事業領域を変化させ、今やエレクトロニクスの会社にとどまらないソニーグループ。その中で、インハウスのデザインチームであるクリエイティブセンターの役割も大きく変わってきた。ソニー社内外をつなぐ「クリエイティブハブ」として、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」というソニーのパーパス(Purpose)を具現化するため、その活動領域を多様化している。

石井大輔氏
(写真/丸毛 透)
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石井 大輔(いしい だいすけ)氏
ソニーグループ クリエイティブセンター センター長
1969年東京生まれ。多摩美術大学卒。92年ソニー入社。2016/2021 iF Design Award 審査員(ドイツ)。2019 DFA Awards審査員(香港)

 2022年3月、ソニーグループが電気自動車でホンダとの協業を発表したのは記憶に新しい。「ウォークマン」や「AIBO」を世に生み出し、先進的でやんちゃなイメージが強かったソニーは、一時、元気がないように見えた。それがまた、家電やプロダクトという枠組みを超え、さまざまな領域のデザインに向かい、ぐんと前に進み出した。そんな印象を抱いた人も多いのではないか。

 今やソニーが掲げている事業は、「ゲーム&ネットワークサービス」「音楽」「映画」「エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション」「イメージング&センシング・ソリューション」「金融」という6つの領域に及ぶ。エレクトロニクス事業はもとより、エンターテインメントや金融などを含め、多様性に富んでいる。

ソニーグループの事業は大きく6つの領域にわたる。クリエイティブセンターはその中心(ハブ)となる。ソニーグループ内の各事業だけでなく、グループ内外をつなぐ役割を果たす
ソニーグループの事業は大きく6つの領域にわたる。クリエイティブセンターはその中心(ハブ)となる。ソニーグループ内の各事業だけでなく、グループ内外をつなぐ役割を果たす
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 グループ全体においてデザインを担っているのが、クリエイティブセンターだ。プロダクトのデザインに限らず、UI/UX(ユーザーインターフェース/ユーザーエクスペリエンス)、ブランディング、コミュニケーション、空間デザインのディレクション、サービスデザインなどを手がけている。デザイナーが、商品の企画段階やコンセプトメーキングから関わることが多く、R&D部門との協業による開発中の技術を基に新たなUXデザインの開発なども行っている。

 それに加え、社会動向をはじめとするデザインの大きな潮流をリサーチする活動や、社内外に向けたデザインの提案や展示など、独自の情報発信にも取り組み、多岐にわたる活動を広げている。

最近のソニーグループを象徴する製品や取り組み。プロダクトだけでなくコミュニケーション、UI/UX、ブランディングにクリエイティブセンターが参画し、重要な役割を果たしている
最近のソニーグループを象徴する製品や取り組み。プロダクトだけでなくコミュニケーション、UI/UX、ブランディングにクリエイティブセンターが参画し、重要な役割を果たしている
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 デザインを取り巻く環境が大きく変わりつつある中、色や形といった狭義のデザインの枠組みを超え、デザインに求められる役割は広がってきているが、クリエイティブセンターは、まさにそこを担っているのだ。当初、「そういうことも、ソニーだからできるのだ」と思っていたのだが、実態はそうではなかった。

 本連載では、クリエイティブセンターにおいて、デザインがどのようにその領域を広げ、具体的にどんな役割をどう担っているのかを取り上げていく。

 それとともに、デザインとは、企業の独自性や創造性を強化し、示していくうえで不可欠な要素であるという、私が長年抱いてきた考えについても、要所要所で検証していきたいと思う。読者の皆さんにとって、何らかのヒントになれば幸いだ。

 初回は、クリエイティブセンターのセンター長を務める石井大輔さんの話を聞いた。石井さんは、21年10月に現職に就いたばかり。生え抜きでクリエイティブセンターを担ってきた人材でもある。

かつてソニーが誇った製品の数々。それぞれの時代において革新的なものづくりをしてきたソニーだが、クリエイティブセンターの役割はプロダクトデザインがメインだった
かつてソニーが誇った製品の数々。それぞれの時代において革新的なものづくりをしてきたソニーだが、クリエイティブセンターの役割はプロダクトデザインがメインだった
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