2022年4月8日に最終回を迎えたNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』。3世代にわたる物語の初代ヒロイン・安子(上白石萌音)の、しっかり者の幼なじみ・きぬ役を演じたのが小野花梨だ。安子の孫・ひなた(川栄李奈)編の終盤では、きぬの所在が視聴者の間で話題に。そんななか、最終週にきぬの孫娘役としての再登場したことは、小野にとってもサプライズだったという。ひと息つく間もなく、4月18日放送開始のドラマ『恋なんて、本気でやってどうするの?』(フジテレビ系/月曜22時)に出演、5月には映画『ハケンアニメ!』(東映配給)の公開が控えているほか、5月、6月には舞台『青空は後悔の証し』への出演も決定している小野。活躍の加速度を増しながら、女優として「自分なりの輝き方」を模索している。

小野花梨
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小野花梨(おの・かりん)
1998年7月6日生まれ。東京都出身。2006年、ドラマ『嫌われ松子の一生』にて女優デビュー。21年は、7月期連続ドラマ『ホメられたい僕の妄想ごはん』にてヒロインを演じ、10月公開の『プリテンダーズ』では映画単独初主演を果たした。22年に入っては2月公開の『Ribbon』や、バーティカルシアターアプリ「smash.」で配信された『彼の全てが知りたかった。』と、出演作が続いている

 『カムカムエヴリバディ』のひなた編で、全く出演していないのにTwitterのトレンドに「きぬちゃん」が上がった時は、ありがたい気持ちでした。きぬの撮影がオールアップして、もう出ることはないと思っていたら、再度、出演のお話をいただいたんです。回想か何かとも思ったのですが、蓋を開けてみたらきぬの孫役。同一人物がおばあちゃんと孫を演じるって、3世代を描いている『カムカム』ならではだなって。作り手も楽しんでいるところもすてきだと思いました。もちろん、きぬとの演じ分けは必要ですが、全く別人になってしまうと、同じ人間が演じる面白みがなくなっちゃいますから、そのバランスは監督とお話ししながら作っていきました。皆さんに納得していただける、自信を持ってお届けできた最終回だったと思います。

 朝ドラのオーディションは3回目くらいでした。もちろん憧れもありますし、若手の俳優なら必ず通る道、避けては通れない大きな門だと感じています。きぬを演じるに当たって、大変なんじゃないかなと思ったのは年齢です。達観したきぬのセリフは、23歳の私が言っても面白くないですから。言っていることと年齢のギャップをちゃんと見せないといけないなって、どれだけ幼く見せるかを意識しました。それに加えて、ちょっとした表情を抜いて使ってくださる愛のある編集のおかげで、よりきぬが面白くなっていたと思います。だからこそ、当たり前のことではありますけど、どこを切り取ってもらってもいいよう、常に手を抜かずに取り組みました。

 出演後の反響は、やっぱり桁違いでしたね。どこに行っても「きぬちゃん」って呼んでくださる。うれしさもありつつ「ちゃんとしなきゃ」って思います。朝ドラに泥を塗れませんし、ちゃんとここから羽ばたいていかなきゃいけないなって、身が引き締まる思いでいます。

役についてまず自分で考える

――朝ドラでは激動の昭和初期を生きる女性を演じたが、ドラマ『恋なんて、本気でやってどうするの?』で演じるひな子は、今どきの女の子。見習料理人・柊磨(松村北斗)にまとわりつく“恋多き女”と見せかけて、実は……という役どころだ。

小野花梨
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 役作りでは、キャラクターの歴史を掘っていきたいタイプです。例えば、ひな子は「柊磨にまとわりつく女」と一言で表すとすごく簡単ですけど、そうなるには歴史があって理由があるはずだから、私はそこを考えたい。まずは自分で考えて、「こうだと思ってるんですけど」って監督さんやプロデューサーさんとお話しして、ズレがないようちゃんと最初に合わせてから役に入ります。

 ひな子は、柊磨が特別に大好きなんです。だけど重いって思われたくないから「他にも男の子はいっぱいいるよ」って柊磨に言ってしまう。たくさんの男の子と仲良くしているんですけど、切ないというか、悲しみを感じるんですよね。柊磨への思いが本気だからこそ言えないんです。登場シーンは多くないんですけど、切なくていとおしいキャラクター。ただヒロインの邪魔をするだけではないので、視聴者の方がどういうふうに受け取ってくださるかが楽しみです。共感していただける部分もあるんじゃないかなって思います。

 『ハケンアニメ!』は、アニメを作る側の人たちにフォーカスを当てたお仕事映画で、私はアニメーター役を演じています。アニメーターと聞くと身近に感じづらいかもしれないですが、仕事に対する思いは働くすべての方に通じるところだと思うので、たくさんの方に共感してもらえる作品だと思います。私も、分かるなっていうセリフがたくさんありました。アニメが絡んでいる作品だからお子さまも見やすいですし、一方で仕事をバリバリされている大人の方々、幅広い世代の方に楽しんでいただける映画です。

