ソニーグループの中でも、ライフサイエンス事業はまだ歴史の浅い分野だ。しかし、長年培ったブルーレイディスク関連の技術の経験を活用し、ユーザー中心デザインを実現。「Technology×Design」というソニーデザインのDNAは、ライフサイエンス事業にも脈々と受け継がれている。

細胞免疫治療法に必要な細胞薬製造において、細胞を高精度かつ高純度で分取する需要が高まっている。その需要に応えるのがソニーのセルアイソレーションシステム「CGX10」だ
細胞免疫治療法に必要な細胞薬製造において、細胞を高精度かつ高純度で分取する需要が高まっている。その需要に応えるのがソニーのセルアイソレーションシステム「CGX10」だ

 デザインを取り巻く環境が大きく変わりつつある中、色や形といった狭義のデザインの枠組みを超え、デザインに求められる役割が広がっている。ソニーグループのクリエイティブセンターが担っているのは、まさにその領域だ。「ソニーだからできるのだ」と思っていたが、実態はそうではなかった。

 本連載では、クリエイティブセンターにおいて、デザインがどのようにその領域を広げ、具体的にどんな役割を担っているかを取り上げていく。同時に、デザインとは、企業の独自性や創造性を強化していくうえで必要不可欠な要素であるという、私が長年抱いてきた考えについても検証していきたい。読者の皆さんにとって、何らかのヒントになれば幸いだ。

 第6回は、ソニーグループの柱の1つであるメディカル関連ビジネスを取り上げる。ソニーは、細胞レベルの解析を行う最先端研究の領域において、細胞分析装置をはじめとする機器を、「ライフサイエンス事業」と名づけて展開してきた。事業部とクリエイティブセンターのメンバーが一体となり、機器の開発、デザインに携わってきたのだ。

 最先端研究の分野は、一般の人が触れる機会がほとんどない。高度に専門的であり、しかも最先端だけに道なき道を切り開いていく領域といえる。今回の取材でも、理解が追いつかずに戸惑うところが少なくなかった。

 本稿では、2021年に発表された「Cell Isolation System CGX10(以下、CGX10)」という最先端機器を事例に、クリエイティブセンターがライフサイエンスの事業部門と進めたプロジェクトをひもといていく。それはまさに、「Technology×Design」がハイレベルで結実した好例だ。

事業部とクリエイティブセンターが力を合わせて開発した「CGX10」は「Technology×Design」の好例だ
事業部とクリエイティブセンターが力を合わせて開発した「CGX10」は「Technology×Design」の好例だ

ビジョンは「『感動』と『安心』を提供し続ける」

 ソニーグループにおいてエンタテインメント・テクノロジー&サービス(ET&S)事業を担い、ライフサイエンス事業も展開するソニーが掲げているビジョンは「世界中の人と社会に、テクノロジーの追求と新たなチャレンジによって、『感動』と『安心』を提供し続ける」ということ。ソニーグループ全体のビジョンにある「感動」とともに、ライフサイエンスの現場では特に大事な「安心」を掲げ、さまざまな機器の開発に携わってきたのである。

ソニーグループの中でライフサイエンス事業も展開するソニーのビジョン
ソニーグループの中でライフサイエンス事業も展開するソニーのビジョン

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