2022年7月3日に放送開始のドラマ『彼女、お借りします』(ABCテレビ/日曜23時55分、テレビ朝日では7月2日スタート/土曜26時30分)にて、ヒロイン・千鶴を演じる19歳の桜田ひより。シリーズ累計発行部数1000万部を突破した人気マンガの実写化で、桜田自身も原作およびアニメ版(7月より第2期放送開始)のファンを公言。特別なリスペクトを抱いて撮影に臨んでいる。
『彼女、お借りします』は、彼女にフラれた大学生・和也(なにわ男子・大西流星)が「レンタル彼女」を申し込んだことから始まるラブコメディ。大西が座長として引っ張る撮影現場は、和気あいあいと笑いが絶えないという。桜田演じる千鶴は、外見も立ち振る舞いも美しい「理想のレンタル彼女」。しかし、素顔は……という役どころだ。桜田自身、千鶴を“推し”というだけあり、「どちらの千鶴にも憧れる」と話す。9歳から子役として活躍してきた彼女にとって、今回は初めての女子大生役。これまでのキャリアを振り返り、大切にしてきたことや「背筋が伸びる」という出会いについても語った。
まさか、推しだったキャラクターを演じるなんて夢にも思わなかったので、「本当に現実なのかな?」と疑うくらい、びっくりしました。でも、私自身が原作マンガやアニメを見ている分、ファンの方の気持ちも分かっているつもりなので、そこをくみ取りつつ、実写ならではの千鶴を演じたいと思っています。撮影期間は、マンガとアニメの両方を見ながら過ごしていて、朝、その日に撮影するシーンを確認しながらヘアメイクをするんです。例えばアニメのなかで頬杖をつく場面があれば、同じタイミングでついてみたりと、細かなところも参考にしていますね。千鶴をリスペクトして演じていることが伝わればうれしいですし、もちろん、原作をご存じではない方にも楽しんでいただける内容になっていると思います。
レンタル彼女としての千鶴は完璧な女の子。男性が思い描く理想であるのはもちろん、私から見てもとても魅力的ですし、憧れます。完璧すぎて、私と似ている部分は全くないですね(笑)。憧れの女性像をイメージして演じているのですが、特に意識しているのは、男性に「また会いたい」と思わせる、キュンとくるしぐさや表情、きれいな所作。手でものを取るにしても、細かく神経を使って、指先まで意識するイメージです。話し方も、普段よりワントーン高めにしていますね。同性にもキュンとしていただけるよう、私自身が原作の千鶴を見て「かわいい」と思ったところも生かしています。例えば第1話、2回目のデートの時に、千鶴が髪形を変えてくるんですけど、さりげなく「どうかな?」って聞くときのしぐさ。ここは、私としては注目してほしいポイントです。いわゆる“あざとい”シーンは、普段やらないことというのもあって、カットがかかると笑ってしまうこともあったんです。でも、「千鶴も仕事として、しっかり研究してやっていることなんだから」と、割り切って考えるようになりました。
一方で、素顔のちづるはすごく芯が通っている女の子。揺るがないものを持っていながら、人の気持ちにも寄り添うことができる子なので、こちらもまた憧れます。演じるときには、レンタル彼女のときとは違って、自然体でいることを大切にしていますね。
モニターチェックを始めて自分を発見
――意外にも、ラブコメディ作品のヒロインは初めて。長いキャリアにおける初体験では、新たな発見もあった。なにより、本作ならではのシチュエーションやセリフは、演じていて楽しいという。和也と千鶴の、テンポの良いかけ合いにも注目だ。
今回の作品で、初めてモニターチェックをするようになりました。撮影するたび、必ず確認しています。普段、お芝居をするときには見た目よりも内面に重きを置いているので、自分の顔を一切、気にしないんですね。でもラブコメって、視界に入ってくる刺激も大事だと思うんです。顔の角度1つとっても、誰が見てもかわいいな、きれいだなと思っていただきたい。チェックするようになってから、毎日、新しい自分を発見します。勉強の日々ですね。
ラブコメを演じるのはすごく楽しいです。キュンキュンするシーンにももちろん注目していただきたいですが、個性の強いキャラクターたちに、大西流星さん演じる和也がどんどん振り回されていく様子も、楽しんでいただけたらうれしい。現実ではあり得ないようなシチュエーションやせりふが多いので、撮影もすごく面白いんです。
私は、大西さんとのかけ合いのシーンが多いんですが、大西さんはすごくテンポ感が良くて、頭の回転がとても速い方。監督から特別なアドバイスをいただくこともなく、お互いのフィーリングで、良いリズムで撮れていますね。それに、大西さんが現場にいるだけで、雰囲気が明るくなるんです。座長として引っ張ってくださっているので、現場の士気は常に高い。「みんなで頑張っていこう!」という団結感があるのは、大西さんのおかげだと思っています。こんなにずっと笑っている現場ってなかなかないなと思うくらい、本当に楽しいですね。
