2022年10月から放送されたTBSドラマ『君の花になる』に期間限定グループ「8LOOM(ブルーム)」のメンバーとして出演していたNOA。20年からソロアーティストとして活躍していた彼が、23年2月22日、初アルバムにして初のフィジカルリリースとなる『NO.A(ナンバーエー)』を発売する。もともとその才能と感性は、音楽業界やZ世代を中心に支持され、3カ国語を流ちょうに操る語学力もあいまって海外ファンも多かったNOAだが、ドラマ出演によって彼を取り巻く環境は大きく変わった。

NOA(ノア)
2000年3月13日生まれ。東京都出身

2012年 韓国でYG ENTERTAINMENT練習生となる(日本人初)
2018年 帰国
2020年 デジタルシングル『LIGHTS UP』をリリース。『TAXI feat. tofubeats』がタイのSpotifyバイラルチャート1位
2021年 『LET GO feat. JEON WOONG(AB6IX)』でメジャーデビュー
2022年 ドラマ『君の花になる』に出演、劇中のボーイズグループ「8LOOM」のメンバーとしても活躍

2023年2月22日に1stアルバム『NO.A』リリース。5月6日には1stライブを東京・EX THEATER ROPPONGIで開催

 「8LOOM」としての曲のリリース、音楽番組への出演やライブ、ファンミーティングなども期間限定ながら精力的に行い、グループ活動として熱狂的なムーブメントをつくった。

 ドラマ放送前には19万人だったInstagramのフォロワーは58.5万人に、Twitterフォロワーは3.7万人から16.2万人に急増(数字は23年2月7日現在)。放送終了後もファンダムも大きく成長中だ。自身も「22年は“8LOOMのNOA”としての1年だった」と振り返るが、この急速な変化をNOA自身はどう見ているのか。

 まず率直にものすごくうれしいです。身近なところでも、お母さんの友達の娘さんが僕の大ファンになったとか、学校で「8LOOM」の曲が人気だとか聞いて。今、何か“輪っか”のようなものがどんどん大きくなっている感覚を強く感じていて、すごくわくわくしているところです。

 これまでは正直、Twitterのトレンド入りすることもなかなかなかったですが、今はインスタライブの直後にトレンド入りしたり、僕が紹介した商品が売り切れになったり、そうした一つ一つのことがいまだに不思議です。本当に不思議な空間にいるように気持ちのまま続いています。でも、何よりもうれしい気持ちが一番で、「もっと頑張らなくちゃ」とめちゃくちゃエンジンがかかっている状態ですね。

 『君の花になる』は、これからも僕にとっていろんなきっかけになる作品。「8LOOM」の仲間と出会えたのは、僕にとってすごく大きいことでした。いまだにみんな仲が良くてグループラインとかもずっと動いています。この人間関係は、今後もずっと続いていくのかなと思っています。かけがえのない瞬間、かけがえのない存在がいっぱいつくれた時間でしたね。

 お芝居でも日々、新しい表現を学んだことが、アルバムのレコーディングにも生きました。歌うときに自分の気持ちの入り方みたいなものが違ってきたなと感じることが多く、改めて貴重な経験でした。あと、ものすごく自分に自信がついたことも大きかったです。その自信が歌う際の声に出ているなと感じます。自分からもっと発信しようと前向きな気持ちになれたり、精神面での強さにもつながったりしました。

 小さなことではドラマの期間中に美顔器を使ってその良さを知ったので、この習慣は続けたいなと思って自分でも買いました(笑)。韓国製の製品なんですけど。僕、小さい頃から自分をケアして高めるのが好きで、パックも使っていますけど、今は美顔器にはまっています。

TBSドラマ『君の花になる』に期間限定グループ「8LOOM」のメンバーの久留島巧役で出演
TBSドラマ『君の花になる』に期間限定グループ「8LOOM」のメンバーの久留島巧役で出演

