次にブレイクするタレントは誰か。Z世代のネクストブレイク有力候補を紹介する連載。今回登場するのは、2018年に「ミスセブンティーン2018」に選ばれ、『Seventeen』専属モデルとなった出口夏希。19年には俳優活動も開始し、コンスタントに話題作に出演してきた。22年8月に専属モデルを卒業した彼女は、9月16日公開の『沈黙のパレード』(東宝配給)に出演する。

出口夏希(でぐち・なつき)
2001年10月4日生まれ。中国出身。スカウトをきっかけに芸能界へ。「ミスセブンティーン2018」の1人に選ばれ、今年8月まで『Seventeen』専属モデルを務めた。19年の女優デビュー以降、コンスタントに作品に出演。22年は『インバージョン』『ばかやろうのキス』と、地上波ドラマにて2作連続ヒロインを演じている

 『沈黙のパレード』は、東野圭吾原作、福山雅治主演の人気ミステリー『ガリレオ』シリーズの映画版第3弾。出口は、物語の始まりとなる少女殺害事件の被害者・並木佐織(川床明日香)の、人懐っこい妹・夏美を演じる。本作で並木家の娘たちを我が子のように愛してきた商店街の大人たちが、深い悲しみを胸にしまって生きているなかで、夏美の存在は本作の救いでもある。そうした夏美の明るさは、西谷弘監督と事前に相談し、意識して演じたという。

『沈黙のパレード』は『ガリレオ』シリーズの最新作で、9月16日から全国東宝系にて公開
『沈黙のパレード』は『ガリレオ』シリーズの最新作で、9月16日から全国東宝系にて公開

 夏美役のオーディションには、「取ってやるぞ」という気持ちで挑みました。何か特別なことを準備したわけではないのですが、台本をしっかり頭に入れた上で、とにかくオーディションを楽しもうと思ったんです。実際、とても楽しく演じることができたので、手応えを感じました。とはいえ本当に人気のある作品に参加させていただいたので完成した作品を見ても、しばらくは出演した実感が湧きませんでした。エンドロールで自分の名前を見ても、違う人なんじゃないかと思うくらいで。撮影前、キャストの方々が集まって顔合わせをしたんですけど、お話が頭に入ってこないくらい緊張していたのを覚えています。でも、現場に入ってからは、皆さんが優しく話しかけてくださいました。特に、両親役の飯尾和樹さん、戸田菜穂さんは「何人兄弟なの?」「食べものは何が好きなの?」と、色々と話しかけてくれて、本当の両親のように接してくださって、たくさんお話ししたのでリラックスできました。

 私が演じる夏美は、明るく人懐っこい子なので、湯川先生(福山雅治)にも「わーっ」とじゃれつくんです。でも、福山さんがすごい方だっていうのはもちろん知っていたので、緊張のあまり最初は控えめになってしまって。監督からは「もっと行っていいよ!」と言われるんですが、やり過ぎたらどうしよう、ぶつかったらどうしようと思っていたら福山さんが「どんどん来て」って言ってくださって、それがとてもうれしかったです。

『沈黙のパレード』で出口が演じるのは、少女殺害事件の被害者・並木佐織(川床明日香)の人懐っこい妹
『沈黙のパレード』で出口が演じるのは、少女殺害事件の被害者・並木佐織(川床明日香)の人懐っこい妹

 この作品は、役の上では私の姉の佐織の死から始まる物語。なので「みんなが佐織のことで悲しんでいるなか、夏美だけはしっかりしていよう」と、最初に監督とお話ししたんです。演じる上では、たくさん笑ったり、ハキハキ話したり、明るい存在でいることを意識しました。明るい夏美ですが、もちろん悲しみは抱えているので、その表情の違いもぜひ見ていただきたいです。

 監督をはじめ、スタッフの方々、キャストの方々、エキストラさんを含め皆さんがいて「みんなでつくっていくってこういうことなのか」と実感しました。私がクランクアップする日、皆さんが「お疲れさま、頑張ったね」と温かく声をかけてくださったことも、思い出に残っています。

 最近は、8月6日から全5回にわたり放送されたZドラマ『ばかやろうのキス』および、同作とクロスオーバーする恋愛モキュメンタリードラマ『やり直したいファーストキス』にてヒロイン・美山李里奈役を演じた。また、人気漫画を原作としたNetflixシリーズ『舞妓さんちのまかないさん』の配信も控えている。同作は森七菜とのダブル主演で、出口は「100年に一度の逸材」と期待される舞妓・すみれを演じている。

 『ばかやろうのキス』と『やり直したいファーストキス』、演じ分けは特にしなかったのですが、どちらも李里奈の内面の変化、東京への転校をきっかけに抱いた「前に進みたい」という決意は大切に演じました。現場は同世代の方が多かったのですが、ワイワイしすぎるでもなく、居心地が良かったです。主演の板垣瑞生さんは本当にフレンドリーな方。最初のほうは男性キャストの方との撮影が多かったのですが、初日から、その輪のなかに私を入れてくださって、皆さんとても優しかったです。八木勇征さんも話しやすい方で、たくさん声をかけてくださいました。撮影の合間の時間にはキャストみんなでご飯を食べて、「疲れたねー」なんて言いながら、ドラマのなかと同じように青春を過ごしました。

