2022年に入り、3クール続けて連続ドラマに出演中。7月期の『純愛ディソナンス』では物語のキーマンとして、視聴者を裏切る好演を見せるなど、注目度が急上昇しているのが、19歳の藤原大祐。19年のデビュー以降、出演を重ねるたびに注目を集めてきた彼が、『追想ジャーニー』(11月11日公開/セブンフィルム配給)にていよいよ映画初主演を果たす。

藤原大祐(ふじわら・たいゆ)
2003年 10月5日生まれ、東京都出身
2019年 『栄光ゼミナール』CMにてデビュー
2020年 『おじさんはカワイイものがお好き。』にてドラマ初レギュラー
2021年 『愛のまなざしを』で映画初出演。『恋する母たち』『推しの王子様』など立て続けにドラマレギュラー出演
2022年 『神様のえこひいき。』にてドラマ初主演(桜田ひよりとのW主演)。『追想ジャーニー』にて映画初主演

現在、連ドラ『差出人は、誰ですか?』に出演中。2023年1月13日にはフォトブック『TAIYU’s Collection』を発売予定

 同作は、藤原演じる18歳の文也が、30年後の自分(高橋和也)と追想の旅をする中で成長し、自分を見つめ直す物語。谷健二監督とは以前から縁があったといい、「出会いを大切にしたい」と語る藤原にとって、念願がかなったかたちだ。

 実は谷監督とは、ドラマに出始める以前から面識があって、「一緒に作品をやりたいね」とお話をさせてもらっていたんです。念願かなってご一緒できるということで、主演の重圧よりは「谷さんと作品を作れる」という気持ちのほうが大きかったですね。設定も脚本も、面白くてキャッチーなんですが、読み進めていくにつれて、伝えたいテーマが明確に見えてくるので、すごく演じやすかったです。

 ポスターに「演じきれ、俺の人生。」というコピーがあるんですが、僕はその言葉について「今を生きろ」とも言い換えられると思っていて。なぜならこの作品は、18歳の文也と48歳の文也がそれまでの人生を振り返る旅をしていく中で、「一番大事なのは、今を生きることなんだ」と気付くお話だと思うんです。48歳の文也を認めてあげられるのは48歳の文也しかいないし、文也の未来をつくっていくのは18歳の文也。過去や未来を見ながらも、それぞれが「今をちゃんと生きよう」というところにたどり着く、それこそが作品の伝えたいテーマ。あとはそれを伝えるために、どうアプローチするかを考えました。

映画『追想ジャーニー』は11月11日から東京・池袋シネマ・ロサほかで公開
映画『追想ジャーニー』は11月11日から東京・池袋シネマ・ロサほかで公開

 高橋さんとは同じ人物を演じましたが、芝居のすり合わせはしませんでした。30年あれば、人間はいろんなことを経験して変化しますから、同じような人間に見える必要はないのではないかと。僕は「30年後の文也はこうなんだ」と、高橋さんのお芝居を決定事項として、18歳からの30年を想像しましたし、きっと高橋さんも、そう演じていらっしゃったんじゃないかなと思います。

 もともと、僕自身はあまり役作りをしないタイプでもあります。役のバックグラウンドはもちろん染み込ませるんですけど、考えすぎると表現の可能性が狭まってしまう気がしていて。それよりは、現場の雰囲気を感じながら演じたいと思うほうですね。

現場の雰囲気を感じながら演じる

 ほぼ1つの舞台の上で物語が進行していく本作は、撮影方法も特殊だったという。聞けばなるほど、作品の楽しみ方も変わってくる。

 ホールを貸し切って、実際に舞台の上で芝居をやったんですよ。声の響き方も確認して、声量も調整しています。映画を撮っているというよりも「舞台で芝居をしているところを、たまたま映像で撮ってみた」という前提なので、言うならば映像のための芝居じゃないんですよね。空間が広いので、「この芝居じゃ、後ろの人に届かないな」という感覚を持って演じていました。

映画『追想ジャーニー』の監督は谷健二。共演は高橋和也、佐津川愛美ほか
映画『追想ジャーニー』の監督は谷健二。共演は高橋和也、佐津川愛美ほか

 撮影は3日間で、1日で台本換算すると48ページくらい撮りました(笑)。当時は3つくらい現場が重なっていて、人生で一番きつかった時期。スケジュールが送られてきたときには大変だなぁと思いましたけど、3日しかなかったからこそ常に新鮮な気持ちで、感情をつなげて演じることができました。ほぼ順撮りできたのもありがたかったですし、本当に楽しくて、恵まれた環境でした。なかなかほかにはない、特殊な映画ができたと思います。ずっと場面が変わらないんですが、変わるときにはカットがバツっと入る。そこに生っぽさがあって逆に新鮮だし、見ていて面白いと思いますね。

