現在、多くの企業が最もコンサルタントに相談したい課題の1つは「どうすれば最適なDX(デジタルトランスフォーメーション)を自社に導入できるのか」だろう。そのヒントとなるDXの実態、実現性と実効性の高い導入方法、今後の展望について、アクセンチュア出身でキャリア30年のベテランコンサルタント・中村基樹氏が本音で語った。

DX(デジタルトランスフォーメーション)の本質がつかめていない人は多い ※画像はイメージ(イラスト提供:claudenakagawa/Shutterstock.com)
DX(デジタルトランスフォーメーション)の本質がつかめていない人は多い ※画像はイメージ(イラスト提供:claudenakagawa/Shutterstock.com)

【プロローグ】あなたの会社に合ったDXを見つける

 DXの導入に出遅れたら他社との競争に勝ち残れない――。そんな恐れや焦りを感じさせるほどDXに対する企業の注目度は高い。しかし、ひと口にDXと言っても、多種多様な最新技術や革新的サービスがメディアやセミナーで紹介されている。

 「DXと呼ばれるものは全て取り入れなければならないのか」「最低限必要なDXはどれか」「うちの会社は、どのDXから手をつければいいのか」。そうした悩みや疑問を持つ経営陣やDX担当者に対し、DXの導入を支援しているコンサルティング会社・ムーンプライド(東京・港)の中村基樹CEO(最高経営責任者)が、自社に必要なDXを見極めるためのノウハウを解説する。


DX導入はこれまでの知見で十分対応可能

 今回は、私の専門分野の1つである「DX」について話しましょう。

 今やほとんどのビジネスパーソンがDXという言葉を耳にしたことがあるでしょう。しかし、その実態と導入状況について正しく把握している人はそれほど多くないようです。ネットでは既に多くの“DX情報”が発信されており、様々な関連技術やサービスが紹介されています。そのため、自社のDXの進み具合も分からないまま、「競合はかなりDXで先行しているんじゃないか」とか「DXを導入した会社はうまくいっているに違いない」などと、不安に駆られている方もいるでしょう。

 メタバースやNFT(非代替性トークン)といった、最先端のDXに取り組んで成果を上げている企業も確かに存在します。ですが、それらはあくまでもDXを主業あるいは専門分野としている会社のケースです。多くの企業にとって、DXは「自社のコア・コンピタンスの強化・成長・発展をサポートするもの」でしかありません。まず、そこを勘違いしないでください。

 では、最新のDX関連サービスを提供している会社や、体力がありDX導入で業界をリードしているような大企業は別にして、大半を占める一般的な企業にとっての「DXの本質」とは、いったい何でしょうか。様々な企業のDX課題に向き合い、解決してきた私の経験に基づいて、まず結論を述べましょう。

 DXとは、すなわち「やり残し」です。

 企業が抱えるこれまでやり残してきた課題を扱うこと、これこそがDXの本質です。そう考えると、「DXの最新技術が理解できない」などという事態は本来起こらないはずです。つまり、DXを正しく導入するのに不安や恐れを抱く必要など全くありません。これまでみなさんが業務をこなしながら蓄えてきた知見で十分対応できます。

 私の実体験を踏まえて、具体的に説明しましょう。

DXの本質を知れば振り回されない

 クライアントからDXの導入を課題として提示されたとき、私はまず現状把握のために「御社のITの環境整備はどれくらい進んでいますか」と尋ねます。すると担当者からは、「過去にこんな課題とこういう課題に取り組みました」という答えが返ってきます。「では、その課題は解決済みですね」と確認すると、実際はほとんどが消化不良のままでした。

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