ティーン誌モデルとして10代から圧倒的な支持を集め、『仮面ライダーゼロワン』(2019年)のヒロイン・イズ役にて女優デビューを果たした鶴嶋乃愛。22年は計5本の作品に出演するなど芝居の経験を重ねてきた彼女が、1月5日スタートのドラマ『あなたは私におとされたい』(MBS/木曜24時59分ほか)にて連続ドラマ初主演を果たす(村井良大とのW主演)。注目作を次々と送り出している「MBSドラマ特区」枠の作品で、絶対に不倫しない男・直也(村井)と、絶対に不倫させる女・ノア(鶴嶋)との駆け引きの中で夫婦の在り方を問う、話題のコミックの実写化だ。

鶴嶋 乃愛(つるしま・のあ)
2001年5月24日生まれ。高知県出身。

2013年 『第21回ピチモオーディション』グランプリ受賞。『ピチレモン』専属モデルとしてデビュー
2016年 『Popteen』専属モデルに
2019年 『仮面ライダーゼロワン』ヒロイン・イズ役にて女優デビュー
2021年 プロデューサーを務めるファッションブランド「Romansual」を発表
2022年 地上波ドラマ『村井の恋』『恋に無駄口』、配信ドラマ『Eighteen Color-18才、私の色。』『覆面D』に出演

22年12月に公開された。映画『僕らはみーんな生きている』ではヒロイン・由香を演じた。また毎年恒例の「オスカープロモーション 2023年新春晴れ着撮影会」に初参加を果たした

 初めての主演ということですごく緊張していたんですけど、私が一番年下という現場がとても久しぶりだったので、年上のキャストの皆様に助けていただきながら撮影することができました。私は普段とても人見知りで、あまり自分から話しかけられないタイプなのですが、演じるノアちゃんがぐいぐい攻めるタイプの女の子ということもあり、役に助けられたところが大きいです。

 ノアちゃんに一番合うのは小悪魔という表現ですが、やっていることは小悪魔ではなく悪魔です(笑)。どうしたってみんなノアちゃんの魅力にはまってしまう、そんな女性。そうした役をいただいたことはうれしかったですね。まず配役を決める方が私に魅力を感じてくださらないと、選ばれない役だと思うから。「のあ」という同じ名前にも運命を感じましたし、コミックのキャラクターを見て「絶対、このビジュアルに近づけられる」と思いました。ビジュアルも内面も、役を作っていくのはすごく楽しかったです。

『あなたは私におとされたい』は1月5日にMBS、テレビ神奈川ほかで放送スタート(MBSでは毎週木曜24時59分)。TVerで見逃し配信されるほか、ディズニープラスで見放題独占配信
『あなたは私におとされたい』は1月5日にMBS、テレビ神奈川ほかで放送スタート(MBSでは毎週木曜24時59分)。TVerで見逃し配信されるほか、ディズニープラスで見放題独占配信

芝居では声の大切さを意識

 演じる上で意識したのは、声色の変化。誘惑するような言葉の時には甘めの声にして、核心を突く言葉を言う時にはまた、声色を変えています。というのも声は、私がお芝居をする上で一番気を配っている部分なんです。私自身、作品を見ていて最初に気になるのが声とビジュアル。ビジュアルはまず目に入ってくるものですし、きっと、その次は声ですよね。声の聞こえ方によってキャラクターの印象も変わると思うので、役によって声を使い分けられるようになりたいんです。

 ビジュアル面に関しては、今回は原作に近づけることを何より大事にして、ほくろや髪形など、メイクさんと話し合って決めました。私は、原作がある作品においてはいつも忠実を心がけていますね。ですから、一番うれしいのは「漫画から飛び出てきたみたい」と言われること。その言葉を目指して、役を作っています。

 そして今回の作品では、カット後に監督が思わずにやっとしてくれることを目標に頑張りました。タイトルが『あなたは私におとされたい』なので、まずは監督のことをおとさないと始まらないと思って、自分の中の裏テーマとして意識していました。

鶴嶋は、10歳以上年上の村井良大とのW主演となる。村井が演じる直也が勤める証券会社の同じ部署に、鶴嶋演じるノアが新入社員として入社してくる
鶴嶋は、10歳以上年上の村井良大とのW主演となる。村井が演じる直也が勤める証券会社の同じ部署に、鶴嶋演じるノアが新入社員として入社してくる

 品のあるたたずまいと美しい言葉遣いが印象的な鶴嶋だが、本作のテーマである不倫については「嫌悪感」と直接的な表現を用いた。しかし、役と自分をうまく切り離すことで、罪悪感も役を生きている証拠だと考えるようになったという。

気持ちを切り替えながら撮影に

 私は不倫という行動がすごく嫌で、撮影期間中にもすごく嫌悪感があったんです。演じることに罪悪感も生まれていたのですが、それは、役に入り込むことができている証拠なんだと考えるようになりました。とはいえ、私はカメラが止まったらすぐに切り替えるタイプなので、カットがかかった直後に「今のせりふ言うの嫌だったー」「ノアちゃん怖〜い」なんて言いながら撮影していましたね。(笑)

