エイベックス主催のオーディションをきっかけに芸能界入りを果たし、2022年にデビュー10周年を迎えた23歳の浅川梨奈。独特の存在感を発揮する俳優として目覚ましい活躍を見せている。

浅川梨奈(あさかわ・なな)
1999年4月3日生まれ。埼玉県出身

2012年 オーディションを経て芸能界入り
2014年 『14の夜』で長編映画デビュー
2017年 『人狼ゲーム マッドランド』にて長編映画初主演
2019年 『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』藤原千花役
2020年 『女子高生の無駄づかい』一奏役
2021年 『オリバーな犬、(Gosh!!) このヤロウ』青葉一平の妹役、『胸が鳴るのは君のせい』真野梨々子役
2022年 『ハレ婚。』伊達まどか役、『親愛なる僕へ殺意をこめて』畑葉子役

現在は『大病院占拠』(日本テレビ系)に常陸亜理紗/桃鬼役で出演しているほか、5月12日公開予定の映画『おとななじみ』で小戸森美桜役を演じる

 23年1月期は3月18日に最終回を迎える櫻井翔主演のサスペンスドラマ『大病院占拠』(日本テレビ系/土曜22時)で好演。同ドラマは放送開始直後から、鬼の仮面を付けた10人の武装集団『百鬼夜行』のキャスト予想などが過熱。鬼の正体が判明した後も、予想外の展開が続き、クライマックスに向けてSNSでは考察合戦が大いに盛り上がっている。浅川も、第4話にて桃鬼こと常陸亜理紗役であることが明かされると、その名がTwitterのトレンド入りを果たした。

 桃鬼役ということは2~3カ月間誰にも言えなかったので、ドラマに出ているようで出ていないような気持ちでした。「鬼の正体は誰だ」と、いろんな方が考察してくれているのを私も楽しく見ていたんですけど、すごくかわいい女優さんのお名前が挙がっていたんです! 「えっそんな……ありがとうございます」という気持ちでした。(笑)

 実は鬼同士でも誰がキャストか、最初はシークレットだったんです。櫻井さんが主演で、その奥さん役が比嘉愛未さんだとはお聞きしたんですけど、他の出演者については「いや、それはちょっと……」と。私が他の鬼の正体を知ったのは、衣装合わせのとき。表にキャスト名が書いてありました。でもそれもその場で見るだけで、台本にも名前は書いていないという状況でした。スタッフさんも、ロケでは絶対に名前を呼ばないし、私たちもエキストラさんがいらっしゃる場所では仮面を外せませんでした。でも、予告の時点で青鬼さん(菊池風磨)だけめちゃめちゃ正体がバレていて(笑)。ご本人もびっくりされていたし、スタッフさんも「そんなにバレるか? 何でだ?」と首をかしげていましたね。(笑)

櫻井翔主演のサスペンスドラマ『大病院占拠』(日本テレビ系/土曜22時)は3月18日に最終回を迎える
櫻井翔主演のサスペンスドラマ『大病院占拠』(日本テレビ系/土曜22時)は3月18日に最終回を迎える

 ほかにも、防犯カメラ映像用の撮影があるのはこの作品ならではかもしれません。通常のお芝居が終わった後、追加で別に撮るので、一連の動きを同じように再現しないといけないのは、難しいところでした。

結末を知らずに進んだ撮影

 桃鬼というキャラクターは、私自身とリンクするところもあります。やると決めたらやる、やらないと決めたらやらない、自由奔放に突き進んでいくタイプ。桃鬼は鬼の中で一番年下なんですけど、誰に対してもタメ口というキャラクターのおかげもあって、現場では甘えさせてもらったし、自由に演じても、皆さんがカバーしてくれる空気感がありました。監督も面白い演出をしてくださるし、シリアスなシーンでも、桃鬼の言動が少し息を抜けるポイントになっているのかなと感じました。

浅川は、鬼たちに銃殺されたはずの心療内科医・常陸潔(水橋研二)の娘の亜理紗を演じる
浅川は、鬼たちに銃殺されたはずの心療内科医・常陸潔(水橋研二)の娘の亜理紗を演じる

 結末は、私もどうなるか分かっていないんです(取材は2月下旬)。果たして最後は病院から出るのか、捕まるのか、もしかしてみんな死んでしまうのか……鬼の間でも予想し合っています。だけど視聴者の皆さんの考察が本当にすごくて、「百鬼夜行」の最終的な目標について、すでに正解を見つけている方もいるんです。第1話から張り巡らされている伏線をしっかり見てくださっていて、すごいなぁと思いました。

 鬼たちが仮面を取ったところが物語のピークではなく、それ以降さらに面白くなって、絶対に最後まで飽きない作品です。キャスト同士で「昨日の放送、面白かったよね」と話すくらいなので、期待して見てほしいです。

 『大病院占拠』の後、5月12日には映画『おとななじみ』の公開が控えている。中原アヤの同名人気マンガを原作とし、20年間の“両片想い”を続ける幼なじみ同士のじれったい恋を、井上瑞稀(ハル)と久間田琳加(楓)のダブル主演にてコミカルに描く本作。浅川が演じる美桜、萩原利久演じる伊織を含めた4人が幼なじみという役どころゆえ、撮影前には監督から、「なかなか聞くことのない」指示があったのだと笑った。

