近年、お笑い芸人がドラマの脚本を手掛ける例が増えている。バカリズムやシソンヌのじろうがその代表といえるが、この流れを象徴する企画が登場する。フジテレビが6月22日から3夜連続で放送する『脚本芸人』は、テレビ局を舞台にしたオムニバスドラマで、芸人の吉住、水川かたまり(空気階段)、岩崎う大(かもめんたる)が脚本を担当。タッグを組むのは、『チェリまほ THE MOVIE~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~』が公開中の風間太樹監督だ。この試みにどう取り組んだのか。今回が脚本初挑戦となり、第1話を執筆した吉住と、風間監督に話を聞いた。
吉住 私はこのお話をライブの楽屋で聞きまして。最近はいろんな芸人さんが脚本を書かれていて、私もとてもやりたい仕事の1つだったんですね。だから、話を最後まで聞かず、食い気味に「やりたいです」と伝えました(笑)。
風間 僕はいろんな期待がよぎったというか。お話をいただいたのが、『うきわ―友達以上、不倫未満―』(21年)の放送が終わった頃。自分の範疇にはないものが生み出されそうな予感がしました。吉住さんのお笑いは、感情の起伏や言葉を爆発させる瞬間がポイントになっていて、なおかつ、シチュエーションにリアリティーがあるから、何か起きたときの「そんなこと思ってるの!?」っていう意外性やギャップがすごく面白い。
吉住 分析していただいて恐縮です(笑)。風間監督は『グッドモーニング・コール our campus days』(17年)に携わっていますよね?
風間 1分間のオープニングだけ演出しました。
吉住 好きで見させていただいていたので、その作品に関わっている方とご一緒できるなんてと感激でした。打ち合わせで、風間監督から「こういう見せ方だと、やりたいことに近づけると思います」みたいな提案をいくつもいただけて。すごい方だなと思っていたら、年下だったんでビックリ(笑)。
動く感情に怒涛のテンポ感
――アクの強いキャラクターや、思い込みのおかしさを粒立てた恋愛コントを数多く作ってきている吉住だが、今回はそういう部分を抑えたハートウォーミングストーリー。テレビ局の入り口で繰り広げられる女優(趣里)と守衛(藤木直人)のやり取りと、次第に変化する2人の関係性が描かれる。
芸人がテレビ局の裏側をコミカルに描く
吉住 私は割と凝った設定を考えてからネタを作るんですが、今回のお題はシンプルだったので、どう物語を作ろうかと不安でした。でも、書き始めたら楽しくて、自分らしさも出せたかなと。
風間 吉住さんの脚本には、やっぱり独特な面白さがありましたね。かな(趣里)と倉田(藤木)との、心が通いそうな瞬間とか、ラブのエッセンスを感じる距離の近さが表現されていきますが、かなの感情が目まぐるしく動いていく。そこに怒涛のテンポ感があるなと思って。さらに、感情に寄り添いやすい間と余白がある。趣里さんも「理解できないことがなくて演じやすかった」と言ってました。
吉住 うわ、ホッとしました。
風間 あとは言葉が面白いですね。かなのセリフで「ポスターに載っている」というのがあって、普通、日常会話だと「載ってる」じゃないですか。その語尾の強さに、かなの若干の傲慢さが出ていたりしたので、そういったところはこぼさないようにしました。
吉住 いつもだと自分がやりやすいように書いているんですが、なるべく演じる方に伝わりやすいようにと気を付けました。あと、コントだとついボケを入れたくなるんですが、安っぽくなる可能性もあるので、物語の邪魔にならない程度に、自分なりの違和感を入れるようにしたんです。だから、語尾とかも大事にしていただけてありがたいです。放送を見るのがとにかく楽しみ。すごいことになりすぎて、「私が書いたんだっけ?」って思いそうですけど。
風間 かたまりさんの第2話と、う大さんの第3話の撮影はこれからなんです(取材は5月中旬)。僕のフィルターは通させていただきつつ、やれるだけのことを思い切りぶつけようと思ってます。でも予測不能ですね。第3話のシュール展開はどうしたらいいだろうとか。
吉住 私は今回初めてで、ちょっとビビリながら取り組んだ部分はあったんですが、う大さんが大暴れしてるって聞いて、さすがだなと。私もいつか暴れてみたいです。
風間 いいですね。僕もその吉住さんの作品に出合いたいです。