1歳から芸能活動を始め、2022年に20歳を迎えた畑芽育。数々の作品に出演してきたが、23年3月3日公開の映画『なのに、千輝くんが甘すぎる。』にて、意外にも初となる青春恋愛映画のヒロインを演じる。

畑芽育(はた・めい)
2002年4月10日生まれ。東京都出身

2011年 『グッドライフ~ありがとう、パパ。さよなら~』 瀬川あおい役にてドラマデビュー
2016年 『99.9-刑事専門弁護士-』(以降、シリーズレギュラー出演)佐田かすみ役
2020年 『劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』ムーア/仮面ライダーアバドン役
2021年 NHK大河ドラマ『青天を衝け』尾高ゆう役
2022年 『純愛ディソナンス』園田莉子役、映画『森の中のレストラン』ヒロイン・小島紗耶役

23年は3月24日放送予定の『スペシャルドラマ ペルソナの密告 3つの顔をもつ容疑者』(テレビ東京系)に出演するほか、4月10日に自身初となる1st写真集を発売予定

 同作は、畑演じるごく普通の女の子・真綾の失恋から始まるラブストーリー。気落ちする真綾に、学校一のモテ男子で陸上部のエース・千輝くん(高橋恭平)が提案したのは“片想いごっこ”。「絶対に好きにならないこと」を条件に秘密の関係を始めたものの、千輝くんの優しい言動に真綾の心は揺れ動く。人気漫画の実写化にあたって監督と話し合いを重ね、観客が自分を投影できる「共感されるヒロイン」を目指した。

 撮影前には胸キュン映画やラブコメディに加え、新城毅彦監督の作品をたくさん見て、現場に臨みました。原作があるというのは私にとってはありがたくて、台本を読みながら「ここの表情、どうしようかな?」というときには漫画を読み返して、原作の真綾ちゃんにヒントをもらっていました。

 ただ、あまり原作に引っ張られ過ぎてもよくないというか、実写になることで、わざとらしく見えてしまうのは嫌でした。リアクション1つにしてもやり過ぎることなく、だけど見てくださる方に伝わるようにという点は、気を配って演じています。

映画『なのに、千輝くんが甘すぎる。』は、23年3月3日全国公開。配給は松竹
映画『なのに、千輝くんが甘すぎる。』は、23年3月3日全国公開。配給は松竹

 とはいえ最初は、「青春映画だから、かわいい女の子を演じなきゃ」という考えにとらわれていたんです。でも、そう思って演じてしまうと、言葉はよくないですが嫌みっぽく見えてしまう。そんなとき監督から「観客の皆さんには、ヒロインに自分を投影して見てもらいたい」と教えていただいたんです。かわいい子すぎると、見る方が感情移入しづらくなってしまう、と。真綾というキャラクターは、ザ・ヒロインというよりも、どこにでもいる飾らない普通の女の子で、ちょっとオタク気質なところもある子。「私が演じるのはそういう女の子なんだ」と、監督との打ち合わせの中で気付くことができました。そこからは、共感してもらえるようにということを第一に考えるようになったんです。

 あまり時間がない中での撮影だったのですが、監督はシーンごと、カットごとに逐一アドバイスをくださり、すごく助けられました。自分がどういうふうに映っているのか、頭の中で想像しながら演じるのは難しかったけど、すごく鍛えられた現場でした。

 失恋を忘れるために始めたはずの“片想いごっこ”が、いつのまにか本当の片想いに変化していく。真綾の気持ちを、畑自身はどう分析し、演じたのだろう。

一生懸命な女の子を心がける

畑が演じる如月真綾は、主人公で学校一のイケメン・千輝彗(高橋恭平)から“片想いごっこ“を提案される
畑が演じる如月真綾は、主人公で学校一のイケメン・千輝彗(高橋恭平)から“片想いごっこ“を提案される

 恋愛や片想いにはいろんな種類があると思っていて、ガラッと気持ちが変わるときもあれば、気付いたら好きになっていることもありますよね。真綾は、気付いたら千輝くんのことを好きになってしまっていたんだと思うんです。ですから演じる上でも、明確な気持ちの分岐点はつくりませんでした。最初の頃の真綾は、「恋に恋する女の子」というか、単純に片想いごっこが楽しくて、それに付き合ってくれる千輝くんも優しくて、青春の1ページとして純粋に楽しんでいたと思います。だけど自分の気持ちに気付き始めてからは、片想いごっこを楽しんでいるふりをする、「演じてしまっている真綾」なんです。「好きにならない」というルールを定めたのは真綾自身だから、千輝くんに気持ちがバレないようにしなきゃと、一生懸命な女の子を演じようと心がけました。

 というか、「それはもう付き合ってるだろう!」と言いたくなるくらい、キュンとするシーンがたくさんあります。なんと言っても、キャッチコピーが「女子憧れ度No.1」ですから。どんな女の子が見ても楽しいのはもちろん、どの年代の方が見ても胸キュンできるシーンがたくさん詰まった作品になりました。

