ソニーグループの「ハブ」として、重要な役割を果たすクリエイティブセンター。そこから生まれた紙「オリジナルブレンドマテリアル」は、竹、サトウキビ、リサイクルペーパーで作ったサステナブル素材だ。プラスチックを一切使わないパッケージのデザインには、ユーザーの行動変容を促す意図も込められている。開発プロジェクトは、1人のデザイナーの「思い」から始まった。ジャーナリストの川島蓉子氏が、その開発の一部始終を聞いた。
デザインを取り巻く環境が大きく変わりつつある中、色や形といった狭義のデザインの枠組みを超え、デザインに求められる役割が広がってきている。ソニーのクリエイティブセンターは、まさにその領域でも真価を発揮している。「ソニーだからできるのだ」と思っていたが、実態はそうではなかった。
本連載では、クリエイティブセンターにおいて、デザインがどのようにその領域を広げ、具体的にどんな役割を担っているかを取り上げていく。
とともに、デザインとは、企業の独自性や創造性を強化していくうえで必要不可欠な要素である──私が長年抱いてきた考えについても検証していきたい。読者の皆さんにとって、何らかのヒントになれば幸いだ。
第2回は、クリエイティブセンターで長年にわたり、パッケージデザインを担当してきた廣瀬賢一さんと林貴江さんの話を聞いた。2021年6月、ソニーが発表したサステナブルな紙素材「オリジナルブレンドマテリアル」の開発を率いた担当者だ。インハウスデザイナーが社会課題に取り組み、商品化に至った事例として取り上げたい。
ソニーグループ クリエイティブセンター
企業活動における環境への取り組みは、1990年代のエコロジーブームとは、まったく異なる局面に向かっている。表層的に体裁を取り繕うレベルではなく、核心に踏み込んだ本質的なレベルが求められており、それをできるかどうかが企業や商品イメージに直結するようになっている。そこにデザインが深く関与しなければならないのは、改めてここで触れるまでもない。
パッケージにおける素材循環を促すことを目的に、クリエイティブセンターが主導して進めたプロジェクトが「オリジナルブレンドマテリアル」だ。環境に配慮したサステナブルな紙をゼロから開発した。
環境負荷の少ない素材を用い、パッケージとしての優れた機能性や美観を実現しながら、ユーザーに対し、「環境対応の重要性」を「伝える」ことも目的に据えている。
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