見えない不安が多かった時期も

 これまで自信がなかったのかと尋ねると、デビュー以降、自分の音楽をたくさんの人に届けたいと思ってもなかなか手応えを得られなかったこと、さらにデビュー間もなくして新型コロナウイルス禍に入ってしまった不安な時期があったという。そうしたなかで、SNSを通じてNOANA(NOAのファンの呼称)たちと接する時間が、NOAにとって大切なものだったようだ。

 今まで、「もっと自信を持っていいのに」とはめちゃくちゃ言われていました。たぶん自分が思っている以上に自信がなさそうに見えたんでしょうね。全力で表現しているのに、思ったほどの反響を得られず、やっぱり自信はなくしつつあったのかなと正直思います。ただ「想像していた反響」も、僕がそれまで韓国にいたので、デビューしたらバーン! ドーン! みたいな特例を身近で見過ぎちゃっていたことはあるんでしょうね(笑)。でも、その後すぐコロナ禍になってしまったこともあり、先が見えない不安がいっぱいあった時期ではありました。今回のアルバムにも収録した『Fireworks』のビデオもその頃にできたもので、コロナ禍でみんなが思い出づくりできないなか、今までの思い出の写真を振り返って楽しい気分になろうと呼びかけて、みんなから思い出の写真をもらって作ったものです。コロナ禍だからこそ生まれたアイデアですが、僕にとってはいろいろなことが学べた貴重な経験でした。

 1stアルバムの『NO.A』は、収録曲14曲のうち9曲が新曲。そのほとんどがNOAの作詞作曲によるもの。クリエイター陣もUTA、SUNNY BOY、tofubeats、Ayumu Imazu、KM、Bekuh BOOMと、当代トップクラスの顔ぶればかり。バラエティに富んだ楽曲からは、底知れぬNOAの可能性を感じる。

1stアルバムの『NO.A』は2023年2月22日発売
1stアルバムの『NO.A』は2023年2月22日発売

 僕にとっては初めてのCDが『NO.A』です。やっとCDでリリースできる思いもありますし、すごくうれしいですね。CDショップに僕のCDが並ぶのも貴重な光景なんだろうなと想像します。

 作るにあたって「1stアルバムって、どんなものにすべきだろう?」と悩みましたね。いろいろ考えた末、僕の1作目っていうことで、とにかく自己紹介したいなと。そうした意味では、僕にとってここからがスタートという、本当の意味でデビューの1枚になると思っています。この3年間を応援してくださったファンの方に感謝の気持ちも伝えたかったので僕の今までの既存曲もあれば、新曲では新しい僕を見せたいなと考えました。もちろん基本の軸としてはR&Bとダンスですが、いろんな今の僕を届けたかった。テーマが決まった瞬間、いろいろと曲も浮かんでいきました。

 先ほどお話しした『Fireworks』は、これまで(音楽共有サービスの)「SoundCloud」で公開し、オンラインライブやファンミーティングでも歌ってきましたが、音源としてリリースするのは今回が初めて。実はアルバムのトラックリストが決まった後に、最後の最後で入れようと決めたんです。僕にとって貴重な曲だからどうしようかなと思いつつ、やっぱりみんなとシェアしたいなと。レコーディングもし直して、アレンジも新たに加え、今の自分が作れる『Fireworks』になったと思います。

新曲9曲のほか、タイのSpotifyバイラルチャート1位を獲得した『TAXI feat. tofubeats』など全14曲を収録
新曲9曲のほか、タイのSpotifyバイラルチャート1位を獲得した『TAXI feat. tofubeats』など全14曲を収録

リード曲でNOANAへの感謝を

 リード曲の『Purple Sky』は、22年3月のファンミーティング(『NOA SPECIAL FAN MEETING 2022』)の後、僕を応援してくれているNOANAへ感謝を込めて書いた曲で、その日、僕がステージから見た光景が、紫のライトブレスレットで染まっていたのでこのタイトルになりました。ただ、曲を書き終えてみたら、仲間であったり恋であったり、いろんなものと重ねられるなとも感じたんです。もちろん、僕にとっては8LOOMのメンバーも歌詞に強く重なる存在でした。

