花王でDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する生井秀一氏がゲストを招き、企業変革力を身に付ける方法について対談する本企画。第5回はアプリを中心とした新しい経済メディア開発に挑戦するPIVOTの佐々木紀彦社長を招き、大企業で行える変革の可能性の生み方や、大手企業の事例をもとに社内起業の可能性について議論した。※本企画は、ニッポン放送のラジオ番組「ラジオ情熱ラボ~ビジネスの先に」(毎週日曜日21:00~21:20)との連動企画です。

佐々木 紀彦 氏(右)
PIVOT 代表取締役社長
1979年福岡県生まれ。慶応義塾大学総合政策学部卒業、スタンフォード大学大学院で修士号取得(国際政治経済専攻)。東洋経済新報社で自動車、IT業界などを担当。2012年「東洋経済オンライン」編集長に就任。14年ユーザベースに入社し、NewsPicks創刊編集長に就任。15年NewsPicks取締役に就任。18年に電通との合併会社NewsPicks Studiosを設立、代表取締役社長CEOに就任。落合陽一氏がホストを務める番組をはじめ、経済コンテンツの動画化をいち早く手掛け、自らもMCとして出演する。21年6月に経営コンテンツサービスを手掛けるPIVOTを創業。

生井 秀一 氏(左)
花王 DX戦略推進センターECビジネス推進部 部長
花王カスタマーマーケティング入社、リアル流通企業の企画営業職を約15年間担当。花王に出向し、ヘアケアブランドのメリットシャンプーのマーケティングを担当後、Eコマースの営業マネジャーを担当。2018年に全社DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するプロジェクト型組織の先端技術戦略室に在籍。21年DX戦略推進センター設立、DX戦略推進センターECビジネス推進部でEコマース戦略を担当。

生井秀一(以下、生井) この連載のテーマは40代から身につける企業変革力です。諦めるかどうか選択するのもこの年代ですが、もちろん諦めずにチャレンジする40代の人もいます。佐々木さんは企業変革力が必要だと感じることはありますか。

佐々木紀彦(以下、佐々木) デジタルツールなどを積極的に取り入れてリテラシーを養い、アンテナを張る力を養うのはもちろんですが、大企業で社長や社員ひとりの力では大きな変革や改革を行うのは難しいのが現実だと感じます。

生井 はい。そのため、役職や立場を問わず、周囲の人間との調整力を高める必要があると思います。やりたいことと自分の役割を踏まえつつ、より多くの人と一緒に企業を変えたいと思い、この連載をやってきました。

佐々木 改革のために覚悟を持って最後までやり尽くす。その覚悟がある人は、社内改革のためにやれることを全てやると良いと思います。しかし、変わらないと思った人は退職などを選び、また新しい形でスタート新しい形で一歩を踏み出します。これは生き方の問題のため、会社に居続けるか転職をするかはどちらでも良いと思います。

生井 私は最後までやり尽くしたいと思っています。40代の人の中には就職氷河期の影響で同期が少なく、現状のままでは変革を行える人が少なくなると使命感を持っている人や、会社が好きで企業変革を考える人は多いと思います。

退職覚悟の企業変革に挑む

生井 佐々木さんが東洋経済新報社に所属していた頃に変革を起こしたときの状況はいかがでしたか。

佐々木 私は東洋経済にいた当時、媒体の大規模なリニューアルを行いました。当時は上司にも構わず意見を言うタイプでした。リニューアル後に媒体が大幅に伸びた一方で、ハレーションを生みました。

 そのときは精いっぱい、退職の覚悟を持って事業に取り組みました。私の退職後は属人的にやっていたものを組織化することで、さらに伸びました。収益的にも会社の大黒柱のように大きく育っています。

 私という「人」はいなくなりましたが、私がまいた種を大きな芽にするのが上手な方が育ったことで、古い会社がデジタルもできるようになったことで会社の変革につながりました。当時は苦い思いをすることもあったと思いますが、私が取り組んだように、改革のきっかけのためにまいた種が開花する事例は多いです。そのため、退職覚悟で新規事業やDXを行うのは無駄ではないと思います。

この記事は会員限定(無料)です。

14
この記事をいいね!する