2015年に第28回「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」にてグランプリを受賞、翌年『仮面ライダーエグゼイド』でドラマ初出演にして初主演を果たしたことで、芝居の面白さを見だしたという飯島寛騎。現在放送中の白石晃士監督によるPOV(一人称視点)のホラードラマ『オカルトの森へようこそ』(WOWOW)および、短編「訪問者」を加えた8月27日公開の劇場版『オカルトの森へようこそ THE MOVIE』(KADOKAWA配給)にて、謎多き金髪イケメン霊能者・ナナシを演じる。
――近年は、映画『ブレイブ -群青戦記-』(21年)や、ドラマ『凛子さんはシてみたい』(21年)、『僕もアイツも新郎です。』(22年、葉山奨之とのW主演)など経験を重ね、ナナシ役では異色の存在感と説得力を見せる。根強いファンを持つ白石作品への出演で得た経験や、目指す役者の在り方について語った。
僕が演じるナナシは、過去の白石作品『カルト』(13年)に登場した「ネオ様」というキャラクターをオマージュしているところがあるんです。そのイメージを崩さず、その上で僕が演じるからこその新しさを表現できるよう、監督と「ナナシ像」を追い求めました。衣装も、中に着るシャツの色までこだわりましたし、髪も中途半端な金色では納得がいかず、白に近い色まで染めました。というのも、ナナシには人間っぽさがないほうがいいと思ったんです。台本には「たばこをくわえた金髪の男が、ふと現れる」とだけ書いてあって、そこからイメージを膨らませていったんですが、そもそも、森の中にそんなやつはいないじゃないですか。他のキャラクターとは別の生き物として差異化したい思いがあったので、「異物感」を大事にしました。ナナシが何を考えているのかも、分からせないよう意識して演じています。でも、優しいやつなんですよ。口は少々悪いですけど、トラブルが起きると助けずにはいられない。そういうナナシを、愛されるキャラクターにしたいと思いました。今回、『仮面ライダーエグゼイド』以来に宇野祥平さんとご一緒したんですが、過去にも白石作品に出ている宇野さんから、「ナナシ、愛されるで。白石ファンは好きやと思う」と言っていただいたことがすごくうれしかったです。
POVの撮影は、初めてで新鮮でした。監督が手持ちカメラを回して、その後ろに音声さんはじめスタッフの皆さんがいらっしゃるんです。台本の6~7ページ分を一気に撮影するので、ミスがあれば最初からやり直し。スタッフさんの影が映る、音や画角の問題はどうしても起こりますから、テイクはたくさん重ねましたね。ワイヤにつられて演じたシーンもあります。ナナシが霊能力を使う場面では、どのくらいの時間、どのくらいの大きさの相手と対峙するのかを把握しておく必要はありましたけど、監督と僕は擬音を使って通じ合えるタイプなので、すぐにイメージできましたし、理解できました。
白石監督の世界観を大切に
――実は、ホラーやオカルトの類いは苦手。本作出演にあたり白石作品を数本見たといい、「『テケテケ』(09年)、本当に怖かったです」と、その作風を目の当たりにした。しかし、SFのテイストが強い『オカルトの森へようこそ』は、本人と同じくホラーが苦手な人にも受け入れられるはずと、自信を持っている。
白石監督の奇抜なプロフィル写真が印象的で、どんな方なのかなと思っていたんですが、本当に優しい方でした。(白石監督自ら演じる)黒石に近いかもしれません。監督は、不気味さや気持ち悪さを表現する天才ですよね。台本の段階で「なんだか嫌だ」と、じわじわした怖さと気持ち悪さが押し寄せてくるんだけど、見たくなるんです。ドラマも、第1話の放送後すぐにSNSで盛り上がっていて、やはり監督のファンは多いんだと感じました。監督自身、これまでの作品の総集編といえるくらいエッセンスを詰め込んだとおっしゃっていたので、白石作品ファンには懐かしさもあると思います。その世界観を崩さないようにしなきゃという思いを根本に持って演じました。
あまりホラーを見ない方も、この作品で新しい扉を開いていただきたいですね。長回しだからこその生々しさ、映像がぶれるなどのリアルな空気感がありつつ、くすっと笑える楽しさがある作品なので、多くの方に見ていただきたいです。
