新型コロナウイルスの収束メドがなかなか立たないところへ、ロシアのウクライナ侵攻が加わり、世界経済が混迷の度を深めている。社会不安が増すにつれて、ソーシャルメディア上も過激な発言が増えやすく、いわゆる「ネット炎上」が起こりやすい状態にある。炎上対策に詳しいシエンプレ(東京・渋谷)デジタル・クライシス総合研究所主席研究員の桑江令氏が、昨今の炎上事例、傾向をデータで検証しながら、企業の向き合い方を指南する。

2021年のネット炎上件数は前年比25%増。決して人ごとではない(写真/Shutterstock)
2021年のネット炎上件数は前年比25%増。決して人ごとではない(写真/Shutterstock)

 コロナ禍による激動の2020年、そして東京五輪とワクチンに揺れた21年が終わり、22年も早3カ月が経過した。22年になっても国内での新型コロナの第6波にウクライナ情勢と、ますます混迷している印象だ。そのような先行き不透明な状況は生活者を不安にし、その社会不安を背景に、「デジタル・クライシス」が拡大し続けている。

 ここでデジタル・クライシスについて説明しておこう。これまであった「Web上のリスク(デジタルリスク)」「ネット上の風評被害」「SNSでの炎上」がさらに進み、企業の社長交代や業績悪化、株価下落、果ては廃業といった、まさにクライシスを招いてしまっている現状のことを指す言葉だ。企業からすれば絶対に避けたいデジタル・クライシスが、シエンプレ デジタル・クライシス総合研究所で統計を取り始めた19年から右肩上がりで増え続けている。この連載では、そうした最新のリスク傾向についてお伝えしていく予定だが、初回となる本稿では、当研究所で発行している「デジタル・クライシス白書」(以下、白書)の調査結果を中心に、考察していきたい。

炎上件数は前年比25%増加、3年連続で拡大を続ける要因とは?

 白書では、SNS上で100件以上の言及がなされたネガティブ事象を炎上事案と定義している。その定義に基づいてカウントすると、21年は年間で1766件の炎上事案が発生しており、19年が1228件、20年が1415件と3年連続で件数の増加が見られた。

月別のネット炎上発生件数
月別のネット炎上発生件数
出所:「デジタル・クライシス白書2022」

 21年の炎上事案の内訳を見ていくと、最も多い炎上理由は「非常識な発言・行為・デリカシーのない内容・発言・行為」で全体の37.1%、次いで35.4%の「特定の層を不快にさせるような内容・発言・行為」であり、この2つだけで全体の70%以上を占めている。ここから見えてくるのは、「何が適切で、何が不適切なのか」が曖昧になり、無意識なバイアスによる言動が批判されることで引き起こされているということだろう。

 22年もさまざまな炎上事案が発生しているが、意識の高まるジェンダー平等の観点から、企業や著名人によるジェンダーバイアスや世代間の認識の差による炎上が目立つ。それらはSNSの企業アカウントによる発信や、CMやポスターなどのクリエーティブという形で生活者の目に触れ、「不適切だ」と判断されてネット上で非難を受けているということだ。

 またこのコロナ禍ならではの特徴的な炎上事案がある。日本での最初の緊急事態宣言が出たタイミングで、とある有名アーティストの「みんなで乗り越えよう」という一致団結を呼びかける投稿は、「いい子ぶるな」といういくつかの批判の声によって削除に追い込まれた。このように“不寛容な空気感”は企業や有名人と生活者との分断を生み、これまでの常識では到底理解できない「言いがかり」のような絡まれ方に発展してしまったのだ。そして、それはそこから2年たった今でも続いてしまっているが、そのSNSの不健全な状況は、前年比で約25%も増加した炎上件数にも表れている。

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