※日経エンタテインメント! 2022年11月号の記事を再構成

次世代の若手芸人を発掘する、年に1回のお笑いコンテスト「ツギクル芸人グランプリ」。今年5月に同大会で優勝したのが、ご覧のストレッチーズだ。賞金100万円のほか、副賞として在京民放5局の番組出演権が与えられたこともあり、ここ数カ月のうちに「スッキリ」(日テレ系)や「今夜はナゾトレ」(フジ系)など様々な番組で見かけるようになった。

左がボケ担当の福島敏貴、右がツッコミ担当の高木貫太
左がボケ担当の福島敏貴、右がツッコミ担当の高木貫太

 福島敏貴が次々にボケて、高木貫太がツッコんでいく、王道のしゃべくり漫才を得意とする2人。共に慶応大卒で、出会いは高校時代のバスケ部だった。子どもの頃からお笑い好きだったのは高木のほう。「小3か小4くらいで『爆笑オンエアバトル』にハマり、中学のときに『M-1』を見てさらに漫才への関心が深まりました。特に好きだったのは、三拍子さん、流れ星さん、とろサーモンさん、東京ダイナマイトさん」(高木)

 福島はそんな高木の影響で、お笑いを見るようになった。「でも、もともとギャグ漫画の『すごいよ!! マサルさん』が好きで、クラスのお調子者ではあったんです。お笑いは、今でも『マサルさん』の延長だと思っているところがあります」(福島)

 大学では同じお笑いサークルに入り、2011年に文化祭でコンビを組んでみたところ、手応えを感じて活動を継続。翌年には、日本一面白い学生漫才を決める「大学生M-1グランプリ」で優勝を果たした。

 今でこそ「アメトーーク!」(テレ朝系)で特集が組まれるほど注目されている学生お笑いだが、当時は「アングラな雰囲気だった」(高木)という。「少し上の先輩はブラックジョークみたいな笑いが全盛だったんですが、テレビの『学生HEROES!』で取り上げられるようにもなり、僕らの頃からだんだんポップになった印象です」(福島)

やらない後悔よりもやる後悔を

 大学お笑い時代から切磋琢磨してきたのは、真空ジェシカ、ママタルト、令和ロマン、Gパンパンダ、サツマカワRPGといった面々。それぞれがメディア進出している状況を「熱いですね」(高木)、「ネタ番組で一緒になる機会が増えてきてうれしい」(福島)と喜んでいる。

 高学歴ながらお笑いの道に進んだことについては「迷いはあったんですが、やらない後悔よりもやる後悔を選びました」(福島)、「自分の人生だし、やりたいことをやろうという気持ちだった」(高木)と振り返る。

 日ごろのネタ作りは高木が担当。「僕が何となく台本を書いてLINEで送って、2人でボケを足したり、細かいところを精査したりして作っていく感じです」(高木)

 常設の劇場を持たない太田プロ所属ながら、出演ライブ数の多いコンビとしても知られる。21年は、イベント制作会社であるK-PROのステージに立った回数が158回で1位となり、同社のライブアワードでMVPにも輝いた。「K-PROさんは芸歴1年目からたくさんライブに呼んでくれていたので、感謝してます」(高木)

 目下の課題は「瞬発力がないこと。持ちギャグなどがなく、素でテレビに出ている状態なので、何か武器が欲しい」(高木)という。

 「先輩の有吉(弘行)さんにも『モノマネとか、1つはあったほうが分かりやすいぞ』とアドバイスをいただいたことがありました。お笑い以外だとクイズ番組は、いつかどこかで結果を残したいです。『東大王』(TBS系)に出させてもらったときはトラウマレベルで歯が立ちませんでしたが(笑)」(福島)

 目指している芸人像は、「漫才師であり続けたい」と思いは一致。その上で高木は「2人ともJ-POPが好きなので、僕らが仕切る歌番組ができたら最高」、福島は「『学生HEROES!』のように、学生を応援する番組を持ちたい」と夢を膨らませた。「そのためにも、まずは『M-1』ですね。優勝者やファイナリストという肩書は一生のこると思うので、それを身につけたいです」(高木)

 「ツギクル芸人GP」で弾みをつけた彼ら。それぞれのキャラクターが世間に浸透すれば、大きな飛躍を遂げるだろう。

ストレッチーズ
左/福島敏貴(ふくしま・としき)1992年3月19日生まれ、埼玉県出身。右/高木貫太(たかぎ・かんた)91年7月24日生まれ、埼玉県出身。アマチュアながら実績を重ねたことで、太田プロエンターテインメントカレッジの講師を務めるヤマザキモータースの推薦もあり、2016年に同学院に8期生として特待生待遇で入学。太田プロダクション所属

(写真/中村嘉昭)

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