次世代を担うことが期待される、Z世代の主役候補を紹介していく「ネクストブレイクファイル」。今回登場するのは、姉で女優の志田音々に憧れて出場した2020年のミス・ティーン・ジャパンをきっかけに、芸能活動を開始した志田こはく。
22年3月に放送開始したスーパー戦隊シリーズ最新作『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』(テレビ朝日系/日曜9時30分)にて、マンガ家志望の快活な女子高生・鬼頭はるか/オニシスター役で、ドラマ初出演を果たした。7月22日からは、劇場版作品『暴太郎戦隊ドンブラザーズ THE MOVIE 新・初恋ヒーロー』(東映配給)が公開。志田にとって初めて尽くしとなった『ドンブラザーズ』の思い出深いシーン、監督や共演者とのエピソードを聞いた。
事務所の先輩方がたくさんヒーローを演じておられることもあって、この作品のオーディションは、それまで以上に強い気持ちで臨みました。演技審査で、わーっと顔芸をやったんですよ、アドリブで(笑)。「物おじしないところがよかった」と撮影が始まってから教えてもらいました。思い切りよく演じたことが、はるかに通ずるところもあって、良い結果をいただけたのかもしれません。
はるかという役について知ったのは、昨年の12月ごろです。物語が、はるかの視点で進んでいくことにまずびっくりしました。セリフもモノローグも多くて……。当時、私はモノローグというものを知らなくて、マネジャーさんに「台本の(M)ってなんですか?」と聞くほどだったんです。映像のお仕事は初めてでしたし、そもそも芝居経験も浅かったので、不安は大きかったですね。初めての読み合わせでは、声が震えていました。
でも、初日の撮影が終わったあと、田﨑竜太監督が「僕がOKを出したときは、100点ってことだから、自信を持っていいんだよ」と言ってくださったんです。そのときに緊張がほぐれたというか、不安がすべて抜けて、「ああよかった」と思って泣いてしまいました。今は、現場にもだいぶ慣れて、素で演じてるところもあります。私、落ち着いているように見られることが多いんですけど、実ははるかみたいに活発で明るいほうなんです。
――現在も、テレビシリーズは撮影の真っただ中。オンエアをチェックし、気付いたことは都度、芝居に反映させている。最近では、監督や演者とのコミュニケーションも積極的にはかれるようになった。
最初の本読みで温かい雰囲気に
心がけているのは、表情も声も、大きく表現すること。テレビなので、自分が想像するよりも大げさなくらいが伝わりやすいんだと学びました。表情のお芝居はアドリブが多いので、「もっと思い切ればよかったな」と反省することも多いですね。初めの頃は、自分からコミュニケーションを取りに行くことができなくて、お芝居の相談ができなかったんです。だけど1年を通して演じる作品ですから、みんなで作り上げるんだという気持ちがだんだん大きくなってきて、今では積極的に、「この部分はどう表現したらいいですか?」と相談をしています。
チームはすごく仲が良いんですよ。最近は共演者の皆さんと、お芝居のことはもちろん、いろいろなお話ができるようになってきました。座長の樋口幸平(桃井タロウ/ドンモモタロウ役)さんがとても面白い方で、コミュニケーションをたくさん取ってくださるんです。おかげで、現場になじむことができました。私、最初の台本読みのとき、本当に固まっていたんですよ。うつむいて、ずっと1人で座っていたらお兄さんたちが来て、近くにしゃがんで「こはくちゃーん!」って、声をかけてくださって。鈴木浩文(雉野つよし/キジブラザー役)さんも「敬語はいらないから楽に話してね」って言ってくださいました。今では、私がお兄さんたちに突っ込むこともあります。(笑)
――メイン回のプレッシャーも乗り越え、ドンブラザーズの結束感も固まった。劇場版は、映画『新・初恋ヒーロー』出演のオファーを受けたドンブラザーズが巻き起こすドタバタコメディ。劇中作品でヒロインを演じるはるかの、ひと癖ある演じっぷりに期待してほしいという。
