15歳でラップを始め、16歳で『BAZOOKA!!! 第12回高校生RAP選手権』にて最年少で優勝。Zeebraの主宰レーベル「GRAND MASTER」と2018年に契約し、本格的なアーティスト活動を始めたNovel Core。20年にはSKY-HI率いるマネジメント/レーベル「BMSG」に移籍し、所属第1弾アーティストとして活動を開始した。21年にはメジャー1stアルバムが各チャートで日本1位を獲得している。

Novel Core(ノベルコア)
東京都出身、21歳。ラッパー、シンガーソングライター。SKY-HI主宰のマネジメント/レーベル“BMSG”に第1弾アーティストとして所属。メジャー1stアルバム『A GREAT FOOL』とメジャー2ndアルバム『No Pressure』が2作連続、各チャートで日本1位を獲得。全国ツアーやZepp単独公演のチケットが即ソールドアウトし、全公演を成功させるなど、その存在感を確かなものにする一方で、トップメゾンのモデルに起用されるなど、ファッション業界からも注目を集める新世代アーティスト。音楽やファッションへのZ世代からの支持が熱く、TikTokやInstagramでは20万人近いフォロワーを持つ

 22年は初の全国ツアーとKT Zepp Yokohamaにて自身初のバンド体制でのワンマンライブを成功させ、さらには8月にリリースした2ndアルバム『No Pressure』でもiTunes総合アルバムチャートで1位に輝き、さらには秋から全国ツアーも始まるなど、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの21歳だ。まず、アーティストを目指したきっかけから聞いた。

 小さい頃からいろいろな国やジャンルの音楽が流れている環境で育ちました。中学の頃はボン・ジョヴィだったりレッド・ツェッペリンだったり、もう少しパンク寄りのSUM41とかblink-182とかが好きで。それが中学の合唱コンクールで指揮者をやったのがきっかけで、クラシックに夢中になり「いつかウィーンで楽団を率いてマエストロになりたい」と勉強していたんです。でも、音楽大学に行くのは現実的には難しいとなった頃に、たまたまYouTubeでヒップホップのインストを聴きました。他のジャンルのドラム音を引っ張ってきたりといったサンプリングを含めて、いろいろな要素がごちゃまぜになっているカルチャーで、一気にのめり込んでラップを始めたんです。

16歳で『高校生RAP選手権』にて最年少で優勝
16歳で『高校生RAP選手権』にて最年少で優勝

 最初は路上に出てフリースタイルでパフォーマンスしたり、MCバトルに出てみたり。何かいわゆる「名前を売る作業」みたいな感覚で過ごしていたので、音楽を作ってアーティストとしてデビューするまでにはわりと時間が掛かっちゃったんです。でも、路上でやっていたのがきっかけでZeebraさんから「うちの事務所でやらないか」ってお声を掛けていただき、デビューにつながりました。

 Zeebraさんとの出会いは大きかったですね。「いざとなったときには自力が求められるよ」と、インディペンデントなアーティストである姿勢を教えていただきました。自分が1000万円くらい借金してアルバムを自主制作したのも、Zeebraさんの言葉があったからチャレンジしたところもあります。本当に大きな影響を受けました。

19歳で自費1000万円を投じたアルバム制作

 「当時は、どんなに自分が活動を頑張ってもZeebraさんの名前がつきまとってしまうのが苦しかった」と振り返る。そこから脱却するための1つが、自主制作アルバムを作ることだった。1000万円の借金をしたのは、19歳のこと。その経験がアーティストとして大きな糧になっている。

 まさに一世一代の賭けでした。ただ、そこからもヒットを出せたことで、自分自身のクリエーションにも自信が持てましたし、CDのプレスやアートワーク、領収書・請求書の管理、諸々の連絡など、普段周りのスタッフさんがやってくれることを全部自分で経験できたことも大きかったです。その経験があるからメジャーデビュー後もスタッフさんたちがどう動いてくれているかが分かるので、近い距離感で一緒にお仕事できているのかなと思います。

SKY-HI主宰レーベルの第1弾アーティストに
SKY-HI主宰レーベルの第1弾アーティストに

 そんなときに、尊敬する先輩で信頼関係もあった日高(光啓/SKY-HI)さんに声を掛けていただいて。最初に「(Novel)CoreがCoreらしくいられる状態は何があっても担保するから一緒にやらないか」と。この人が言う(BMSGの理念でもある)「アーティストファースト」「クオリティーファースト」「クリエーティブファースト」を自分も体現できるアーティストになれるんじゃないかと思い、それでBMSGへの移籍を決めました。

 当時はメジャーよりもインディーズで自分が予算をやりくりして作ったほうが早いとも思っていたんです。日高さんともだいぶその話をしたんですが、メジャーレーベルだからこそのスキームや活動の機会もあるからと。単純に自分が今まで見たことのない景色を見てみたいっていう思いもちょっとありました。

