大半の企業にとってDX(デジタルトランスフォーメーション)とは、「過去のIT改革で生じた負の遺産を解消するためのもの」と喝破したアクセンチュア出身のコンサルタント・中村基樹氏。今回は多数のクライアント企業へのDX導入実績を基に、コンサルタントが考える実効性の高いDXの導入法と、導入の実現性を高める条件について解説する。
「何を」ではなく「どこに」がポイント
「DX」は、企業がこれまでやり残してきたIT課題の解決法を包括する言葉として生まれた、と前回お伝えしました。にもかかわらず、DXにはメタバースやNFT(非代替性トークン)、PaaS(Platform as a Service)といった、新たに登場した多数の先進技術も含まれています。そのため、DX導入の担当者の中には、選択肢の広がりに「一体どれを使えばいいのか」と頭を抱える方も少なくないでしょう。しかし、コンサルタントがそうした“悩み”を抱くことはありません。
DXを導入する際、最初に考えるのは「何を」ではなく「どこに」だからです。
過去のIT改革でやり残した課題の解消法としてのDXは、あくまでも「コアコンピタンス事業を支援するツール」です。従ってコンサルティングは、クライアントの事業活動の中から課題を探して、「ここにDXで改善の余地があります」と指摘することから始まります。そのためには、対象となる業務プロセスを全て検証しなければなりません。
つまり、コンサルタントが実効性の高いDXの導入を提案するためには、「対象となる業務プロセス全体を理解して可視化する能力」が不可欠なのです。その点で、私はこの仕事を始めて最初に携わった幾つかのプロジェクトに恵まれました。
初仕事は「クライアントの業務プロセスの可視化」
私が当時のアンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)に入社して数年の間に携わったのは、クライアント企業の業務プロセスを描く(可視化する)仕事でした。この作業に時間をかけて取り組んだ新人時代の経験が、30年近くたった今でも生きています。
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