1月スタートのドラマ『わたしの夫は―あの娘の恋人―』(テレビ大阪・BSテレ東/毎週土曜24時ほか)の“あの娘”こと、睦美を演じる23歳の紺野彩夏。主人公・香織(山下リオ)の夫・拓也(泉澤祐希)の不倫相手という役どころだ。睦美にも夫がおり、本作では2組のダブル不倫から始まる愛憎劇を描く。
2016年 集英社『Seventeen』専属モデルに
2018年 『仮面ライダージオウ』オーラ役
2021年 集英社『non-no』専属モデルに。映画『藍に響け』松沢環役(久保田紗友とダブル主演)。ドラマ『JKからやり直すシルバープラン』白石ハヤナ役(テレビ東京)
2022年 ドラマ『卒業タイムリミット』小松澪役(NHK総合)、ドラマ『ふたりの背番号4』茂木麻友役(ABCテレビ)、ドラマ『個人差あります』横山真尋役(東海テレビ)、ドラマ『覆面D』小橋アキラ役(ABEMA)、smash.ドラマ『僕たちは恋をしない』笹野夏菜子役(草地稜之とダブル主演)、『私たち結婚しました』シーズン4出演
現在、『わたしの夫は―あの娘の恋人―』が放送中のほか、『漫画家イエナガの複雑社会を超定義』(NHK総合/毎週金曜日23時15分)に松木くらら役で準レギュラー出演中
睦美が抱く、狂気的なまでの「幸せになりたい」という思い。演じる上では難しさもあったというが、「誰しも少しは当てはまる、共感できる気持ちだと思う」と話す。最近まで制服姿で高校生を演じることも多く、2022年秋から配信されたモキュメンタリー(ドキュメンタリーのように演出されているドラマや映画)番組『私たち結婚しました4』(ABEMA)にてきらきらした笑顔を見せていた紺野にとって、新境地といえる作品となった。
お話をいただいたときには、今まで演じたことのない役ということもあり、率直に「面白そうだな」と思いました。最近まで学生の役が多かったですし、これまではあまり、感情がここまで表に出る役を演じたことがなかったんです。その点、今回演じる睦美には狂気じみた部分があって、「面白い役になるんじゃないか?」と。不倫が描かれるので、センシティブなシーンもありますけど、そこは負担がないように、私の気持ちに寄り添ってくださる現場だったのでありがたかったです。伏線もいろいろなところにちりばめられていますし、見ている人が物語に入っていけるような、没入感のあるカメラワークも見どころだと思います。監督が、「かっこいい感じにしたい」とおっしゃっていたんです。(笑)
普段の睦美はどこにでもいるような、普通の子です。だからこそ、爆発したときが怖い。演じるのは結構、難しかったですね。というのも、睦美が切れるタイミングというのが、普通の人とは違うんです。突然、ぶちっといく感じ。そこに感情を持っていくには工夫が必要でした。監督とも、睦美の切れるポイントを話し合いました。ここで切れるのがいいか、ここではまだためておいて、ここで爆発したほうがいいか、というふうに相談して決めてはいたんですが、本当に睦美の言動は、普通の人には想像のつかないものなので。見ている人も最初はきっと、睦美が分からないと思います。「なんでこの人、ここで切れたんだろう?」と不思議に感じることもあると思いますが、ストーリーが進むにつれだんだん「これ、睦美なら切れるな」と、分かってくると思います。
台本の背景も含めて考えて演じる
ダブル不倫という刺激的な題材に加え、映像の美しさやミステリー要素もあるストーリーが話題となり、TVerのお気に入りの登録者数が1話の放送直後から急増。首都圏では地上波放送されていないにもかかわらず、現在は24万人を超えるなど、23年1月クールの注目作となっている。
不倫を描いた作品ですけど、見る人がまるで共感できないという話ではないと思いますね。睦美はもちろん、どのキャラクターについても、どこか自分の中に思い当たる節があるのではないかなと。睦美の行動も、全ては「幸せになりたい」という思いからであって、そうした誰もが思っていることを、睦美はただ煮詰めすぎちゃっただけ。私も、睦美の感情の入り口は理解できます。そして終盤のある言葉で、なぜ睦美がそこまで幸せにこだわっているのか、こうなってしまったかが分かるはずです。
今まで演じたことがない上に、ここから先も演じる機会があるかどうか分からない役なので、今回は役の背景だったり動きだったり、台本に書かれていることに加えて考えることが多かったです。監督と相談しながら「作り上げる」という感じがあって、「役を作っていく」という作業が濃かったように思いますし、勉強になったと感じています。