 撮影はちょうど1年前ですね。皆さんとはほぼ初めましてだったのですが、幼なじみ役という設定なので、撮影前の顔合わせのときに監督やプロデューサーさんからまず「仲良くしてください」って言われました(笑)。私と萩原さんは共演経験があったので、主演2人と打ち解けるために頑張ろうよって協力し合いました。萩原さんは井上さんのところに行って、私はくまちゃん(久間田)に「ねえねえ」と話しかけるところから始まって、撮影するうちに本当の幼なじみのような空気感が出来上がりました。プロモーションで久しぶりに会う機会もあったんですが、しばらく会ってなかったとはとても思えないくらい、一瞬で撮影当時の空気に戻れるんです。密度の高い、いい現場になってよかったなって思います。

映画『おとななじみ』は5月12日に全国公開。東映配給
映画『おとななじみ』は5月12日に全国公開。東映配給

 美桜は、中原アヤ先生っぽいなと感じるキャラクター。つっこみを入れたり、周りを見ていたり、ハルと楓と伊織の三角関係の外にいるんだけど、一緒にいる。美桜の役割はすごく大事だと思うので、演じられることにうきうきしました。

 もちろん原作を大事にしつつも、今回は映画オリジナルの部分も面白い実写化だと思います。私も、リアルに存在するキャラクターでありたいという思いが強かったですし、美桜として生きる上でも「いるよね、こういう子」と思ってもらえたらなと、自然体を意識しました。ラブストーリーですけど、見ている人の気持ちを代弁するつっこみが入るので、見ていて気持ちがいいコメディとしても楽しめます。両片想いの主人公たちにキュンキュンしつつも、くすっと笑える作品になりました。

初の長編主演作が大きな転機に

 話題作への出演が相次ぐ23年。これまで、ヒロインや主演も経験しながら、『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』シリーズ(19年・21年)や、『KAPPEI カッペイ』(22年)など継続して注目作に出演し、女優としてステップアップしてきた。とある作品との出合いをきっかけに、芝居への考えが一変したと振り返る。

 『人狼ゲーム マッドランド』(17年)という作品で、初めて長編映画の主演をさせていただきました。最初は何も考えず、「わぁ、主演だわー」くらいの気持ちで現場に行ったんですが、同世代の方たちがとてつもない熱量でお芝居をしている姿や、寝る時間もない中で動いていらっしゃるスタッフさんの姿を見たとき、「こんな気持ちでお芝居をしたらみんなに失礼だ」と思いました。そこで気付けて本当によかったと思います。初日で考えが変わった、すごい現場でした。

長編映画初主演となった『人狼ゲーム マッドランド』(17年)が転機となった作品と言う
長編映画初主演となった『人狼ゲーム マッドランド』(17年)が転機となった作品と言う

 女優としての手応えみたいなものはまだ分からないんですけど、『かぐや様~』で藤原千花を演じたことによって、それ以降の作品で「あのピンク髪の子だったんだ」と言っていただくようになりました。『大病院占拠』の感想で、「桃鬼って千花だったんだ」と言われたことも(笑)。原作にしっかり寄せた作品だった分、『かぐや様~』を見てくださった方は、他のどの作品を見ても別人のように思うみたいで。「元からあの声じゃなかったんだ。あれ、お芝居だったんだね」と言っていただけることはうれしいです。

 今はただ「お仕事をさせてもらえてうれしいな」っていう……小学生みたいな感想ですけど(笑)。というのも、新型コロナ禍で1回仕事が止まった経験が自分の中で大きくて。2~3カ月、何もできなかった時期が実際に存在したので、ドラマだったり映画だったり、いろんなお仕事をさせていただけること、いろんなご縁に恵まれていることがすごく幸せです。

 そろそろ制服も着られなくなるかなと思うので、最後に着ておきたい思いはあります。それで、純粋なラブストーリーをやりたいですね。将来的にはどんな役もこなせるようになって、「これもこの人だったんだ」と言われるようなお芝居をしていきたい。この先も楽しくお仕事をしたいし、いつもお世話になっているスタッフさんにも「あー、今日も大変だけど楽しかった」と思ってもらえる、そんなお仕事ができるように頑張りたいです。

 自他ともに認める大のディズニーファン。パークに足を運ぶのが好きだと言い、その魅力を尋ねると、スイッチが入ったように熱いプレゼンが始まった。

 ディズニーは私の生きがいなんです。去年のハロウィーンの時期には10回以上、パークに行きました。基本的にはプリンセスが好きなんですけど、ベルリオーズやシェリーメイも好き。キャラクターと会う、ショーやパレードを見るという楽しさを大人になって覚えましたが、ショーを見れば誰もが童心に帰れるし、そのときの自分の感情によっても感じ方が変わる。同じショーは2度とないし、毎回発見があるんです。最近のお勧めのショーは「フォレストシアター」でやっている『ミッキーのマジカルミュージックワールド』。「チケット代だけでこのショーを見ていいのか?」と思うくらい素晴らしくて、初めて見たときは涙が止まらなくなりました。若い頃ってアトラクションに行きがちだと思うんですけど、ぜひ一度、ショーを体験してほしいです。

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(写真/中村嘉昭)

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