してもらうことも多いものの、「何をするか」を社内で考えられる企画力を自社の強みであるとZOZOはみている。

「来年はみんなで一緒に花火見ようね」の文字は「幕張ビーチ花火フェスタ」で打ち上げられている、文字の形をした花火をモチーフにした
「来年はみんなで一緒に花火見ようね」の文字は「幕張ビーチ花火フェスタ」で打ち上げられている、文字の形をした花火をモチーフにした
海浜幕張から見える東京湾の夜景を撮影し、取り入れた
海浜幕張から見える東京湾の夜景を撮影し、取り入れた

 「外部に『丸投げ』はしない。自分たちでアイデアを考えて、それを実現できるところを探し、相談しながらつくっていくというプロセスだった」(佐藤氏)

カップ焼きそばも同梱

 花火箱を送った際には、商品と一緒に市販のカップ焼きそばを同梱(どうこん)したことも話題となり、メディアのニュースやTwitter、Instagramなどにその写真を驚きとともにアップロードしている投稿もあった。これも、「花火といえば焼きそばだから」というサプライズ精神に始まった。こちらもタイアップではなく、ZOZOで購入して「ただの洒落(しゃれ)として」(佐藤氏)入れたものだった。

 20年末には、同様のコンセプトで「白いZOZO箱」を送った。段ボールの表面には8行分の横書きのメッセージがあり、各行の1文字目を縦に読むと「コロナに負けない」という裏メッセージを読み取れるように工夫している。

20年12月に100万個の数量限定で配送した「白いZOZO箱」。大きな変化の1年となった20年の終わりに、「お客様に笑顔で新たな年を迎えていただきたい」という思いから実施した
20年12月に100万個の数量限定で配送した「白いZOZO箱」。大きな変化の1年となった20年の終わりに、「お客様に笑顔で新たな年を迎えていただきたい」という思いから実施した
1文字目を縦に読むと「ころなにまけない(コロナに負けない)」と読める
1文字目を縦に読むと「ころなにまけない(コロナに負けない)」と読める
22年1月には、年始に一定の条件で買い物をした人に抽選で「赤いZOZO箱」が届くキャンペーンを実施。20年とは異なるコンセプトで、配送箱を使った様々なイベントを行っている
22年1月には、年始に一定の条件で買い物をした人に抽選で「赤いZOZO箱」が届くキャンペーンを実施。20年とは異なるコンセプトで、配送箱を使った様々なイベントを行っている

(写真提供/ZOZO)

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