※日経エンタテインメント! 2023年4月号の記事を再構成
異国で亡くなった遺体を母国の遺族の元に送り届ける国際霊柩(れいきゅう)送還士の活躍を描くAmazon Originalドラマ『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』。第10回開高健ノンフィクション賞を受賞した佐々涼子の作品を元に、大河ドラマ『どうする家康』などで人気の脚本家・古沢良太と『ドクターX~外科医・大門未知子~』シリーズなどを手掛ける香坂隆史がオリジナルのエピソードを脚本化した。主人公で国際霊柩送還士の伊沢那美を演じるのは米倉涼子。口は悪いが情に厚い那美が率いるエンジェルハース社の新入社員・高木凛子を松本穂香が演じる。那美に振り回されながらも頼もしい片腕となる役どころだ。
――国際霊柩送還士という仕事をご存じでしたか?
米倉涼子(以下、米倉) 実は出演オファーがある以前に、偶然にも原作を読んでいたんです。その内容に感動して知人にも本を薦めたほどで、オファーをいただいた時は運命を感じました。脚本も素晴らしかったので、余計に「ぜひやらせていただきたい」と思いました。
松本穂香(以下、松本) 私は国際霊柩送還士という職業自体、聞くのも初めてでした。一般的にあまり知られていない仕事を題材にするのは興味深いけれど、扱うテーマが深いので丁寧に演じなくてはと思いました。
――役に対して、どのようなアプローチをされましたか?
米倉 那美にはモデルになった方がいて、今も活躍していらっしゃるんです。その方が撮影現場にもいらしてくださったので、ご遺体とどんなふうに接し、ご遺族をどうケアされるのかというお話を伺ったりしながら、彼女の動き方や空気感も参考にしました。とてもパワフルで人間味があり、ウイットに富んだ方なので、そこもちょっと演技に取り入れたり。脚本を大切にしながら、那美はチャキチャキした性格で豪快なところもあるオバちゃんだけど、芯は強くてこまやかな人というイメージを作り上げていきました。
松本 私も実際にお仕事をされている方たちのお話を聞きました。ご遺族に感情移入する方もいれば、割り切らないとできないという方もいたり。そういったご本人たちの言葉が心に残っていて、演じる際の参考にさせていただきました。
コミカルな掛け合いも見もの
――物語は1話完結型で様々な依頼が入る。第1話はフィリピン・マニラで暴行事件に巻き込まれて亡くなった青年の話。第2話は海外で発生したテロ事件の犠牲者たちの話、と続いていく。毎回、那美率いるエンジェルハース社は、複雑な国際情勢や遺族たちのトラブルに巻き込まれながら、一刻も早く遺体を送還し修復しようと奮闘する。
米倉 何となく雑然とした職場をイメージされるかもしれません。でも全然違うんです。やっていることは複雑でディープな仕事にもかかわらず、クリーンと言えばいいのか。実際に作業をされているところも拝見しましたが、とても整然としていました。突然、大切な人を失ったご遺族の気持ちに寄り添い、最期の対面を実現させるように尽くすことで遺族が前向きに生きていけるようにケアをする。この仕事にはそんな生真面目さがあると思います。
――印象に残っているのは?
米倉 やはり第1話と第2話のテロの話ですね。ご遺体は特殊メークや特殊造形で作られた人形ですが、本当にリアリティーがありました。動画配信だからこそ描けたシーンだと思います。国際霊柩送還士の仕事は、ただご遺体を処置するのではなく、ご遺族に寄り添う部分も丁寧に描かれています。
松本 私もご遺族との関わりを大事に描いていると感じました。
――“死と生”という重いテーマを扱う半面、エンジェルハース社の個性豊かな社員たちによるコミカルな掛け合いも見ものです。
松本 みんなが集まるシーンは本当に笑っちゃって。特に、エンケン(遠藤憲一)さんをイジるところは。
米倉 彼が絡むと、ツッコミどころが自然とたくさん出てくるし、エンジェルハースのキャスト陣はすごくいいチームだと思います。特に、私がいないシーンの時にチームのいい空気が出来上がっていて。何となく私は仲間外れみたいで、みんなが羨ましいけど…(笑)。
――今回は那美のプライベートの部分も描かれていますが、米倉さんは恋人役の向井理さんとの共演はいかがでしたか?
米倉 一番やりたくない、と言うと向井さんに失礼だけど、いちゃいちゃするシーンは恥ずかしくて。
松本 こういう米倉さんがいたんだな、と思いました(笑)。
――そういう意味でも見どころが満載ですね。
米倉 そうですね。ご遺体と関わる仕事を通して、人が家族や愛する人たちのつながりの中に生きていたという証を探すドラマ。決してご遺体だけが主役の物語ではなく、愛や絆を考えさせるドラマだと思いますね。
松本 親子や恋人など様々な関係性のご遺族とご遺体が登場します。その中には、見てくださる方の心に響くものがあるのではないかと思います。
配信中/Prime Video
脚本:古沢良太、香坂隆史
出演:米倉涼子、松本穂香、城田優、矢本悠馬、野呂佳代、織山尚大(少年忍者/ジャニーズJr.)、鎌田英怜奈、徳井優、草刈民代、向井理、遠藤憲一
(写真/中川容邦)