次世代を担うことが期待される、Z世代の主役候補を紹介していく「ネクストブレイクファイル」。今回登場するのは、2022年7月9日放送スタート『ウルトラマンデッカー』(テレ東系/土曜9時)で、主人公・アスミ カナタ役に抜てきされた俳優・松本大輝。物語の舞台は『ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA』(21年)から数年後、突如襲来した謎の宇宙浮遊物体「スフィア」の群れが人類を襲う地球。カナタに宿った新たな光の巨人・ウルトラマンデッカーが、あまたの敵に立ち向かう。18年の『第31回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト』グランプリ受賞から4年、ようやくつかみ取った大役への意気込みと、これまでの歩みを聞いた。

2022年7月から『ウルトラマンデッカー』で主人公・アスミ カナタ役を演じる
2022年7月から『ウルトラマンデッカー』で主人公・アスミ カナタ役を演じる
松本大輝(まつもと・ひろき)
1999年3月29日生まれ。北海道出身。2018年に「第31回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」にてグランプリを受賞、19年に俳優デビュー。主な出演作はNHK連続テレビ小説『エール』(20年)、映画『都会のトム&ソーヤ』(21年)など。特技はバスケットボール

 ウルトラマンシリーズといえば、世界に誇る特撮作品なので、主役として出演が決まったときは本当にうれしかったです。両親もウルトラマンを見てきた世代なので、とても喜んでくれています。僕自身、子どもの頃には変身ごっこをして遊んだり、人形を持っていたりと、ヒーローへの憧れはもちろんありました。ただ、年齢も20歳を超えているので、今回のオーディションを受けるときには「ここで受からなかったらもう、ヒーロー作品は難しいかな」という思いがあったんです。だけど気負わず、自分の素を出すことを大切に、明るく笑顔で取り組みました。結果、カナタという役とリンクして、選んでいただけたのかもしれないなと思います。

 カナタは本当に前向きなんです。目の前で何か問題が起きていたら、すぐに行動に移す性格で、どんな困難があっても突き進んでいくタイプ。前向きすぎるがゆえに同僚に迷惑をかけるときもあるんですが、それでも周りを引っ張っていく存在です。

 『ウルトラマンデッカー』は、撮り方をとても工夫されていて、映像がすごく面白いんです。僕自身にカメラを取り付けて撮影した、FPS(一人称視点のゲーム)のような感覚を味わえるシーンは、恐らく今回が初めての試みだと思います。ただ、細かな角度の調整が必要なので、顔を少し下に向けて芝居をしたりと、演じるのは難しかったです。カメラを着けたまま走ったりもしましたし、臨場感のある映像になっていると思います。

 デッカーのデザインにも注目してほしいです。カラータイマーが真ん中ではなく、左に少しずれていたり、胸と頭に宇宙の柄が入っていたりと、左右非対称の攻めたデザインです。思わず目を引くインパクトのあるビジュアルが、僕はとてもかっこいいと思っています。歴史ある作品ではありつつ、新しさのあるウルトラマンです。

主人公・アスミ カナタ役の前向きさが自分にリンクしていると言う
主人公・アスミ カナタ役の前向きさが自分にリンクしているという

『シン・ウルトラマン』ファンも楽しめる内容

――『ウルトラマントリガー』の世界観を継承し、かつ22年に放送開始25周年を迎えた『ウルトラマンダイナ』(1997年)のエッセンスが取り入れられた本作。『シン・ウルトラマン』(東宝配給)公開と同年に放送されるウルトラマンシリーズ新番組として、新旧ファンからの注目度は高い。

 『ウルトラマンダイナ』25周年ということで、ダイナをモチーフにしている部分もあります。例えば、ダイナに出てくる「ハネジロー」というマスコットキャラクターが、デッカーでは「電脳友機HANE2」というAIロボットになって登場したり。「ダイナ」と「デッカー」、ともにイニシャルがDですし、登場する怪獣にも少しずつ、ダイナのエッセンスが取り入れられています。ただ、ダイナとは別物の作品なんです。一方で、トリガーとは作品としてつながっているので、トリガーを見ていた方には分かるネタが少しずつちりばめられています。そこも、楽しんでいただけるポイントだと思います。

 歴史あるウルトラマンを演じる上で、もちろん勉強はしましたが、これまで演じてこられた皆さんのお芝居を意識しすぎないようには気を付けました。自分だからこそのデッカーをつくりたい思いがありましたし、つくることができたと思います。すごくやりきった感じがあるんです。あとはもう、見ていただくだけという気持ちです。

