同名原作漫画の世界観そのままに、性行為が法律で禁じられた近未来の日本という舞台設定と、刺激的な性描写で話題のドラマ『アカイリンゴ』(ABC/日曜深夜0時25分、テレビ神奈川/金曜深夜2時)。関東では地上波キー局での放送がないにもかかわらず、TVerのお気に入り登録者数が15万人に迫っている話題作で、主人公・犬田光を演じているのが20歳の小宮璃央だ。

小宮璃央(こみや・りお)
2002年11月19日生まれ。福岡県出身

2018年 『高一ミスターコン2018』グランプリ受賞。本選である『男子高生ミスターコン2018』で準グランプリ・SNOW賞を受賞
2020年 『魔進戦隊キラメイジャー』にてドラマデビュー。熱田充瑠/キラメイレッド役にて主演
2021年 『JKからやり直すシルバープラン』主演・尾上慎二役(鈴木ゆうかとのW主演)
2022年 『永遠の昨日』主演・山田浩一役(井上想良とのW主演)

2023年は、『君と世界が終わる日に』(日本テレビ系/2023年3月19日放送予定)に一ノ瀬稜役で出演予定

 小宮演じる犬田は、禁止されている性行為を取り締まる、厚生労働省性行為取締官(通称セトリ)の幹部を父に持つ優等生。自身もセトリになる夢を抱き、性行為に走る者に対して侮蔑的な感情を抱いていたが、悪友の誘いにより別の衝動が芽生える。そしてひそかに憧れていた国民的人気女優・ウチュラこと宇宙美空(新條由芽)との出会いや、幼なじみの水瀬優(川津明日香)との関係性の変化により、法律に対し疑問を抱いていく。

 俳優の尊厳を守りつつ監督の演出意図をくみ取りつつ、性的なシーンの制作に携わるインティマシー・コーディネーターも関わっている本作。「絶対にやりたいと思った」と語る小宮は、原作に魅力を感じたことはもちろん、地上波放送の幅を広げるチャンスになると思ったのだという。

 原作を読んでいる方もドラマを見てくださっていて、SNSでもいろんなお声をいただくので、反響はすごくうれしいです。ファンの方はびっくりされていますが、「まぁびっくりするだろうな」と思っています(笑)。ただ僕自身は、お話をいただいたときには「やろう!」という意気込みしかなかったです。

 この作品にはインティマシー・コーディネーターの西山ももこさんに参加いただいているのですが、この職種の方は西山さんも含め日本には2人しかいないので、前例が少ない作品という意味でも大きなチャンスだと思いました。いい成果が残せたら、この先、地上波の幅も広がっていくんじゃないかと。ただ、台本を読んだときには「どう撮影するの?」とびっくりしました。監督や西山さんの創意工夫で成立している作品だと思います。

ドラマ『アカイリンゴ』は、Tverで最新話を無料配信しているほか、DMM TVで見放題独占配信中
ドラマ『アカイリンゴ』は、Tverで最新話を無料配信しているほか、DMM TVで見放題独占配信中

 インティマシーなシーンに、僕自身は抵抗がないです。西山さんやプロデューサーの方から「気を使わず言ってもらっていいんだよ」と言っていただいたんですが、「本当に何でもできます」と。ただ女性キャストの方は、役とはいえ触れられて嫌なところもあるでしょうし、だからといって水瀬やウチュラが僕に「嫌だ」と直接は言いづらいだろうから、西山さんに聞いていただいて、「何かあれば教えてください」とお話ししました。接触が多いドラマなので、そういう気の使い方はしましたね。

 そうしたシーンは、僕をずっと応援してくださっている方からすれば、オブラートに包まず言うと「嫌だ」という気持ちもあると思います。でもこれは小宮璃央ではなく犬田光なので、犬田という人生や『アカイリンゴ』の世界観を楽しんでほしい。そこは意識して、お芝居に向き合っています。

確実に殻を破れた作品に

 悪友の誘いにより性に目覚めてしまった自分に戸惑い、当初は苦しむ犬田。しかし次第に「性行為禁止」の法に疑問を抱き、自暴自棄となっていく。犬田の心情を理解した上で、優等生からの変貌を演じた小宮。そして本作が伝えようとしている本質についても、自分なりに思いをめぐらせている。

 人間は影響されやすいものだし、犬田は思春期で精神的にも不安定だから、流されちゃうんだろうなぁって。その変化を演じる上では、口調や声の低さを意識したり、一人称を「僕」から「俺」にしたり、工夫しています。後半は眼鏡を外しているんですけど、そうすることで切り替わる感じもありましたね。

ドラマ後半は原作とは異なるオリジナルの展開で、小宮が演じる主人公・犬田光も中盤からキャラクターが大きく変わった
ドラマ後半は原作とは異なるオリジナルの展開で、小宮が演じる主人公・犬田光も中盤からキャラクターが大きく変わった