0歳で現在の事務所に所属し、1歳でモデルデビュー、3歳で子役デビューをした紺野。16年に集英社『Seventeen』専属モデルとなり、同世代から高い支持を得る存在に。18年に、連続ドラマ初のレギュラー出演作『仮面ライダージオウ』にて冷徹なヒール役・オーラを演じたことで、女優としての活動も本格化させた。最近では、モキュメンタリー番組『私たち結婚しました4』への出演で注目を集めたが、「難しかった」という“設定50・即興演技50”の本作を通し、女優として得るものがあったという。
仕事はずっと楽しかったですけど、どこか「部活代わり」みたいな気持ちがあったんです。ただ『Seventeen』の専属モデルになり、そのあと『仮面ライダージオウ』が決まって、その頃にはちゃんと「お仕事なんだ」という気持ちが強くなりました。そして『ジオウ』が終わるくらいから、お芝居をする楽しさみたいなものが生まれたと思います。1年かけて演じる中で、役もどんどん変化していきますし、『ジオウ』では監督も2話ごとに変わるんです。役として変えちゃいけないところを守りつつも柔軟に変化していくために、会話が大事な現場でした。その経験は、今でも生きていると思います。
最近、『私たち結婚しました』という番組に出演させていただきましたが、普段と違って役名がないので、見ている方はおそらく私として見ているんですよね。とはいえ「結婚したら」という設定を演じているのであって、かといって自分を演じているわけでもなく……説明が難しいんです(笑)。実際、難しかったですよ。いつもは台本があって、この役名で、こういう性格でというものが全部決まった上で演じるところを、今回は大まかな設定しかなかったので、難しいと思いました。
とはいえ台本があるドラマでも、自分が言った言葉に対して、相手がどういうふうに返すかというのは、やってみるまで分からない。『私たち~』もそれと同じで、さらには相手がどう返すかによって、自分が次に言う言葉まで変わるんです。その経験は、ドラマにも生かされています。相手のせりふの言い方を受けて、じゃあ次のせりふはこういう返しがいいだろうなというのを、より明確に考えられるようになりました。
いわくがある役にやりがいを感じる
22年は1年間連続ドラマのレギュラー出演が続いた紺野。主要キャストの1人を演じたNHK『卒業タイムリミット』(22年)や、姿は女性だが本当は男性という「異性化」を演じた東海テレビ『個人差あります』(22年)など、本人いわく「何かある」役どころを数多く演じてきた。しかし、それこそが役者のやりがいなのだといい、今後も「面白そう」を原動力に、様々な役に挑戦したい思いだ。「それにとらわれるから」と目標は立てない主義だが、なぜか巡ってこない「キラキラのヒロイン」は一度、経験してみたいと笑った。
『個人差あります』では「本当は男性」という役を演じて、そのあと『私たち結婚しました』を経験して、今回のダブル不倫の作品。ジェットコースターみたいですよね(笑)。私は、「いただいたものをやってみる」というスタンス。いろんな役ができたほうが楽しいかなと思うんですよね。今まで狂気さを感じさせる役をやったことがなかったんですが、今回で経験できたので、あとは本当にただただキラキラした、例えば少女漫画原作のヒロインを一度は演じてみたい。私は、裏に何も抱えていない役をまだ演じたことがないので(笑)。それは、すごくやりたいなって思ってますね。
女子高生を演じるにしても、何かしらを抱えている役が多いんですよ。もちろん、そのような役は演じていて楽しいですし、もし、そういった影のある役をやらせたほうが面白いんじゃないかと思っていただけているのであれば、すごくうれしい。難しくはありますけど、役者でなければできない経験ですから。もちろん、アプローチの方法に悩んだり迷ったりすることはあるんですけど、それを超えたときに、急に楽しくなる瞬間があるんです。だからやっていて楽しいし、やったことのない役をやってみたほうがいいんじゃないかなと思う。私は割と、面白さを基準に考えるところがありますね。「難しそうだから嫌だな」じゃなくて、「難しいけど、とりあえずやってみよう」と試行錯誤しながらやってきましたし、そうして進んでいくほうが楽しいと思うんです。
K-POPが好きだという紺野が最近特にはまっているのは、人気急上昇中の女性グループであるNewJeans。推しメンバーは「決められない!」と言い、いきいきと魅力を教えてくれた。
最近は、新曲の『Ditto』をずっと聴いています。ミュージックビデオも、NewJeansの作品はいつもたくさんの伏線が張ってあって、すごく面白いんです。私よりも若いから、もう全員がかわいくて。サラダの食べ方をずっと話している動画を見たりもします(笑)。K-POPの中でも女性グループが好きで、LE SSERAFIMやIVEも好きなんですけど、その世代の中でもNewJeansは曲調が変わっていて、すごく耳に残るんですよね。
(写真/中川容邦)