映像と音楽の祭典として出発したSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)はコンテンツを所有者とひも付けできる技術、NFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)との関連性が高い。メタバースやWeb3(3.0)など話題のキーワードを含め、関連する講演の内容をリポートする。
「セッションの3分の1くらいはNFTについての話じゃないのか?」。ある講演者が、2022年のSXSWについてそんな感想を漏らしていた。実際、講演スケジュールを見ると、NFTやWeb3、メタバースといったキーワードがびっしり。基礎知識を説明するものから、実践的なビジネスについて議論するものもある。メイン会場の外にも、NFTをテーマとした特設会場が複数あった。その中の1つ、NFT作品を扱うニュージーランドのノンファンジブルラボによるイベント会場を訪れた。
最近のネット界では、PFP(プロファイルピクチャー、SNSなどのプロフィル画像)に高価なNFTアートを使うことが1つのステータスになっているという。その代表的な存在が、猿のイラスト「Bored Ape Yacht Club(BAYC)」だ。人気が高く価格が高騰しているだけでなく、BAYCを扱う米ユガラボが、同様に人気のNFTアート「CryptoPunks」を買収すると発表したことも話題になっている。ノンファンジブルラボの「FLUF」というウサギのキャラも、それらと同様のNFTアイテムだ。
Web3で「1曲0.0035セント」からの脱却
プラネタリウムのような半球スクリーンになっているドームの中でミュージシャンや会社のCEOなどNFTやWeb3関連の仕事を手掛ける人々による討論に耳を傾けた。
「2年前はアーティストのために週7日曲を書いて、ストリーミングサービスで曲が流れるたびに0.0035セントの報酬をもらっていた」。そう話すのは、人気歌手セレーナ・ゴメスの楽曲にも作曲で参加した経験を持つ音楽家で、今はWeb3向けの音楽をつくる会社を仲間と立ち上げたジェイ・ストーラー氏。「今までは非効率なシステムを担う企業がいくつもあった。今なら10歳の子供でも、自分で曲を作ったらレコード会社と契約しなくても『お母さん、この曲をNFTにするよ』といって売り出せる」と、音楽業界に起きている地殻変動を説明した。
さらにはそうした若手アーティストのNFTアイテムを買うことは「デビューしたばかりのビリー・アイリッシュ(Z世代に人気の米国歌手)のコンサートに来て、帰りにTシャツを買うようなもの」とストーラー氏は表現する。まずは好きなアーティストを応援したいという気持ちで買う。さらに時が経過するにつれて、その歌手に人気が出てくれば、レア物Tシャツが高値で取引されるように、NFTも高騰するというわけだ。
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