 青春映画での初ヒロインは、畑のキャリアから見れば遅いくらいのタイミングに思える。しかし彼女自身は、抜てきされたことに驚きとプレッシャーがあったという。

青春映画での初ヒロインはプレッシャーでもあったが達成感もあると話す
青春映画での初ヒロインはプレッシャーでもあったが達成感もあると話す

 ここまで、時間がかかったとはまったく思わないですけど、「いつか、いつか」と思っていたことが突然、現れた感じでした。最初はドッキリかと思って「またまた、悪いご冗談を」みたいな(笑)。でも、実際に脚本をもらって、ひしひしと実感していって、あっという間に撮影が終わっちゃって。実はまだ気持ちが追いついていないんです。

 最初は「うわぁ、こんな大役を任せていただいて……」といううれしさと、夢見ていたヒロインを演じることへのわくわくが強かったんですけど、撮影が近付いてくるにつれて、責任の大きさに気付いてしまって。現場では、プレッシャーに押しつぶされそうな自分を隠しながら、頑張っていたつもりです。

 ただ、これだけ大きな役だったからこそ達成感もすごくって。自分なりにしっかりしなきゃと責任感を持っていたので、振り返ると「よくやったな」と思えます。一生懸命、突っ走りました。

 主演の高橋さんにもすごく助けていただきました。私もそうなんですけど、高橋さんもあんまり、人と仲良くするのは得意なタイプじゃないのかな(笑)。最初は、ちょっと壁を感じていたんです。だけど時間がたつにつれ話しかけてくださるようになって、座長として現場を盛り上げてくださった。すごく頼もしい座長だなと思いました。

中学生の時に俳優の道を決意

芸歴19年の彼女が女優に道を定めたのは、中学生の時だという
芸歴19年の彼女が女優に道を定めたのは、中学生の時だという

 20歳にして芸歴19年の彼女が、俳優に道を定めたのは、中学生の時に出演したある作品がきっかけ。この先は「どんな役も淡々とこなす女優になりたい」と、独特の表現で目指す役者像を明かした。

 小さい頃から、現場に入るたびにお芝居が楽しいという気持ちが強まっていきましたし、お芝居を認めていただけているんだという喜びがありました。なかでも自分の分岐点になったのは、『99.9-刑事専門弁護士-』(16年、以後シリーズ化)という松本潤さん主演のドラマです。当時、私は中学生だったんですが、そうそうたるキャストに圧倒されつつ、すごいスピード感で進む現場になんとかついて行きました。生き抜いた自分を「よくやった」とほめてあげたい。本当に頑張ったし、いろんなものを吸収した現場でした。先輩方が現場でどういうふうに過ごしているのかを見て、役者のあり方みたいなものを学びました。この作品をきっかけに「役者として食べていきたいな」って、ずっとこのお仕事をしていきたいと思い始めたんです。

 中学生の私は当時、微妙なところにいたんです。子役扱いされたくない気持ちもあるけど、「誰かの娘役」という立ち位置からはまだ抜け出せない。思い悩む時期だったんですけど、あの作品に出させていただいたのはとてもうれしく、大きなことでした。

 最近だと『純愛ディソナンス』(22年)は久々の連続ドラマで、皆さんと一緒に作品を作り上げる作業がすごく楽しかったし、とても思い出深いですね。同じ事務所の、年の近い女優さんであり仲間である吉川愛ちゃんのお芝居を、シェアハウスの住人として近くで見られたこともすごく光栄でした。いろんな方が見ている枠のドラマということもあって、たくさんの方に知っていただくきっかけになったようにも思います。

 振り返ってみると、今までのどんな役も自分の糧になっているんです。今の自分がいるのは、いろんな役をやらせていただいたおかげなので、今後も苦手意識は持たずに、とりあえずやってみることを心がけながら、どの役も一生懸命、自分に向き合わせたい。どんな役がきても、淡々とこなす女優さんになりたいんです。「畑さんに任せておけば大丈夫だろう」という安心感のある、職人的な女優になりたいとずっと思っています。

 最近はまっているエンタメ作品は、Netflixオリジナルシリーズの『First Love 初恋』。瞳をきらきら輝かせ、魅力を語った。

 私が言うのも変かもしれませんが、青年時代、少女時代を演じられている八木莉可子ちゃんと木戸大聖さんは、お2人ともすごく透明感がありますよね。あんな運命の出会い、なかなか経験しないじゃないですか。映像もすごくきれいだし、宇多田ヒカルさんの曲に合わせたドラマの書き方もすてき。「いいなー」と……私にはなかった青春だなぁと思いながら見ています(笑)。

/

(写真/中川容邦)

この記事をいいね!する