 そして、不倫をテーマにしながらも一風変わった作品だと思います。不倫が描かれる作品って、ある意味では純愛といいますか、「出会うタイミングが違えば、2人はうまくいってたんだろうな」という部分があると思うんです。でも、この作品はそうじゃないんです。ノアちゃんがとにかく攻めの姿勢で、かといって無理やり行動に出るわけでもなく、向こうから来てくれるように促す。そんなノアちゃんの戦法に、果たして直也さんが乗るか乗らないか、毎話はらはらどきどきします。「直也さん、ノアちゃんのところに行っちゃうの?」という2人の駆け引きと、そもそもノアちゃんは直也さんのことが好きなのか? 何が目的なのか? というところにも、最後まで注目していただきたいです。

 13年に『ピチレモン』専属モデルとして芸能界入りを果たし、同世代を中心に高い支持を集める存在となった鶴嶋は、女優デビュー作である『仮面ライダーゼロワン』のヒロイン・イズ役で、芝居に関する基礎を学び、ファン層も広がった。これまでに経験したすべての作品が、今回の初主演につながっていると話す。

『仮面ライダーゼロワン』で演じたイズは、主人公をサポートする秘書型AIロボットで、物語が進んでいくごとに人間らしさが増していくという役どころだった
『仮面ライダーゼロワン』で演じたイズは、主人公をサポートする秘書型AIロボットで、物語が進んでいくごとに人間らしさが増していくという役どころだった

 芸事全般に興味があったので、女優にもモデルにも、アイドルにもなりたかった。やりたいことがたくさんある中、モデルオーディションを見つけて応募したことがこの世界に入ったきっかけです。ですから、もともと女優にも興味はありました。私は高知県の田舎に住んでいたので、娯楽といえば映画館が定番。小さい頃からいろんな映画やドラマを見ていたので、「私もこの画面の中に入りたい」と思っていたんです。だけど、モデルを始めた当時は地元から東京に通っていたので、なかなかお芝居のチャンスがなくって。そんな中、『仮面ライダーゼロワン』のオーディションを受けたことで、女優業をスタートすることができました。

『ゼロワン』での経験が大きな財産に

 『仮面ライダー』は、地元では放送されていなかったこともあって、見たことがなかったんです。だけど、歴史のある作品だということはもちろん知っていましたし、実際に作品の深みに触れて、年齢を重ねてもファンでいらっしゃる方がたくさんいる理由が分かりました。『仮面ライダー』に携わらせていただいたからこそ、今こうしてノアちゃんを演じることができていると思います。というのも、お芝居の仕事は当時、まるっきり初めてだったので、立ち居振る舞いから専門用語、台本の読み方まですべてを学びました。幅広い世代の方に知っていただく機会にもなりましたね。

 それから『恋に無駄口』(22年)も、周りの方からすごく褒めていただいた思い出深い作品。私は、褒められることが好きなんです(笑)。登場人物全員のキャラが立った濃い作品で、私も私でぐいぐい前に出る、ツンデレに振り切った委員長の役だったんですが、監督は私の力量を試してくださったように思います。その期待の上を行かねばと、やる気がばーっとたぎった現場でした。

これからも女優業とモデル業を両立させていきたいと話す
これからも女優業とモデル業を両立させていきたいと話す

 女優業やモデルのほか、ファッションブランド 「Romansual」のプロデュースを手がけるなど、鶴嶋の活躍は多岐にわたる。今後の展望を聞いてみると、冷静かつ貪欲な答えが返ってきた。

 23年のスタートを初主演で切れるなんて、こんなにすてきなことはありません。本当にありがたいことだと思うので、このまま波に乗っていきたいですね。やりたい役もたくさんありますし、ファンの方からは、キラッキラの学園ものをやってほしいと言っていただいているんです。ノアちゃん役でスーツを初めて着ましたが、制服も、まだまだ着れます!。(笑)

 私は、表現するということがすごく好きなんです。そして、それがもっともダイレクトに伝わるのは女優業だと思っています。ドラマや映画は、私たちの生活の身近にあるものですから。そして女優というお仕事を軸に、多方面で頑張っていきたい。私は今の時代、何でもできないとだめだと思っているんです。1つのことができるのは、当たり前のことなのかなって。女優だから女優だけをするというのではなく、入り口はいくつもあった方がいい。実際、モデル業から私を知ってくださった方もいらっしゃいますし、『仮面ライダー』を見て女優業をきっかけに知ってくださった方もいらっしゃる。鶴嶋乃愛を知ってもらうきっかけを、たくさんつくれたらいいなと思っています。

 最近はまっているエンタメは、宝塚歌劇団。昭和の音楽が大好きで、今なお受け継がれ、愛される芸術をたどるうち、宝塚の魅力を知ったのだという。

 お芝居も素晴らしいですし、今も歌い継がれる古き良きメロディーや、キラキラの階段や舞台セット、魅力的なお衣装……私の好きなものがすべて詰まっているんです。初めて見たのは、花組の『巡礼の年~リスト・フェレンツ、魂の彷徨~』。配信で見たんですが、机の上にティッシュが山盛りになるほど、嗚咽(おえつ)しながら泣きました。「何のために音楽を?」というテーマを自分に重ねて、「何のためにこのお仕事をしてるんだろう?」と改めて考えさせられましたし、美しい愛の物語も描かれていて、一気に引き込まれてしまいましたね。

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(写真/中村嘉昭)

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