※日経エンタテインメント! 2022年10月号の記事を再構成

今年5月の「第52回NHK上方漫才コンテスト」で、女性コンビとして36年ぶりの優勝を飾ったほか、2021年12月の「女芸人No.1決定戦 THE W」で準優勝するなど、お笑いの賞レースで数々の実績を残している天才ピアニスト。漫才とコントの二刀流で、最近はネタ番組以外のバラエティーに出演する機会も増えてきた。

天才ピアニスト。左がツッコミ担当の竹内知咲、右がボケ担当のますみ
天才ピアニスト。左がツッコミ担当の竹内知咲、右がボケ担当のますみ

 京都出身でツッコミ担当の竹内と、奈良出身でボケ担当のますみは、共に子どもの頃からのお笑い好き。竹内は「いろいろ見ていた中で一番衝撃を受けたのが、『M-1』で優勝したときのブラックマヨネーズさん。面白すぎてカッコいいなと思った」という。ますみは「土曜日のお昼はチキンラーメンを食べながら吉本新喜劇を見ているような子どもで、漫才番組があったら録画して見るくらい好きやった」と振り返る。

 大学卒業後、「高校の非常勤講師や結婚式場のアルバイト、農業など、やりたいことが見つかるまでいろんな仕事をやっていた」という竹内と、高校卒業後に看護師として総合病院の脳神経外科に6年間勤務していたますみは、NSC(吉本総合芸能学院)大阪校で同期として出会い、16年にコンビを組んだ。

 「2人とも社会人経験があったので、お笑いを遊びではなく“仕事”としてやっていこうという温度感がぴったりやったし、ネタ合わせも楽しかった」(竹内)という。

 ネタ作りを担う竹内は、「『よしもと漫才劇場』の楽屋で、夜中に人が少ないときに考えてます。パソコンで清書したものをますみに送って、それを一緒に読み合わせしていくのがいつものやり方」と話す。ネタについては「“女性ならではの”という部分を押し出さないように心掛けています。『彼氏欲しい』とか『結婚したい』みたいな女性のあるあるネタに自分たちは弱いし、そこを破っていかないと勝てないと思うので」という。

上沼恵美子のモノマネ芸で注目

 18年には、ますみが上沼恵美子のモノマネ芸で「ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ」や「オールザッツ漫才」などに出演し、注目されるようになった。「上沼さんのモノマネは、大御所女優とADさんという設定のコントがあって、私が派手なメイクをしていたときに、何人かの芸人に『めっちゃ上沼さんに似てない?』と言われたのがきっかけ」(ますみ)だという。

 以降、モノマネでのテレビ露出が増えていったが、昨年の「THE W」準優勝で、モノマネ以外のネタも披露するようになった。

 目下の課題を尋ねると、「バラエティの事前アンケートで、エピソードを求められることが増えてきたんですが、ほんまに何もないんですよ。プライベートの自由時間がないのをなんとかしたい」と竹内。ますみも同調し、「劇場の仕事以外にも、YouTubeとかを毎日やったりしていて、本来休めるところを2人で一緒に過ごしているから、コンパに行った話や恋バナができない。過去にさかのぼっても、家族がヘンなこともないし、2人とも社会人だったから貧乏もしてない。常識人すぎて嫌になる(笑)」と語った。

 課題を明かした一方で、「コミュニケーションを取っている時間は、全芸人の中で一番長いかもしれない」(ますみ)と、長時間一緒に過ごすことのメリットも強調する。竹内も「先輩にも周りにも才能のある人がいっぱいいるので、ネタ作りにかける時間だけは負けんとこうと。時間をかけてだんだん結果がついてきたから、間違ってなかったのかなと思います」と話す。

 目指す芸人像は「東京03さんとか憧れます。私たちも全国ツアーを回れるようになりたい」とますみ。竹内は「芸人生活を終えるまで劇場やネタ番組に呼ばれ続けるコンビでありたい」と語り、「だからこそ賞レースで1位を取りたいです。男女同じ条件の大会で男性芸人に勝つのを目指しているので、今年の『NHK上方漫才コンテスト』優勝は本当にうれしかった」と続けた。「M-1」など、今年後半の賞レースでの活躍にも期待したい。

てんさいピアニスト
左/竹内知咲(たけうち・ちさき)1992年1月28日生まれ、京都府出身。右/ますみ
1987年4月28日生まれ、奈良県出身。もともとはますみもツッコミ志望でネタも書いていたが、「自分よりもこだわりの強い竹内と組むことになったので、両方とも譲りました」(ますみ)。単独ライブを毎月開催しているほか、公式YouTubeチャンネルを毎日24時に更新中。吉本興業所属

(写真/中村嘉昭)

1
この記事をいいね!する