――芸能の道に進んだのは5歳の時。モデルなども経験したのち、14年には、児童養護施設を舞台にしたドラマ『明日、ママがいない』にて、ピアノの才能を持つおませな少女・直美(ピア美)を演じ、注目を集めた。あるときから「子役」ではなくなり、自身も昨年、高校を卒業。笑顔を絶やさず無邪気に話す一方で、自分の立ち位置や強み、役者としての将来について、俯瞰(ふかん)的な視点を持っている。
5歳の時、母と一緒にお昼の再放送ドラマを見ていて「これに出たい」と言ったことが、この道に入ったきっかけです。月曜日から金曜日まで学校に行って、土日は演技レッスンのために東京へ出てくる日々でしたが、演技はずっと楽しいと思っていましたね。私自身は特に「子役」から脱却したいとも思っていなかったので、肩書は意識したことがなかったんです。でも中学2、3年生の頃、雑誌かなにかで「女優」と紹介されているのを見たときに初めて、私はもう子役じゃなくて1人の俳優なんだと感じたことを覚えています。
高校卒業後、進学せずに女優一本でやっていくということは、小学生の頃からずっと決めていました。その時点で、もう人生のけじめがついていたというか、心が決まっていたので、高校を卒業する時にも意識の変化みたいなものはなかったですね。私を見て、「まだ20歳になってなかったんだね」と言う方もいれば、「もう20歳になるんだ」と言う方もいます。だいたい、半々くらいですね(笑)。今回のドラマも大学生役ですし、今後は制服を着ない役も増えてくるのかもしれませんが、大人な役をやりたいかと言われたら、そうでもない。童顔なので、まだ制服を着られるのであれば着たいと思いますし、あまり年齢にはとらわれていないですね。童顔は長所だと思っているので、生かせるなら生かしたいと思います。以前は、自分の顔が好きではなかったんですよ。今もさほど好きではないんですけど……。でも、たくさんの俳優さんがいるなかで、私みたいに「まだ制服が着られる」と言われる人もいれば、「社会人役の方が似合う」と言われる人もいます。どうせなら、自分にあるものを上手に使って、自分がハマれるポイントを見つけてやっていきたいと思うんです。
――俳優人生において、桜田は「あること」を大事にしてきた。そうして結びついた多くの縁において、とりわけ、ある大監督に対して「恥ずかしくない人間でありたい」という。自身の魅力を磨きながら、「心地よいリズムで」、楽しく演じたいという言葉が印象的だった。
巨匠との出会いが転機に
昔から大事にしてきたのは、挨拶とコミュニケーション。もちろん最初は教えられてやっていたことですけど、いつからかその大切さが分かるようになりました。だからこそ、何年も前にお世話になったスタッフの方々であっても、「大きくなったね」と、ポジティブな言葉で迎え入れてくださる。大事だと信じてやってきたことは間違いじゃなかったんだなと思いますし、これからもずっと続けていこうと思っています。
たくさんのご縁のなかでも、『男はつらいよ お帰り 寅さん』(19年)での山田洋次監督との出会いは大きかったです。経験したことのない現場の雰囲気、包み込むような監督ご自身のオーラ、なんだか水の中にいるような感覚なんですよね。すごく柔らかくって、いろいろな形に変化するというか……すべてが、本当に不思議な感覚でした。監督とお話するだけで、とても心が落ち着きましたし、かけてくださる言葉1つひとつから、私のことをすごく大事にしてくださっているんだな、作品のことを一番に考えていらっしゃるんだなということが伝わってくるんです。だから監督とお会いする時には、悪いことしちゃいけないなって(笑)。監督の前では、きちんとした人間、魅力的な女性でありたいなと思っています。
今は、なにか大きくて具体的な目標というものはないんです。現状に満足してるわけではないんですけど、めちゃくちゃ有名になりたいとか、いろいろな作品に出てどんどん表舞台に立ちたいとか、そういう気持ちはあまりないんですよね。自分のできるスピードで、自分の心地よいリズムで作品と出会っていきたい。長く俳優をやりたいかということも、今はあまり考えてはいないんです。2~3年先のことはもちろん考えていますけど、10年、20年先のことまで考えているかと言われたらそうではなくって。あまり考えすぎると体に良くないですし(笑)、思い悩んで気持ちが落ちていくよりも、少し先のことを考えて楽しみにしている方が良いなと思う。とにかく、楽しんでお仕事をしていたいですね。
――時折驚くほど大人びたことを話す桜田だが、ハマっているエンタメ作品を尋ねると、あの大人気作に夢中だとはしゃいだ。
最近は『SPY×FAMILY』にハマっています。普段は、アニメかマンガか、どちらかを見るタイプなんですけど、『SPY×FAMILY』に関してはどちらも見ていますね。マンガもどんどん盛り上がっていくし、アニメはめちゃくちゃかわいいし、今は本当に、マンガとアニメの更新を楽しみに生きています。3人の組み合わせは異色なのに、すごく心地良くて、見ていて楽しい。新感覚の作品だと思います。
(写真/中村嘉昭 メイク/面下伸一〈FACCIA〉 スタイリスト/福田亜由美〈crêpe〉 衣装協力/BELPER CHARLES&KEITH)