欧米に比べて“転職後進国”の日本でも、コンサルティング業界では以前から転職が頻繁に行われてきた。なぜコンサル業界では転職が当たり前なのか。賢い転職をするにはどうすればいいのか。アクセンチュアから異業種への転職を経て起業に至る経験を持つ気鋭のコンサルタントが、この業界の転職事情を赤裸々に語る。
ムーンプライド取締役CSO(最高戦略責任者)
【プロローグ】コンサルタントだからこそ知る賢い転職
近年、日本のビジネスパーソンにとって転職はキャリア上の選択肢の1つだ。しかし、欧米に比べてその歩みは遅い。確かに一昔前に比べて転職のハードルは格段に低くなったものの、個人レベルでは転職成功に向けたノウハウや準備が不十分なケースも多く見られる。
そこで、日本でも以前から欧米並みに転職が“常識”だったコンサルティング業界の知見を基に、ムーンプライド(東京・港)の河上祐毅CSO(最高戦略責任者)が、コンサルタントの転職先となる業種別のメリットとデメリットを解説。さらに、あらゆる業種に共通する「転職でレベルアップする方法」についても語ってもらった。
今回のテーマは「なぜコンサルタントに転職は付きものなのか」。
そもそも転職するように制度設計されている
なぜコンサルタントにとって転職は常識なのでしょうか。答えは「もともとコンサルティングファームは社員が会社に長く残れないよう制度設計されているから」です。この話の前段として、まずは転職歴も含めた私のキャリアを紹介します。
私は2004年4月にアクセンチュアに入社しました。ストラテジーグループ(戦略コンサルタント部隊)に配属され、通信やメディア、ハイテク、医療系メーカーの担当からコンサルタントとしてのキャリアをスタートしました。10年9月、マネジャーに昇格。アカウントチーム(営業系のチーム)へ異動し、3年余りの活動を経て、14年3月、異業種の日本マクドナルドに転職しました。
マクドナルドでは、1年目にコンシューマーインサイト、2年目にはビジネスインサイトの部署に所属し、商品の売り上げ分析などを担当。16年8月に退社して仲間とムーンプライドを起業し、現在に至ります。
このような私自身の転職経験も踏まえながら、なぜコンサルティングファームは「ほとんどの社員が長く会社に残れない制度設計」になっているのかについて説明します。
制度設計上、会社に長く残れない――これを簡単に表現すれば、「組織にとって優秀な人間しか残れない」ということ。これこそが、コンサルティングファームに圧倒的な競争力をもたらしている源なのです。会社によって多少の違いはありますが、まずはコンサルティングファームのポジションの構成について紹介しましょう。
日本の大半の企業では、一般社員、主任、係長、課長、次長、部長、本部長(事業部長)、役員という順番で出世します。これがコンサルティングファームの場合、アクセンチュアを例にすると、アナリスト、コンサルタント、マネジャー、シニア・マネジャー、マネージング・ディレクター(パートナー)というのが、ポジションの大きなくくりとなります。
入社したら、まず案件を確実にこなせ!
外資系を代表とする多くのコンサルティングファームでは、高収入と職種に対する人気の高さで、世間一般でいう“優秀な学生”を集めることができます。逆に言えば、自らを優秀な人材であるとアピールできなければコンサルティングファームには入れません。
入社してすぐのポジションとなるアナリストは、参画したプロジェクトのリサーチや分析、資料作成といった業務や作業を遂行します。3~4年の経験を経てコンサルタントになると、マネジャーの指揮の下、能動的にプロジェクトを推進し、クライアントへの提言や報告を行います。プロジェクトの一部領域もしくは全体の実質的な作業責任者として成果物をつくり、部下となるアナリストの管理も行います。
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