※日経エンタテインメント! 2022年7月号の記事を再構成
金髪マッシュルームにメガネのガクと、ひげを生やした武骨な印象の川北茂澄によるコンビ・真空ジェシカ。2021年の「M-1グランプリ」で初の決勝進出を果たして以降、ネタ番組以外のバラエティーでも見かける顔になった。
「M-1」では「一日市長になりたい」というガクに対して、川北がボケをたたみ掛ける漫才を展開。審査員の立川志らくが「センスがよくて素晴らしかった」と絶賛したほか、上沼恵美子が「あか抜けていて、カッコよかった。もっと笑いたかったのに自分がついていけてないのがもどかしい」と評価し、6位という結果を残した。
お笑い芸人を目指したのは、「小学校高学年くらいのときに『学校へ行こう!』や『ワンナイR&R』などのバラエティー番組をよく見ていて、テレビに出ている人たちはふざけてお金を稼いでいて、ずるいなと思ったのがきっかけ」と川北。ガクは「子どもの頃からお笑い好きで、『エンタの神様』や『笑いの金メダル』など、ネタ番組は全部録画していました。ただ、芸人になりたいとまでは思っていなくて、大学で軽い気持ちでお笑いサークルに入ったら、いつの間にかこうなってしまった」と語る。
結成は大学在学中の11年。慶応大の川北と青山学院大のガクが、お笑いサークルの活動を通じて知り合い、川北がガクを誘う形でコンビを組んだ。ガクを誘った理由について、川北は「僕より痩せているヤツがよかったのと、お笑いの好みが違う人と組んだらどうなるんだろうという好奇心で声をかけました。ガクはリズムネタをこよなく愛す男で、僕はリズムネタがこの世で2番目に嫌いなんです」と説明する。
2人は深夜番組「学生HEROES!」の漫才大会で決勝に進出するなど、学生お笑い界をけん引する存在として知られるようになり、スカウトされてプロダクション人力舎に所属することになった。「M-1」での活躍もあり、漫才のイメージを持たれがちだが、もともとはコントをメインに作っていたそう。結成5~6年で漫才をやり始めたところ、「漫才は荷物もいらないし、音や照明を合わせるためのリハーサルもいらないから、営業もやりやすい。いろいろ考えたら絶対漫才のほうがいいなと思い、徐々に力を入れるようになりました」(川北)。
スベってSNSが大炎上
「M-1」の決勝進出者会見をはじめ、様々な場面で川北が流れを無視したボケを繰り出すのもおなじみで、2月に初出演した「ラヴィット!」(TBS系)では、SNS(交流サイト)で炎上する事態にまで発展。川北は「ただスベっただけなのに炎上してしまった。スベりすぎると人を傷つけてしまうなんて知らなかった」と振り返る。
テレビ露出が増えたことで、ガクは相方のボケをトークでサポートする役割を意識するようになり、それと並行して番組サイドにも変化が見られるようになったという。
「2回目の『ラヴィット!』では、川北がまともな会話ができないことをスタッフさんも分かってくれて、めちゃくちゃやりやすかったです。『ダウンタウンDX』(日テレ系)とか、川北の小道具置き場を用意してくれて。僕らのキャラクターを理解してくれる番組が増えつつあります」(ガク)。
今後やりたい番組は「テレビ朝日の『バラバラ大作戦』や、新人ディレクターの挑戦枠のようなところで頑張りたい」という川北に対して、「呼んでもらえるならNGなしで、過酷なロケでもなんでも、フリー素材のように使ってほしい」とガク。「扱いづらいと思われていますが、僕のほうはそんなことないですよ、と伝えたいです(笑)」と声を大にしていた。
目指す芸人像は「小さい劇場で当たり前のように毎月やっているのが理想」と川北。ガクも「ライブはずっと続けたい」と同調した。
常にボケたい川北と、そのボケを拾って分かりやすく伝えるガク。キャラも徐々に浸透しつつあり、さらに活躍の場が広がりそうだ。
(写真/藤本和史)