18年に『第31回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト』グランプリ受賞
18年に『第31回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト』グランプリ受賞

 第1話は、武居正能監督らしいホームコメディ的なシーンもあるんです。だけどそのあと、怪獣が現れて一変する。日常的な場面と戦闘シーンのギャップも、見どころの1つだと思います。とにかく、特撮シーンがめちゃくちゃかっこよく仕上がっているんです。変身シーンのクオリティーが、本当にすごいんです。そして2話、3話にかっこいい必殺技が出てくるので、まずはそこを見てほしいです。

 僕は『シン・ウルトラマン』を見たとき、ウルトラマンの登場シーンがとても神聖なものに思えて、恐怖みたいなものすら感じたんです。あの感覚を、初めてデッカーを見たときにも覚えました。スケール感にぜひ、期待していてほしいです。

――4年前、姉の応募をきっかけに「人生経験として」、『第31回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト』を受け、1万6000人を超える応募者のなかからグランプリを獲得。北海道から上京し、レッスンとオーディションに明け暮れるも、なかなか結果の出ない日々が続いた。

オーディションに落ち続ける日々から

オーディションに落ち続ける日々が続いても、俳優以外の選択肢は考えなかった
オーディションに落ち続ける日々が続いても、俳優以外の選択肢は考えなかった

 当時はバスケをやっていたんですが、『ウルトラマンデッカー』では走ったり跳んだりするシーンが多かったので、バスケをやっていて良かったなと思いました(笑)。コンテストは、初めは乗り気ではなかったんです。でも、審査に残っていくうちに芸能界への憧れが生まれてきました。ゲストや審査員で来てくださった飯島寛騎さんや袴田吉彦さんがかっこよくて、「自分もそうなりたいな」と思ったんです。グランプリをいただいて、2019年に東京へ出てきました。

 それから演技レッスンを始めたんですが、オーディションに落ち続ける日々が続いても、俳優以外の選択肢は考えなかったです。あれもこれもできるほど器用じゃないからというのもありますが、昔から映画やドラマを見ることが好きだったので、俳優に憧れていたんだと思います。大好きな映画は『いま、会いにゆきます』(04年)。今でも毎年、梅雨明けの頃に見ます。

 オーディションにはなかなか受からず、特に手応えがあったオーディションで落ちたときは、すごく落ち込みました。僕は人見知りだったので、自己アピールをするのが苦手だったんです。でもレッスンを通して、自分を表現することを学んでいきました。素の自分を出して、楽しくやれるようになったことが、今につながっていると思います。

 『ウルトラマンデッカー』の撮影中、共演する小柳友さんとお話ししたときに「演技を楽しんでいるか?」と聞かれたんです。そのときに、僕は今、必死に食らいついている状態で、楽しめていないなと気付きました。そこから、楽しむことを大切にするようになったんです。スタッフさんや共演者の方にも「すごく変わった」と言っていただきましたし、自分にとって大きな出来事でした。

 今後、ゴールデンタイムのドラマや映画にもどんどん出演してみたいです。学園ものにも挑戦してみたいですし、ちょっと堅いお仕事の役、例えば弁護士や裁判官、刑事も演じてみたいです。いつかはレッドカーペットを歩きたいです。日本はもちろん、海外の映画祭にも行けるようになりたいです。ウルトラマンを演じた大先輩方の姿はもちろん追っていきたいですが、自分には自分の道があると思うんです。僕は僕として、変わらず歩んでいきたいし、僕なりの道をつくっていきたいです。

ウルトラマンを演じた大先輩方の姿はもちろん追っていきたいと話す
ウルトラマンを演じた大先輩方の姿はもちろん追っていきたいと話す

――自身を「人見知り」だというが、取材ではユーモアのある一面を度々のぞかせた松本。ハマっているバラエティ番組を列挙し、語り出すと止まらない。いつかは出てみたいと、意欲的だ。

 バラエティ番組が大好きなので、録画して欠かさず見ています。『アメトーーク!』『ダウンタウンDX』『くりぃむナンタラ』……挙げればキリがないほど見ています。テレビ東京系の『家、ついて行ってイイですか?』みたいな番組も大好き。芸人さんのなかでは、ダウンタウンさんが好きです。松本さんが笑っているだけで、僕も笑ってしまいます。いつか『水曜日のダウンタウン』に出るのが夢です。

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(写真/中村嘉昭、ヘアメイク/糟谷美紀、スタイリスト/戸倉祥仁〈holy.〉)

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