イケアが仕掛ける顧客拡大、次の一手 第4回

イケアに行くと、立ち寄る人が多いであろう店内のレストランやビストロ。本格的なスウェーデン料理や格安のホットドッグが人気だ。近年はプラントベース(植物由来)フードも充実してきた。イケアはなぜここまで食に力を入れるのか。そこには創業当初から続くイケアの店舗戦略があった。

イケアの各店舗にある「スウェーデンレストラン」。イケアはなぜレストランに注力するのか
イケアの各店舗にある「スウェーデンレストラン」。イケアはなぜレストランに注力するのか

「空腹の人とビジネスをするのは難しい」

 イケアといえば、低価格でありながら、デザイン性や機能性が高い家具、インテリア雑貨が主力商品。だが、それらに劣らずイケアを特徴付けているのが、レストランや売り場で提供される食品だろう。

 イケアのほとんどの店舗には、ドリンクからメインまでスウェーデン料理が並ぶ「スウェーデンレストラン」、低価格のホットドッグやソフトクリーム、ドリンクバーを提供する「ビストロ」、食料品を購入できる「スウェーデンフードマーケット」がある。店舗面積が限られるシティショップ(都心型店舗)でも、カフェやデリを設けている。実はこれは創業初期のイケアの経験から生まれたものだ。

 スウェーデン人のイングヴァル・カンプラード氏が1943年に創業したイケアは、日用品の販売からスタート。カタログなどを活用したメールオーダーで事業を拡大し、58年にスウェーデンのエルムフルトに1号店を開業した。

 初の実店舗は成功し、多くの来店客に恵まれたものの、1つの課題に気付く。それは、ランチタイムになると来店客の多くが昼食をとるために帰ってしまうということだった。「空腹を感じている人とビジネスをするのは難しい」と実感したカンプラード氏は、解決策としてフードコーナーを開設した。これが現在まで続く、スウェーデンレストランの原型なのだという。

カスタマージャーニーの構成要素

 こうして始まったイケアと「食」の関わりだが、今や食品はイケアの店舗戦略やブランディングにとっても重要な役割を持つ事業へと成長した。

 役割の1つが、来店客のカスタマージャーニーをつなぐことだ。前述のように、現在のイケアの店舗では、名物のミートボールなどスウェーデン料理が楽しめるスウェーデンレストランと、ホットドッグなどの軽食を提供するビストロの2カ所の飲食スペースがあるのが定番。そして、たいていの店舗では、レストランは家具売り場と雑貨売り場の間に、ビストロは出入り口付近に設けられている。

どの店舗でも「スウェーデンレストラン」は家具売り場と雑貨売り場の間に配置されている。定番メニューはスウェーデン名物のミートボール
「スウェーデンレストラン」は家具売り場と雑貨売り場の間に配置されている。定番メニューはスウェーデン名物のミートボール

 これは来店客の動線を想定してのこと。例えば、典型的な郊外型店舗の場合、2階から買い物をスタートして家具売り場を回り、1階の雑貨コーナーを巡って会計に至る、という順路が設定されている。この順路に基づくと、来店客は家具コーナーを一通り見終わったところでレストランの前を通りかかる。空腹ならそこで食事をしておなかを満たし、疲れていれば休憩できるようになっている。

 イケア・ジャパン カントリー フードマネージャーの佐川季由(きよし)氏によると、「僕らはレストランを“ベスト・ソファ・セラー”と呼んでいる。家具を一通り見てくださったお客様がゆったりと食事や休憩をしながらサイズや色などを検討し、買うか買わないかの決断をする。それがあのレストラン」。イケア店舗でのカスタマージャーニーにおいて、レストランには食事や休憩のほかに、購入検討の場という機能があるのだ。

 一方のビストロは、イケアでの買い物の締めくくりとなる場所。ビストロでは、ホットドッグ類が80円から、ソフトクリームが50円からと、誰もが安いと感じるような価格で提供されている。「広い店内を歩き回って買い物を終えたお客様はおなかがすく。出入り口付近にあるビストロは、買い物後に一息ついてもらう意味がある。イケアならではのホットドッグやソフトクリーム、ドリンクバーを手軽に楽しんでもらい、『今日も楽しかった』と笑顔で帰宅してもらいたい」と佐川氏は話す。

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