――大学1年生の時に母から勧められ、なんとなく受けた「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」でグランプリを受賞、芸能界入りが決まった。当初は上京する予定も、役者を目指す気持ちもなかったという。しかし16年、『仮面ライダーエグゼイド』にてドラマ初出演および初主演が決定。これが転機となった。
正直なところ、当時は事の重大さにぴんときていませんでした。今になって、本当にすごいことだったんだなと思っています。ですから役者としての転機は、間違いなく『仮面ライダーエグゼイド』です。第1話が放送されて、歴代のライダーファンの方が見てくださっていることを肌で感じて、役者としての自覚が芽生えました。変身前は医師という役どころだったので、命を救うことと、敵を倒して正義を貫くこと、2つのテーマをしっかり伝えなければという責任感も生まれましたし、初めて仮面ライダーを見るちびっ子たちに、「かっこいい!」と思わせたいというわくわく感もありましたね。でも僕は当時、生意気にも監督に歯向かうこともあったんです。20歳そこそこでしたし、変なプライドみたいなものがあったんでしょうね。だけど、そのとき怒られたおかげで自分を客観視できるようになりました。態度や言葉の選び方を含め、現場はもちろん、視聴者の方々に育てていただいたという思いがあります。
約1年間かけて演じる『仮面ライダー』が初めての芝居だったので、次の『愛唄-約束のナクヒト-』(19年)の現場は新鮮でした。ギターを弾く役だったのですが、練習を含めて2カ月ほどの期間で1つの作品をつくること、その中でどう役に向き合っていくかを学びました。どんな役も、その人生においては主人公ですから、生きた爪痕を残したいと、僕は全ての役に対して思っています。芝居の難しさは常に感じていますが、役でなければ経験できないことがたくさんある。その面白さやワクワクのほうが、ずっと上回っていますね。
――目標とする役者は同郷の大泉洋。北海道から上京し、役者になって、改めてその存在の大きさを実感したという。
目標は地上波のゴールデン枠での主演
「テレビで親しんでいた大泉さんって、すごい方だったんだな」と知りました。僕ら道産子と皆さんとでは、大泉さんやTEAM NACSの見え方はまるで違うと思います。大泉さんとは共演もさせていただいたんですが、本当に大きな存在。天性の笑いのセンスの持ち主ですよね。僕は大泉さんにはなれないけど、自分にしか出せないキャラクター、トークの味、役への向き合い方も含め、あんなふうに自分をコンテンツ化できたらいいなと思うんです。
今の目標はやはり、地上波のゴールデン枠での主演。だけど、エンタメとして面白いものは、どんどんやっていきたいです。(新型コロナウイルス禍で)どうしても、家にずっと居たり、友達とあまり会えなかったり、楽しいことが少ない時代じゃないですか。だからせめて、画面越しでも楽しんでもらいたい。役者として、幅広くいろんな役を演じてみたいです。人間じゃない、宇宙人の役もいいなって思います。そうして歳を重ねていく過程で、自分がハマるキャラクター、自分にしか出来ないポジションを少しでも早く築いていきたいです。
26歳はまだ若手といわれますが、自分としては、明後日には30歳になるような感覚もあります。僕はせっかちなのですが、焦らずせかされず、自分の中にある光るものを探求していきたいですね。
――「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」の賞金で大型自動二輪免許を取得したという飯島。ずっと熱中しているバイクで、かなえたい夢もある。
今は500ccの赤いバイクに乗っていて、関東圏内を走ったり、海へ行ったりしています。友人のほとんどはバイクに乗らないですが、僕にとっては、小さい頃からなじみがある存在。いつか、作品にも生かしたいです。トム・クルーズさんも、乗り物のアクションを全部ご自身で演じるじゃないですか。実際に乗って演じるからこその迫力があるし、かっこよく乗れる自信もあります。
(写真/中村嘉昭、ヘアメイク/牧野裕大〈vierge〉、スタイリスト/中西ナオ)