 2022年は自己紹介代わりの全国ツアーに次いでワンマンを終え、8月にリリースした2ndアルバム『No Pressure』は1stから進化したNovel Coreを見せた。

8月に2ndアルバム『No Pressure』を発売
8月に2ndアルバム『No Pressure』を発売

 メロディーにしろ楽曲自体のテイストにしろ、今までやったことがないものにどんどんチャレンジしていって、自分の音楽としてのレンジもだいぶ広がった1枚になりました。あとは、今までの作品はどっちかというとすごくパーソナルな作品が多く、自分の内側と向き合ってきたんですが、今作はもっと「外に向ける」意識が強く出ています。「僕はこう思っているけれども、それと同じ感覚を持っている人がもしいるなら一緒にこうやって生きていこうぜ」と、人に向けて歌っている感覚が明確に芽生えた1枚かなと思っています。

 前面に押し出したかったのは、ネガティブとポジティブは常に共存していて全く別のものではないよというメッセージ。今までは自分が抱えてきたネガティブな感情や感じている不自由さを「悪いもの」「嫌なもの」として捉え続けていましたが、いろいろなことを経験していくなかで、当時味わった不自由さがなければ今自由だと感じられてないとか、ネガティブな感情を知っているからこそ何がポジティブな感情か分かるんじゃないかなとか思うようになって。そう思うとネガティブ自体をありのまま愛せるようになったんです。

「THE FIRST」をどう見ていたか

 20年9月の設立時には所属アーティストはSKY-HIとNovel Coreの2人だけだったBMSGも、その後オーディション「THE FIRST」を通してBE:FIRSTを筆頭に増え、短期間で急成長。今やBMSGそのものが、日本の音楽業界のホットトピックだ。BMSG第1弾アーティストとして、「THE FIRST」以降をどう見ていたのか。そして自身の未来をどう考えているのか。

 だいぶ神経を使ってきた1年半だったのかなと思います。僕は第1弾アーティストとして入った以上、BMSGの理念だったりを日高さんの次に理解している必要があると思っていましたし、「THE FIRST」以降はBMSGが大きくなるなかで、できる限り組織全体を見る時間を増やさないとっていう感覚がすごく強かったんです。自分がNovel Coreとしてグッと走っていくのはもちろんのこと、BMSGについても日高さんとちょくちょく話し合ったりしてきました。自分自身、一つ一つのことに対して意識を高く持てているのはBMSGに所属して以降ですし、学ぶことが常にありますね。「THE FIRST」の反響が大きかったので自分の音楽をちゃんと聴いてもらえるのかも含めて最初は不安もあったのですが、BE:FIRSTのメンバーやShota(「THE FIRST」に参加したAile The Shota)たちもフラットに仲間として接してくれたので、今はそうした不安も消えました。

「THE FIRST」から学ぶことも多かったという
「THE FIRST」から学ぶことも多かったという

 自分自身としては、プロデュースワークみたいなものにも興味があるので作曲などももっと勉強したいですね。あとは誰かのライブの演出などを含めたディレクター的なものだったりとか。自分には合わないテイストでも「この人はこれをやったら絶対カッコいい」みたいなアイデアがあるので、間接的に関わってみたいです。ファッションブランドのローンチも考えていますし、やりたいことだらけですね。

 アーティストとしては、もちろん大きなステージに立つとかもありますが、それ以上に重視しているのが「自分自身がそのステージに立ったときにどういう感情で立てているか」。どんなに大きな会場であっても、空っぽの感情で立っていたらそれはお客さんにも伝染するから心を動かせないと思うし。1人の人間として幸せなままで商業的な成功をするのが自分のなかの大きなテーマですね。単純に「やらされてない」ことは、すごく大事かなと。誰かから選ばされる選択肢が多ければ多いほど、人間的な幸せって減っていくと僕は思っているので。あくまでも自分がやりたいこととしてやった結果で何か大きなものに結びつけていく。それを一つ一つ続けていきたいです。

 最後に今、ハマっていることを聞くと『独創ファンタジスタ(Prod. KNOTT)』のミュージックビデオ(MV)のために始めたダンスと、アジア音楽を挙げた。

 ダンスにハマってますね、やったことがないことをやるのはめっちゃ楽しくて。BE:FIRSTみたいにガッツリ踊るほうにはいかなそうですけど、音にカッコよく乗りたい。あと、アジア音楽は意識しています。最近ではBE:FIRSTが近くにいるので、これまで聴かなかったボーイズグループも聴くようになって。特に好きなグループを挙げるとしたらATEEZです。K-POPはクリエーションのクオリティーやそこへの気合の入れ具合、ディテールへのこだわりが半端ないですよね。MVを見ていても衣装やヘアメイクにもイメージコンサルタントが入っているし、映るかどうか分からない小道具にもデザイナーさんが関わっている。その妥協しない姿勢に刺激をもらっています。

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(写真/興梠真穂)

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