
創業から約80年、日本でもすっかり定着したイケア。だが、日本でのEC立ち上げは2017年と意外にも後発だ。その遅れを取り戻すかのように、近年はDX(デジタルトランスフォーメーション)とオムニチャネル戦略を急速に進めている。核になるのは都心型店舗とEC、そして2020年にローンチした「IKEAアプリ」だ。
EC販売額の約2割はアプリから
購入した商品を顧客が自分で持ち帰る「キャッシュ&キャリー」を家具販売に取り入れたイケア。実店舗での販売が主力だったイケアが、日本でECサイトを開設したのは2017年のことだ。約80年にわたるイケアの歴史や、既にEC市場が拡大していた日本の状況を考えると、つい最近のことと言っていいだろう。
以来、イケア・ジャパンの売り上げに占めるECのシェアは、初年度に当たる17年が約7%。そこから倍々の勢いで成長しているという。この傾向はグローバルも同様で、イケアは今、世界規模でのEC強化とオムニチャネル化に向けたDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めている。日本では20年4月にローンチしたスマートフォン用アプリ「IKEAアプリ」が、イケアにとってECに続く2つめのデジタルチャネルとなる。
イケアのオムニチャネル施策を語るうえで、ユニークなのが日本での取り組みだ。その例が、20年6月に原宿、同年11月に渋谷、21年5月に新宿と、開店が相次いだシティショップ(都心型店舗)の存在である。
実は、「IKEAアプリは当初、IKEA原宿のオープンと同日のローンチを予定していた」と、イケア・ジャパン カントリーデジタルマネージャーの野崎智子氏は明かす。新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で、IKEA原宿の開店が遅れたためにかなわなかったが、「日本におけるシティショップの1店舗目に当たるIKEA原宿のオープンと、IKEAアプリのローンチを同時に行うことで、当社のオムニチャネル戦略をより色濃く打ち出す予定だった」(野崎氏)。
前述のように、イケアは実店舗での販売、それも郊外に位置する大型店舗での販売に特化してきた。しかし、イケアの強みでもあるそのスタイルは、アクセシビリティー(利用しやすさ)という点では弱点ともなりうる。特に、日本は都市部の自動車所有率が低い。自動車検査登録情報協会の調べによると、21年3月末時点の1都3県の自家用乗用車世帯普及台数は、東京都が0.422台、神奈川県が0.689台、埼玉県が0.948台、千葉県が0.955。都市生活者をどう引きつけるかは、日本でイケアを展開する、イケア・ジャパンの大きな課題といえる。
そんな中、期待を寄せるのが、シティショップの展開と、物理的な距離の制約を受けない、ECサイト、アプリという2つのデジタルチャネルというわけだ。
実際、EC、特にIKEAアプリ経由の売り上げはイケア・ジャパンにとって期待以上だという。「アプリのローンチ直後、アプリから売り上げは、金額ベースでEC全体の25%もの数字を記録した。今でも約2割を占める。これは世界的に見てもかなり高い数字」と野崎氏は手応えを語る。
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