ソニーグループのインハウスデザイナーの組織であるクリエイティブセンター。その知見を基にスタートしたソニーデザインコンサルティング(SDC、東京・港)は、社外向けサービスを展開している。「DESIGN SHIFT」をスローガンに、デザインの力で社会を良い方向へ変えていこうという狙いだ。なぜ、このような試みが始まったのか。

ソニーデザインコンサルティング(SDC)のミッションステートメント
ソニーデザインコンサルティング(SDC)のミッションステートメント

 デザインを取り巻く環境が大きく変わりつつある中、色や形といった狭義のデザインの枠組みを越え、デザインに求められる役割が広がってきている。まさにその領域でいかんなく力を発揮しているのが、ソニーグループのクリエイティブセンターだ。「ソニーだからできるのだ」と思っていたが、実態はそうではなかった。

 本連載では、クリエイティブセンターにおいて、デザインがどのようにその領域を広げ、具体的にどんな役割を担っているかを取り上げていく。とともに、デザインとは企業の独自性や創造性を強化していくうえで必要不可欠な要素であるという、私が長年抱いてきた考えについても検証していきたい。読者の皆さんにとって、何らかのヒントになれば幸いだ。

 第3回は、2020年4月に設立されたソニーデザインコンサルティングを取り上げる。ここは、クリエイティブセンターが長年にわたって培ってきた、デザインにまつわる知見と経験を基に、企業の戦略づくり、製品開発やデザイン、デザイン組織の評価や運営、商標や意匠といった知的財産管理など、広い意味でのデザインにまつわるコンサルティングを行う組織だ。こういった組織をつくり、対外的な活動を行っている企業は数少ない。いや、今まで耳にしたことがない。

 では、SDCとは、どのような活動を、誰に向けて行っているのか。目指しているゴールはどんなところにあるのか。クリエイティブディレクターを担っている福原寛重さんと、シニアマネージャー/シニアプロデューサーを担っている江下就介さん、企画推進グループリエゾンマネージャー/シニアコンサルタントの山内文子さんの話を聞いた。幅も奥行きもある内容なので、前後編の2回に分けてまとめる。

福原 寛重(ふくはら ひろしげ)氏
ソニーデザインコンサルティング
ウォークマンやブラビアのロゴを手がけたほか、Sony Ericssonやソニー不動産(現SRE Holdings)など多くの事業立ち上げに従事。モノタイプ社との協業で93言語対応のSST®フォントを開発。ソニークリエイティブセンターのチーフアートディレクターを経て、クリエイティブディレクターとしてデザインコンサルティング事業立ち上げに従事。iF Design Award、Red Dot Design Award、Pentawards、グッドデザイン賞、SDA賞など多数受賞
江下 就介(えした しゅうすけ)氏
ソニーデザインコンサルティング
インタラクションデザインを中心としたデザイン開発業務及び戦略担当プロデューサーとして、企業内デザイン部門の活用施策、デザイン戦略立案業務、新規事業提案プロジェクトに携わる。2020年4月より現職。現在は、デザインの効用論をベースとした、デザイン知財マネジメント/デザイン教育プログラムの開発に従事。 iF Design Award、Red Dot Design Award、グッドデザイン賞など多数受賞
山内 文子(やまのうち ふみこ)氏
ソニーデザインコンサルティング
クリエイティブセンター スタッフ組織の統括部長を務め、20年度末の役職定年後より現職。設立に携わったソニーデザインコンサルティングでは、事業企画、行政や大学、クライアントとのコラボレーションやコンサルティングに従事。16年「第4次産業革命におけるデザイン等のクリエイティブの重要性及び具体的な施策検討に係る研究会」招聘委員。一橋大学データ・デザイン研究センター研究員

デザインの力で社会をシフトさせる

 SDCが掲げているミッションステートメントは、「共に発見し、可能性の先へと導く」だ。デザインを、単なる色や形にまつわるものではなく、「ものづくりにおけるコアを発想し、全体を構築する力」と捉えている。「DESIGN SHIFT」をスローガンとし、デザインの力で社会をシフトさせることをうたっている。

スローガンは「DESIGN SHIFT」。デザインの力によって、社会を良い方向へシフトさせていきたいという願いが込められている
スローガンは「DESIGN SHIFT」。デザインの力によって、社会を良い方向へシフトさせていきたいという願いが込められている

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