2019年のデビュー以降、映画を中心に怒濤(どとう)ペースで出演を重ね、注目を集める河合優実。21年は、映画制作に挑む高校生の青春を描いた『サマーフィルムにのって』や、ある事件の真相を追うドキュメンタリーディレクターを描くなかで物語の重要なカギとなる女子高生・小畑萌を演じた『由宇子の天秤』などで各映画賞を受賞。22年に入っても、30歳の古本店の店主に求婚する女子高生・岬役で出演した『愛なのに』や、対人関係が苦手な女子高生・あおいの不安定な心の振り幅を繊細に演じた『女子高生に殺されたい』など、話題作への出演が続いている。

そして5月27日、河合が心待ちにしていた舞台『ドライブイン カリフォルニア』が、いよいよ幕を開ける。松尾スズキ作・演出の同作は、1996年版、2004年版を経て、今回が18年ぶり3度目の上演。そこへ、新たなキャストとして河合の参加が決定した。20年の『フリムンシスターズ』以来、2度目の松尾作品への出演、阿部サダヲや麻生久美子らベテラン俳優陣の中に飛び込む緊張感とうれしさ、受け継がれてきた同作の歴史をすべて受け止めたうえで、「精いっぱい楽しみたい」と思いを語った。

河合優実(かわい・ゆうみ)
2000年生まれ。東京都出身。19年デビュー。21年出演『サマーフィルムにのって』(松本壮史監督)、『由宇子の天秤』(春本雄二郎監督)での演技が高く評価され、第43回ヨコハマ映画祭<最優秀新人賞>、第35回高崎映画祭<最優秀新人俳優賞>、第95回キネマ旬報ベスト・テン<新人女優賞>、第64回ブルーリボン賞<新人賞>、21年度全国映連賞<女優賞>を受賞。22年5月27日~6月26日、本多劇場で上演の舞台『ドライブイン カリフォルニア』に出演(大阪でも上演予定)。ほかにも映画『百花』『ある男』の公開も決定している

 オファーをいただいたときからずっと2022年を楽しみにしていて、今は「ついに始まってしまうんだ」という気持ちです。デビューして3年、どっぷり映画をやってきて、4年目に入ってがっつり舞台に帰ってこられたっていう感覚があります。松尾さんはすごく優しい方なんですけど、目の奥は厳しいですね。特に「面白くないこと」に対しては怖い(笑)。私は、松尾さんの描くセリフがすごく好きなんです。うまく表現できないんですけど、言い回しやリズムに松尾さんの色を感じますし、独特なんですよね。読んでいて気持ちがいいというか、体になじむ。だから、覚えやすいような気がします。

 私が演じるエミコは一見、明るく気立てのいいバイトの女の子だけど、「実はやることやってる」みたいな感じのキャラクター。この作品は、ドライブインに集まった、いろいろと抱えた人たちの物語なんですけど、その中でポンっと明るくいられたらいいのかなと思います。「新参者で、昔はいなかった女の子」という意味では、3度目の上演にお邪魔する立場として役と重なる部分がありますね。

 稽古に入る前に04年版の映像を見たんです。それ以降、台本を読んでいてもずっと、(当時のエミコ役)の小池栄子さんの声でセリフが再生されてしまうんですよ。22年の『ドライブイン カリフォルニア』をお届けするという前提を分かってはいるんですけど、どうしても小池さんの声がずっとリフレインしています(笑)。でも、そうして受け継がれてきた作品の再演というのは舞台特有のものですし、ほかの役者さんが演じてきたという歴史をちゃんと受け止めながら、自分なりのエミコを演じたいと思っています。演じてきた方の影響を受けてしまうのもまた、愛されて続いてきた作品の面白さだとも思うんです。絶対に面白い皆さん、絶対に面白い物語ですから、それを損なわないように、私が出ることでちゃんと新しいものにできるように、精いっぱい楽しみたいです。

映画・ドラマの話題作への出演が相次ぐ

――舞台への士気が高まる一方で、映像作品の放送や公開も相次ぐ。近未来都市「UA(ウーア)」を舞台にしたドラマ『17才の帝国』(NHK総合)では、AIにより総理に選出された高校生・真木(神尾楓珠)とともに奮闘する若き閣僚・雑賀すぐり役を演じている。米国でMBAを取得した秀才という役どころだ。2022年6月には、2本の映画が公開予定。ある港町を舞台に「人間の業」をありありと描く『冬薔薇(ふゆそうび)』(キノフィルムズ配給)は、阪本順治のオリジナル脚本作。キャストには、小林薫や余貴美子らベテラン俳優が名を連ねる。「75歳以上の高齢者に自ら死を選ぶ権利を保障し支援する」制度が施行された日本を描く『PLAN 75』(ハピネットファントム・スタジオ配給)については、新型コロナウイルス禍で変化した「常識」と思いを重ね合わせた。

 『17才の帝国』の企画書をいただいたとき、すごく面白いなと思いました。現代的ですけど、“ザ・社会派”にもなりすぎない、いいテーマ。特に若い世代の方がどういう風に受け止めるのか、感想が楽しみですね。自分たちを重ねるのか、遠い世界のことだと思いつつも憧れるのか。私は、ドラマの中で行動を起こす登場人物たちを心から応援したくなったんです。見る方も、「私たちも声を上げたら、こんな風に時代を変えられるんだ」と思うかもしれません。演じるうえでも、若手の俳優とベテランの大先輩方との良い化学反応が起きればいいなと思って臨んでいます。近未来のお話ということで、映像がすごくきれいなんですよ。ビジュアルに力を入れていて、これまで見たことのない作品をお届けできると思います。