是枝裕和監督による初のNetflixシリーズ『舞妓さんちのまかないさん』では森七菜とW主演を務める
是枝裕和監督による初のNetflixシリーズ『舞妓さんちのまかないさん』では森七菜とW主演を務める

 『舞妓さんちのまかないさん』は、原作の漫画も読みました。読み込むにつれ、実写化作品を演じるってこういうことなんだなぁって感じて。なんというか、プレッシャーをすごく感じましたね。原作はとても温かいお話で、読みながら思わずにっこりしてしまう作品なんですが、すみれと私はまるで正反対なので、「できるのかな?」と不安でした。今は、自分なりに精いっぱいやり遂げることができたと思うので、安心した気持ちが大きいです。

 是枝裕和監督は、おちゃめなところもある方でした。ある日、撮影が終わって帰る途中、和菓子屋さんをのぞいている監督を見つけたことがあります(笑)。次の日、みんなにカヌレを買ってきてくださって、優しい方だなと思いました。

 モデルを経て、オムニバスドラマ『ココア』(19年)にて、南沙良、永瀬莉子とともに主演の1人として女優デビュー。当時の思いをたずねると「本当はモデルのお仕事ならやってみたいなって思ってたんです」と小さな声で、いたずらっぽい笑顔を浮かべてつぶやいた。しかし持ち前の前向きさで、作品を重ねるごとに女優業の面白さを見いだしていった出口。芝居について「楽しい」と、何度も繰り返した。

 『ココア』の頃は、芸能界のお仕事についてもまだ、何も分かっていない状態でした。女優のお仕事は、最初は挑戦するとも思っていませんでした。正直なところ、少し「嫌だなぁ」と思っていました……。事務所のワークショップにも行きましたが、本音を言うと「やりたくなーい」って(笑)。

 それに、最初の頃はオーディションがとても嫌いだったんです。緊張するし、審査してくださる大人の方の視線が怖いような気がして。でも、今では「見て!」という気持ちで(笑)、マネジャーさんにもたくさん受けたいと言っているくらい、好きになりました。実際、『沈黙のパレード』や『舞妓さんちのまかないさん』を通して、楽しんだほうが良い結果につながるとも分かってきたんです。「行ってきまーす!」という気持ちで、オーディションを楽しんでいます。

最初は嫌いだったオーディションが最近では好きになるほど、演じることが楽しくなってきたという
最初は嫌いだったオーディションが最近では好きになるほど、演じることが楽しくなってきたという

 今、お芝居がすごく楽しいんです。特に『沈黙のパレード』や『舞妓さんちのまかないさん』の撮影に入った頃くらいから、よりお芝居に取り組みたいと思うようになりました。具体的にいつから、何が変わって、どこが楽しいのかは自分でも分からないのですが、台本の読み方が変わったというのは大きいかもしれません。監督の方々と、役について話す機会が増えて少しずつ理解もできるようになってきたからかもしれません。それと『沈黙のパレード』の撮影前にせりふの覚え方を変えてみたんです。それまではひたすら書いて覚えていたんですが、声を出して練習するようにしたら、覚えるのが早くなりました。そうした発見があるのも、面白さの1つかもしれないです。

 今でも、作品を経験するごとにどんどん「楽しい」が更新されています。1つひとつの現場が濃いですし、まだまだ初めての経験がたくさんあるんです。だから大変ではありますけど、それでも楽しい気持ちが上回っていますね。

 これからも、もっといろんな役に巡り合いたいです。例えば、サイコパスみたいな役とかも機会があれば挑戦してみたいです。『沈黙のパレード』についての取材中に、西谷監督から「出口はどこに行っても、その明るさでやっていける」というような言葉をいただいて、そう思ってくださっていたことがうれしいし、その言葉を励みに、これからも頑張りたいです。

 最近、苦手だったはずのあるジャンルのドラマにハマっているという出口。何をしているときでも見てしまうほど、引き込まれるのだという。

 Netflixで配信されている、『今、私たちの学校は…』というゾンビドラマの、シーズン2が楽しみで仕方ないです。私はもともとこういったジャンルが苦手だったんですけど、今ではご飯を食べているときも、カフェにいるときも見てしまうくらい、夢中になってしまいました。グロテスクなんですけど、ストーリーも面白くて、「また見たい」と思ってしまうんですよね。

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(撮影/中村嘉昭、スタイリスト/Shohei Kashima〈W〉、ヘアメイク/今関梨華〈Linx〉)

衣装協力/トップス3万6300円/クレージュ(エドストローム オフィス)、ワンピース2万7500円/PERVERZ(PERVERZ 南青山)、リング(人差し指) 11万1100円/e.m.(e.m. 青山店)、リング(中指) 8万4700円/e.m.(e.m. 青山店)、その他スタイリスト私物
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