 アルバムには、『Purple Sky』を含めてSUNNY BOYさんとの曲が4曲ありますが、SUNNYさんは一緒に作業をしていてすごく楽しいし、SUNNYさんのギャグが僕のツボなのか、毎回、腹がちぎれるくらい大笑いしながら作っています。だから僕もいろんなアイデアが湧くんですよ。いつもかっこいいサウンドを必ず作ってくださる方だし、今回も全ての曲のカラーが違うんですよ。特に『Step Back』は2人とも高いテンションで、すごいスピード感で作ったんですが、できた後に聴いて一緒に「やばいね!」と言ったくらいかっこよくて大好きな曲ですね。

 『To Be Honest』を一緒につくったUTAさんは僕のことをSUNNYさん経由で知ってくれていたんですが、8LOOMの曲もUTAさんの制作だったので、そのレコーディングで「今度ご一緒したいです」とお話ししたところ、ショートスパンで夢がかなってうれしかったです。一緒にやりたい方にはどんどん自分からアプローチしていくほうですね。本当は初対面の方に話しかけるのも苦手なくらい人見知りなんですけど、チャンスは1度しかないので逃さないように。(笑)

 アルバムにも収録された『Just Feel It feat. Ayumu Imazu』でフィーチャリングしたAyumu Imazuや、かつて練習生として所属した韓国のYG ENTERTAINMENT時代からの付き合いであるTREASUREのメンバーや音楽プロデューサーのレソン(MILLENNIUM)など、周囲に同じZ世代の才能豊かな仲間がたくさんいることも、NOAが新時代を築く予感がする1つの要因だ。

 Ayumuくんは同い年だし、海外経験もあり、過去にグループ活動を目指していてソロになったりとか、共通点が多いんです。ずっとご一緒したいと思っていたんですが、実際に会ったら、Ayumuくんの話は刺激的だし、感じるものも似ていて、めちゃくちゃ仲良くなりました。「今後も遊び気分で何かいろんな曲を作りたいね」って話していて、またいい仲間ができた感じがありますね。逆にレソンやTREASUREのメンバー、AB6IXのウンヒョンとかCIXのビョンゴンヒョン(BX)とかスンフンヒョンとかは、10代前半から一緒だったので、仲間というよりも幼なじみの感覚です。TREASUREとは1月に彼らがさいたまスーパーアリーナにライブをしたときに3年ぶりに会ったんですが、練習生時代の空気感のままなんですよ(笑)。大きい会場で彼らのステージを見てうれしかったし、セットリストに自分も練習した曲(『GOING CRAZY』)があったのは不思議な気持ちになりました(笑)。もしかしたら自分もいたのかなとも思うこともありますが、今、僕は今の自分に誇りを持って、彼らの成功をうれしく思っていますね。

今後は海外のアーティストともどんどんコラボしたいと話す
今後は海外のアーティストともどんどんコラボしたいと話す

 自身にとっても「新たなスタート」だと位置づけるアルバムリリース後、どんなNOAを見せてくれるのだろうか。

 このアルバムをきっかけにいろんな方に知ってほしいですし、今応援してくださっている方たちとはたくさんの思い出がつくれればと思っています。ライブやフェス、イベントなどを通して、皆さんと直接会う機会をたくさん設ける1年になると思いますし、デビューから目標に掲げているアジアツアーやワールドツアーも、今後、具体的に進めていけたらと思います。

 あと、海外のアーティストともどんどんコラボしたいですね。22年はジェレミー・ザッカーとかkeshiとかjoanとかたくさんのライブに行き、「一緒に曲を作りたいです」とご挨拶もさせていただいたんですが、そういった夢をどんどんかなえていきたいですね。

 軸としては変わらず、音楽を通して僕が伝えたいことを僕らしく届けていきたいですし、そのなかでもアップグレードし続ける姿をお見せしたいですね。これまで通り自分に嘘をつくことなく、僕が思ったままを音楽にしたいし、もっと「NOAらしさ」を明確にしていくのも今後の目標です。

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参考記事 NOA・森愁斗 言葉がなくても気持ちが分かる関係を築けた仲間

(写真/上野裕二、ヘアメイク/Shinya Fukami、衣装・スタイリング/NOA)

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