 舞台『青空は後悔の証し』は、風間杜夫さん演じる元パイロット・ロウを中心とした物語で、もうすぐ稽古が始まります。2022年は2本、ステージに立つ予定なのですが、コロナ禍の影響でなくなってしまった作品もあって、前回の舞台からずいぶん間が空いてしまいました。舞台を見に行くことも多いですけど、映像よりも心に残るものが多い気がするというか、エネルギーが伝わりますよね。出る側としても、小細工ができないし嘘がつけないから、役者の本質が問われる気がします。だから常に、舞台には挑戦し続けなきゃいけないと思うんです。

――子役になったきっかけは、教育番組『おかあさんといっしょ』に映る画面いっぱいの風船を見て「あれが欲しい!」と思ったこと。映画『南極料理人』(09年)で芝居の楽しさを知り、ドラマ『鈴木先生』(11年)で、プロの世界の面白さを肌で感じた。同作の生徒役には、土屋太鳳、松岡茉優ら今をときめく俳優のほか、現在は映画監督として活動する松本花奈など、そうそうたるメンバーが名を連ねる。

 風船が欲しくて、何も分からないまま劇団に入ったものの、年齢制限で番組には出られなかったんですよ。あの番組は、実は選ばれし者の集まりなんです(笑)。そのまま劇団でお稽古したりオーディションを受けたりして、気付いたらこういうお仕事をしていて、気付いたら頑張りたいと思っていた感じですね。

小野花梨
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 小学4年生の時に『南極料理人』っていう映画で堺雅人さんの娘役をやらせていただいたことが、すごく楽しい経験で。この頃から、女優というお仕事に執着したというか、頑張りたいなって思うようになりました。この作品に出てなかったら、のらりくらりやって、どこかのタイミングで「もういいや」ってなっていたかもしれない。子どものときって、小さな出来事がすごく大きく感じるじゃないですか。私の中ではあの作品がめちゃくちゃ大きな出来事で、転機でしたね。

 子役を卒業したなって思ったのは、小学校6年生から中学1年生くらいにかけて出た『鈴木先生』。連続ドラマですけど、監督もスタッフも映画畑の方で、こだわりを持ったプロの現場だったんです。オーディションから始まって、長期間リハをやってワークショップをやって……。「子どもだからいいよ」じゃなく、人間性の部分からしつけられましたね。学校に通いながら、もう1つ教室があるような感覚でした。当時のキャストは、ターニングポイントとしてみんな『鈴木先生』を挙げるんです。私も『鈴木先生』がなかったら、今ここにはいないかもって思うくらい、大きな作品でしたね。めちゃくちゃ怒られたんですけど、そこに愛があるのも分かっていたし、この世界において大事なことをいっぱい教えてもらいました。

自分なりの輝き方を探す

――今後の夢を尋ねると、驚くほど現実的な答えが返ってきた。自分自身をシビアに分析し、必要とされる場所で力を尽くしたいとする小野の姿勢を見ていると、彼女が数々の作品で確かな印象を残す理由が分かる。

 やりたい役も行きたい場所もたくさんあります。ありすぎて、傲慢だなって思われそうで言えないくらい(笑)。でも、やっぱりこの世界って難しいですよね。タイミングや運もありますし、「頑張ります」では上がっていけない世界だなっていうのは、5歳からやっていて痛いくらい感じています。最近デビューした子がもう主演やるんだ、私はずっと前からいるのにな、なんて思うこともありますから。でも、それだけじゃないのもこの世界。映画賞に「助演女優賞」という表彰があるっていうのが、つまりそういうことだと思うんです。

 私は、ふとした風で吹き飛ばされちゃうくらいの存在だと思っていますし、まだ何も成し遂げていない。でも、自分はスコーンって売れてスター女優になるタイプじゃないって分かっているからこそ、自分なりの輝き方がきっとあると思っているんです。そこにたどり着くためにはどうすればいいだろうって考えたとき、大事なのは長く続けること。だから、少しでも息の長い役者になるために、これからどうしていくべきかという考え方になっていますね。そして自分が死ぬ時に「すごく楽しかったな」って思いたい。この世界、一喜一憂してたら心を保てませんから。どれだけ腐らずにコツコツやり続けられるかが大事だと思っています。

小野花梨
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――最近好きなエンタメとしては、事務所の先輩である萩原聖人の影響もあり「Mリーグ」に夢中だという。自らも卓を囲むというマージャンの奥深さ、とりわけチームプレーの面白さについて語り出すと、もう止まらない。

 マージャンそのものの面白さもあるのですが、「Mリーグ」という番組自体がすごく面白いんです。団体戦にしたことによって人の心が出やすくって。自分のMVPは置いといて、2着でもいいから確実にチームをセミファイナルに上げる、そういう自己犠牲的な打ちまわしをする方もいます。一方で、派手な手役で魅了するようなマージャンを打つ方もいれば、着実に点を重ねる方もいる。知れば知るほどハマっていっちゃって。これで負けたらもしかしたらプロはもう無理かもしれないっていうほど追い込まれて戦うこともありますから、皆さん、自分の一生を懸けて打っているわけです。勝ちがあって負けがあって、その両者が美しい。最強のエンタメだと思っています。

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(写真/中村嘉昭)