 『冬薔薇』で演じた智花は、主人公・淳(伊藤健太郎)の先輩・美崎(永山絢斗)の妹役なんですけど、淳とも幼なじみのような関係性。ネタバレなく見ていただきたいので、あまりお話しできないんですが、作中の事件に、智花も関わってきます。シーン数は少ないながら、重要な局面に触れた感じでしたね。大人のパートと、若者のパートがはっきり分かれているので、淳の両親を演じる小林薫さんや余貴美子さんと同じシーンはなかったんですが、ごあいさつさせていただくことはできました。

 『PLAN 75』は『17才の帝国』と同じく、今まさに直面している問題を扱った作品ですね。「75歳になったら死を選べる世界」というのは、私個人の感情としてはすごく嫌ですし、多くの人たちも、今の価値観ではきっと「良い」とは思わないですよね。でも、撮影しているときに思ったんです。新型コロナウイルス感染症が流行して2年で、「マスクをすることやワクチンを打つことは当たり前だ」と、あっという間に私たちの価値基準がひっくり返ったじゃないですか。たったの1、2年で、当たり前って変わるんだ、あまりにも早いなと感じたんです。だから、近い未来、『PLAN 75』のような制度が本当にまかり通るような世界に皆で向かってしまうことって、あり得ないことじゃないんだと思います。SFとして描かれていますけど、人間は簡単に変わってしまう。コロナ禍があったことで、それをリアルに感じましたね。

 倍賞千恵子さんとは本番前に一度、電話口でやりとりするシーンの読み合わせをさせていただいたんです。そのときにすごく心が動いたというか、倍賞さんの声を聞いて感動したんです。その瞬間以上の感情が本番で出なかったら残念だなと思うくらいの気持ちになったんですけど、同時に、この気持ちをちゃんと現場に持っていけたら大丈夫だな、この役できるなという風にも思えました。すごく大きな経験でしたね。

――これまで印象的だった作品を聞くと、小さなコンビニを起点に壮大なファンタジーが展開するミュージカル『フリムンシスターズ』の現場で見たもの、得た経験が衝撃だったと振り返る。キャリアは4年目に入ったが、『由宇子の天秤』『サマーフィルムにのって』により、第64回ブルーリボン賞「新人賞」ほか各賞を受賞したことで、反響の大きさをようやく実感したという。数々の作品を通し、唯一無二の存在感を放つ名優にも出会った。心震わせ、いつか自分もと思いながら「今、このとき」の自分も大事にしたいと話す。

経験を重ねて自分にしか出せないものを

 歌とダンスが好きで、ステージに立つのが楽しいというところからこのお仕事を始めたので、やっぱりルーツは舞台なんですよね。『フリムンシスターズ』も、信じられない夢のような仕事でした。毎日舞台に立てるということがとにかくうれしくて。挑戦するというよりは、ご褒美のような感覚でしたね。長澤まさみさん、秋山菜津子さん、阿部サダヲさんといったモンスター級の俳優である皆さんが、楽しそうに苦しそうに、今なお本気で舞台に取り組んでいる姿を目の当たりにして、大きな刺激を受けました。

 21年に『サマーフィルムにのって』や『由宇子の天秤』が公開されて、「こういう風に反応が返ってくるんだ」みたいなことを経験したばかりなんです。私はSNS(交流サイト)をやっていないので、反響を感じる機会があまりなくて。でも、賞をいただいたことで「人が見てるんだ」ということをすごく実感しました。私にとって1つ、大きな出来事でしたね。特に『サマーフィルムにのって』は、あんなにも多くの方に見てもらえると思っていなかったですし、大人の方から「21年の映画で一番、好きでした」と言っていただくことが多かったんです。見ていただいた方の幅広さが印象的でしたね。

 この先どうありたいかというのは、基本的には決めてないんです。ただ、倍賞さんとお会いしたときや、別のドラマで風吹ジュンさんと共演させていただいたとき、なんだか言いようのない感覚に襲われたんですよね。その感動みたいなものってきっと、お2人が経験してこられた時間があってのものだと思うんです。だから私も、このままちゃんとこのお仕事を続けて経験を重ねていけば、自分にしか出せないものがきっと出てくるんじゃないかなと思っています。一方で、「まだ何も経験を積んでいない自分」だからこそ持っているものについても、同時に考えたい。そして、今はそれを大事にしたいですね。

――最近ハマっているのは、ある監督の作品。見るだけでは飽き足らず「もう、出たい!(笑)」とこぼした本音と笑顔に、ようやく年齢相応の無邪気さが垣間見えた。

 映画は見ていますね。映画館にも行きますし、配信作も見ます。ちょうど昨日見た『英雄の証明』(21年)もすごく良かったです。もともとは邦画をよく見ていたんですけど、今は洋画の方が多いですね。同じ時代に同じ世界でどういうものが作られているのか見ておきたいという感じです。

 最近は、レオス・カラックス監督の作品にハマっています。本当に好きなものに出合ったときはもう、理屈を超えちゃうじゃないですか。そういう感覚に久しぶりにヒットしました。『アネット』(21年)の公開に際して特集されていたんですけど、古舘寛治さんや水原希子さんが出演されていて、もう素直にあの世界に入れていることが羨ましくて。出られるものなら私もいつか、出たいです。

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(カメラマン/中村嘉昭、ヘアメイク/上川タカエ(mod's hair)、スタイリスト/𠮷田達哉)

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