芝居には根拠を持って臨む

 『純愛ディソナンス』で、一見人当たりの良い青年・晴翔を演じた藤原。クライマックス直前にその正体が明らかになると、ネット上が騒然となった。現在、『差出人は誰ですか?』(TBS系/月曜~木曜24時40分~24時55分)に、主人公・美月(幸澤沙良)が思いを寄せるクラスメート・一ノ瀬役で出演中。こちらも、何か一癖ありそうな役ではある。

 『純愛ディソナンス』は、序盤から黒幕的な存在がいることは匂わされて、僕はそれが晴翔と分かって演じていたので、ネットで考察が盛り上がっているのを、にやにや楽しんで見ていました(笑)。僕は役を理解する上で、根本となる何かが1つでもあればいいと思っているんです。晴翔について言えば、彼がああいう風になってしまったファクターと、表に見せている顔、本心とのズレ、それだけは僕の中に明確に持って、あとはその場で役を生きます。というのも、決め込んで臨んでも、やりたいことを100%やるというのはなかなか難しいなと感じていて。

 監督がOKを出してくださったカットがOKですから、自分の理想にこだわるよりも、現場に身を任せることが大事なんだと。自分のやりたいことと、求められる表現との葛藤はありますが、「なぜそういう行動をするのか」が僕の中で明確であれば、「役が生きているからだ」と納得できます。逆に、僕が納得できていない、根拠を持たないまま芝居をしていたら、見ている人にも伝わらないと思う。そこは大切にしたいので、分からないことは監督に聞いて、疑問を解消した上で演じています。生意気ですが、表現が好きだからこそ、そこは自分を貫きたいんです。

『差出人は、誰ですか?』は深夜の帯ドラマとして放送中
『差出人は、誰ですか?』は深夜の帯ドラマとして放送中

 『差出人は、誰ですか?』は、まさに今撮影中です。今回、女優さん4人がオーディションで選ばれた新人の方で、キャストもデビュー1年目の役者が多いこともあって、現場がいい意味で仕事っぽくないんです。本当の高校みたいな感じで話しているのが、かわいいなぁと思います。(櫻井)海音くんは先輩ですけど、とても仲良くさせてもらっていて、(窪塚)愛流とはもともと仲が良いですし、『おじさんはカワイイものがお好き。』(20年)でご一緒した熊坂監督がいらっしゃったりと、撮影の合間は楽しく過ごしています。

 実は、僕もまだ結末を知らないんです。役の生きざまを見ながら、最終の台本を書いていらっしゃるみたいで。そこは正直に言うと、結末を知ってから演じたいとは思いますね。そのほうが、芝居に説得力が出ますから。ただ、これも一種の作り方なんだろうなと、楽しく演じています。役の設定がしっかりしているので、それを根拠に演じられることはありがたいですね。

 質問に対しよどみなく答えを返し、自分の考えをはっきり話す姿は、頭の回転の速さと芯の強さを感じさせる。役者を極めたいが、役者だけに可能性を狭めたくはない。自分自身に期待し続け、表現し続け、夢を追い続けたいのだと話す。

今後は表現の幅を広げることも

 元は全く役者志望ではなかったんですけど、やるからには極めたい。そう思うようになったきっかけは、『中3、冬、逃亡中。』(20年)という配信作(ひかりTVチャンネル+ほか)です。デビューして間もないにもかかわらず、とても重要な役をやらせていただいた作品。重たい背景のある逃走劇なんですけど、芝居に対してすごく真摯な現場で、僕も芝居について深く考えるようになりました。

 作品に出させていただく機会が増えましたが、きっと世間の皆さんよりも僕のほうが自分に期待しているので、今のところプレッシャーは感じません。こんなんじゃダメだ、もっともっとという気持ちが大きいです。例えば連ドラ主演も、もちろんやりたいです。だけど結局、しっかり実力が伴ってきたときにそういうお話が来ると思うので、今は頂いた作品1つひとつに、丁寧に向き合いたい。それが、いつか実を結ぶといいなと思っています。

「世界中の人を笑顔にしたい」という目標があるという
「世界中の人を笑顔にしたい」という目標があるという

 今後、役者だけとは考えていないです。1人の人間として、いろんな表現をしたい。最近、バラエティに出させていただくのも楽しいですし、可能性を狭めたくないんです。人として、愛してもらえたらうれしいですね。

 僕、「世界中の人を笑顔にしたい」という目標があるんですよ。あえて抽象的な目標にしているのは、追い続けたいからです。例えば100人いて、90人を笑顔にすることができたとしても、残りの10人のために一生、頑張りたい。笑顔だけじゃなく、何か心動かす表現をし続けることが、僕の目標です。

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(写真/中村嘉昭、スタイリスト/山本隆司)

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