 原作はまだ完結していないので、6話ぐらいからドラマオリジナルの展開になるんですけど、法が制定された理由や犬田の出生の話も出てきて、面白い結末に向かいます。今って現実の世界でも、当たり前だったことが禁止されているじゃないですか? 例えば緊急事態宣言下であったように「マスクをしないといけないよ」とか「絶対に旅行へ行っちゃだめだよ」とか。だから性行為禁止も、もしかしたらあり得ることかもしれないとも思うんですよね。フィクションだけど、少し現実的にも感じてほしい、原作や台本からもそういう思いを感じました。

 この作品で、確実に殻は破れましたね(笑)。そもそもラブシーンを演じる機会も少なかったので、知らなかった世界を知って、芝居によい伸びしろができたのかなと思います。ファンの皆さんには「別に、殻を破らなくていいよ」とか「今じゃなくていいよ、まだ20歳になりたてだよ」とも言われるんですけど、20歳になりたてだからこそできること、若いからこそ出せるお芝居の味があるんじゃないかなと思うんです。それに、若い自分が率先してこういう作品に出て、力を注ぐことに意味があるとも感じています。

 2020年、ドラマ初出演にして初主演を果たした。志は俳優一本だという小宮にとって、転機は「すべての作品」。しかし特撮作品への出演はやはり大きな経験になったと振り返る。物腰は柔らかだが、俳優という仕事について話し出すと、その熱い思いが伝わってきた。

2020年に特撮作品にてドラマ初出演にして初主演を果たした
2020年に特撮作品にてドラマ初出演にして初主演を果たした

すべての作品が自分にとっての転機に

 自分自身と違う人間になれることが、この職業の良さだと思います。人生は一度きりなので、いろんな人を見て、いろんな役を通して、いろんな価値観に触れ合って、人生の経験値としてすごく大きなものを得られる。僕はその気持ち1つで、役者をやっているところがあります。

 最初こそ人前に出て台本を読むことに恥ずかしさはありましたけど、楽しかった思い出しかないです。これまで4年間、役者をやってきてよかったし、4年間があったから今の自分がある。すべての作品が僕の転機なんです。お話をいただけること自体が幸せなことなので、一つ一つ全力でやってきました。

 その中でもやっぱり『キラメイジャー』は、僕のことを知ってくださる方が増えたという意味でも大きな作品ですね。ドラマや映画だけじゃなく、舞台やヒーローショーも経験して、キャラソンも歌いましたし、この作品で経験してないことはないんじゃないかってくらいいろんなことをさせてもらいました。大変でしたけど、すべてが自分の経験値として蓄えられていると感じます。

 お芝居のことでつらいと思ったことはないんですけど、正直なところ、この世界はお客さんありきじゃないですか? だけど十人十色ですから、全員に楽しんでいただけることは100%ない。誰かが嫌だというのは、絶対あるんですよね。まさに『アカイリンゴ』は、「仕事選んでよ!」なんて声もあったんです。でも、僕はちゃんと原作を読んだ上で「やります!」と言っているし、僕のしたいことをさせていただいて、こんなに幸せなことはないんですけど……そういう、SNSでの言葉のとげは多少ですが心に来るものはあります。でもこの職業はそれありきですから、それを跳ね返せるメンタルが培われました。僕は現場をちゃんと楽しんでいるので、ファンの皆さんも安心して作品を楽しんでいただけたらうれしいです。

幅広い役柄で「小宮くんならできるんじゃないかな」と思ってもらえるような俳優になりたいと話す
幅広い役柄で「小宮くんならできるんじゃないかな」と思ってもらえるような俳優になりたいと話す

 最近、月9ドラマ『女神(テミス)の教室~リーガル青春白書~』(フジテレビ系)を見ていて、こういう難しいお話をやってみたいと思いました。自分とは正反対のダークな役もやってみたいし、これまでおとなしい役が多かったので、はっちゃけた役や王子様もやってみたいです。ファンの皆さんは、もっと成長したら警察官や先生を演じてほしいと言ってくださるので、演じられるように力をつけたい。幅広く何でも、「小宮くんならできるんじゃないかな」と思っていただける俳優になりたいし、とにかく大好きなこのお仕事を続けたいです。そもそも未来のことは分からないじゃないですか。いつ何が起こるか分からないから、今を今として楽しむことを、僕は一番に大切にしています。

 はまっているエンタメを聞くと「ずっと漫画が大好き」。ヤンキーものからラブコメディ、異世界転生までオールジャンルを網羅しており、その熱量はかなりのもの。次々と作品名を挙げ、熱く思いを語った。悩みに悩んで最終的に3本をピックアップしたが、これも話し出すと止まらない。いつか実写にも挑戦してみたいという。

 人生を通してはまっているとなると、『ONE PIECE』、『NARUTO -ナルト-』、『GANTZ』ですね。『NARUTO』は人生の教科書です。『GANTZ』に関しては僕、中学校2年生の時ちょうど厨二病だったので(笑)、『GANTZ』を読んだ帰り道に自転車をこぎながら、ガンツスーツを着てバーンってジャンプする想像をしたり、傘をガンツソードとか言ったりしてました(笑)『ONE PIECE』はもう、何回繰り返し読んで泣いたか分からない。最終章に入って終わりが近づいているのがつらいんですよね。

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(写真/興梠真穂)

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