これまでで印象に残っているのは、第10話『オニがみたにじ』の最後のシーン。はるかがヒーローになる決意をして、マスターに詰め寄るシーンです。はるかのメイン回ということもあって、台本をいただいたときには、プレッシャーを今まで以上に感じました。作品の面白さを損なわないか、はるかの優しさをちゃんと演じられるか……。不安はありましたが、皆さんのおかげで無事に撮影を終えることができ、監督から「はるかはドンブラザーズに必要だ」と言っていただいたことがとてもうれしかったです。
映画の撮影は、ドラマのクランクインと同じ場所でのスタートだったので、当時を思い出して懐かしい気持ちになりましたね。映画では、はるかが女優になって役を演じるんですが、『オペラ座の怪人』のカルロッタをイメージして、ビブラートをたっぷりきかせています(笑)。台本の最初のページに「はるか、優雅にドレスで階段を上がる」と書いてあったんですよ。冒頭から白いドレスで登場していますので、いつもと違うはるかにもぜひ注目していただきたいです。演じながら笑っちゃうこともあったくらい、面白い映画になりました。樋口さんも、映画のなかで役を演じるんですが、そのお芝居もひと癖あるので、楽しみにしていてほしいです。
――小学生から続けていたフィギュアスケートをけがで辞めたことが、この道に進んだきっかけ。「もしも、けがをしていなかったら?」と尋ねると、「それでも女優を選んでいたと思います」と、迷いなく答えた。いつかは、アクションにも挑戦したいという。
近い目標は学園ものの作品に出演すること
小さい頃から姉が芸能活動をやっていたのを身近で見ていて、私も興味はあったのですが、人前に出るのがすごく苦手だったので、無理だろうと思っていたんですよね。でも、フィギュアスケートを辞めることになったとき、これは女優の道に行けってことなのかなって感じたんです。それで、姉が13年に準グランプリを取った『ミス・ティーン・ジャパン』に自分で応募しました。特技審査で披露した縄跳びがうまくいかなくて、ステージの裏で泣いていたら、今の事務所の方が声をかけてくださったんです。こんなチャンスはないと思って、すぐに所属することを決めました。
演技レッスンも初めは震えていましたけど、重ねていくうちに度胸がつきましたし、俳優になりたいとより強く思うようになりました。今年、舞台『六番目の小夜子』を経験させていただいたんですけど、そのときは緊張しなかったんです。皆さんと頑張って稽古を重ねてきたので、それを胸に楽しく演じられました。ぜひまた経験してみたいです。
近い目標としては、10代のうちに学園もののドラマや映画に出演したいです。ちょっとあざとい女の子や、はるかとはまた違うタイプの役も演じてみたいですね。それから、アクションにも興味があるんです。アクションをやりたくて、キックボクシングに通っていたこともありますし、もともと運動が得意なんです。フィギュアスケートでの経験も生かせたらいいなと思っています。
とはいえ、今はドンブラザーズに全力です。謎の要素が多い一味違う戦隊シリーズなのですが、演じている私たちも、今後の展開を知らないんですよ。これは、私の勝手な予想なんですが、最後ははるかが敵サイドに回るのではないかと思っています。終盤は、ちょうど節分の時期ですから、オニシスターが物語に深く関わってくるんじゃないかと(笑)。もし本当にそうなったら、そこでまた違うはるかを見せたいですね。
――最近ハマっているのは韓国ドラマ。というよりも、日本制作ドラマに多くはない“ある設定”が大好きなのだという。ヒロインを演じてみたいか尋ねると「もちろん!」と、前のめりに答えた。
おすすめは『シンデレラと4人の騎士<ナイト>』(16年)というラブストーリー。私、“ツンデレの御曹司”という設定がすごく好きで、「御曹司 ツンデレ」と検索したら、この作品がヒットしたんです。3人の御曹司と1人の女の子が共同生活をするんですけど、めちゃくちゃキュンキュンします。韓国ドラマには御曹司がよく出てくるので、好きなんですよね。そういえばドンブラザーズの撮影中、桃井タロウにアドリブで「ツンデレ」って言ったことがあります(笑)。ツンデレが好きだからこそ出てきたセリフかもしれませんね。
(写真/中村嘉昭 スタイリスト/米田由実 衣装協力/ANDYOU DRESSING ROOM)