2022年にさらなる飛躍が予想される、Z世代の期待の新星を取り上げるネクストブレイクファイル。放送中の『卒業式に、神谷詩子がいない』で地上波連ドラに初主演。映画『女子高生に殺されたい』など、話題作への出演が続く茅島みずき。役柄に応じてダンスや柔道など未知の分野に取り組む原動力は、努力を苦にしないひたむきさだ。

茅島みずき(かやしま・みずき)
2004年7月6日生まれ。長崎県出身。19年『恋の病と野郎組』のヒロイン役にて女優デビュー。映画『青くて痛くて脆い』『藍に響け』、ドラマ『ここは今から倫理です。』『SUPER RICH』など話題作に出演。『東京ガールズコレクション』に19年から連続出演中と、モデルとしても活躍している。特技のゴルフは、ベストスコア70

――2月27日から放送中のコロナ禍の高校生活のリアルを描いた『卒業式に、神谷詩子がいない』(日テレ/毎週日曜13時45分)にて連続ドラマ初主演を果たした茅島みずき。さらに、3月23日に放送の大分発地域ドラマ『君の足音に恋をした』(NHKBSプレミアム)で主演し、4月1日公開で田中圭主演の異色の学園ドラマとして注目を集める映画『女子高生に殺されたい』(日活配給)にも出演と波に乗る、今注目の女優だ。アミューズ主催のオーディションでグランプリを獲得し、芸能界入りした茅島は、14歳の時に人気女優の登竜門でもある『ポカリスエット』のCMにて一躍脚光を浴びた。近作の撮影エピソードから見えてきたのは、クールなビジュアルとは裏腹な、努力を苦にしない熱血な素顔。「負けず嫌いなのが私らしさ」だと語る彼女を作り上げたルーツや、目指す道について話を聞いた。

 いつかは主演をやってみたいという思いがあったので『卒業式に、神谷詩子がいない』が決まった時はうれしかったですね。詩子はダンスが上手な役なので、そう見えるようにしっかり練習しました。この作品は、今のコロナ禍の高校生をリアルに表していると思います。私自身、高校入学と同時に上京してきて2年になりますが、食事の時以外はまだクラスメートの顔をちゃんと見たことがないんですよ。面と向かってマスクを外して話すってことも、まだできてない。行事も全部なくなっちゃって、修学旅行も中止になりそうで。そういう高校生らしい思い出を作れないところは、キャラクターたちと重なります。その上で、進路のことや恋愛のこと、友人関係やSNSの問題といった高校生の悩みが現実に忠実に描かれた、まさに「今の時代のドラマ」。中高生の方々に、共感してもらえる部分が多いんじゃないかなと思います。

――「日田げた」を名産とする大分県日田市を舞台とした『君の足音に恋をした』では下駄ダンスと日田弁、芯の強い少女・愛佳を演じた『女子高生に殺されたい』では柔道と、近作では新たな挑戦も多かった。

 『君の足音に恋をした』は青春ラブストーリーではあるんですけど、日田の魅力が詰まったドラマです。景色がきれいで、ご飯がおいしくて、人がみんな明るくて。心が温かくなる作品になっていると思います。「げたを履いてダンス?」って、最初に聞いた時は想像がつかなくって、衝撃でした。振りを踊れるようになったら、次はげたを履いて練習するんですけど、滑ったり痛かったり、なかなかうまく踊れなかったですね。作中では日田弁を話すんですけど、同じ九州でも、私が育った長崎とはまた違うんです。語尾に「けん」を付けるとかは私も使うんですけど、言葉のイントネーションが難しかったですね。でも、日田弁ってすごくかわいいんですよ。

 『女子高生に殺されたい』では、柔道の技をたくさん習いました。練習は3~4回だったんですけど、受け身から始めて絞め技まで教えてもらいました(笑)。愛佳は、1人でも生きていけるような強さを持っている子ながら、東山先生(田中圭)には好意があって、他の生徒と話す時とは少し態度が違う。それが見ている人に伝わるように、メリハリをつけることを意識しました。先生と公園で話すシーンでは「あの時、愛佳は初めて男性とちゃんとしゃべったんじゃないか」ってことを監督と話し合って。だからこそ、動揺している感じを出せたらいいなって、目線を工夫して演じました。

 莉子ちゃんとつかみ合いのケンカをするシーンも印象に残っています。そうしたシーンは初めてだったので、悩みましたね。莉子ちゃんとはこの映画が初共演で『神谷詩子』でも一緒だったので、今はすごく仲がいいんですけど、ケンカのシーンの撮影前はあまりしゃべらず、離れてスタンバイしておいて、本番に臨みました。

――近作3本は昨年の秋頃から始動し、撮影の一部は同時進行。役作りや、作品ごとの切り替えを模索しながらも、同世代が集まる現場はどれも楽しかったという。共演者の芝居を見て、刺激も受けた。

 役作りの方法は、役によってそれぞれです。たとえば詩子は、思いを内に秘める子なので「口には出さないけど、多分こんなことを思っているんだろうな」っていう詩子の気持ちを、シーンごとにひたすらノートに書き出してみました。私は、事前にしっかり役作りをやらないとできないタイプなんです。でも、仲間同士のグループの「ファンファーレ」のメンバーといる時の詩子は、作った笑顔じゃなく、素の笑顔が出るほうがいいって監督がおっしゃっていて。だから6人のシーンは、役を作らず演じています。監督の提案もあって、事前に「タメ口で話そう」って決めて、実際にすごく仲良くなったので、そうした私たちの等身大の仲の良さが出ていると思います。

 最近は、どの作品でも同世代の方たちと一緒だったんですけど、やっぱり現場はすごく盛り上がりますね。だけど「皆さん、お芝居がうまいなぁ」ってたくさん刺激をもらいましたし、自分も負けないように頑張ろうって、改めて思いました。

――祖父の影響で小学2年生の時にゴルフを始め、プロを目指していた茅島。6年生での全国大会優勝を目標にしていたが、挫折を経験した。その際、母に勧められたのが現事務所のオーディション。見事グランプリを受賞し、芸能界入りが決まった。ゴルフに打ち込んだ日々は、茅島の糧になっている。

 ゴルフを始めて、2カ月で試合に出ることになったんです。そのとき、私はハーフ102をたたいて、圧倒的最下位からのスタート。でも考えようによっては、もう落ちようがない、あとは上がるしかないなって。1年のうち360日は練習して、4年生の頃には、18ホールの試合で70台を出せるようになりました。

 どれだけ練習しても勝てなかったり、結果がうまく出なかったりして落ち込んだこともありましたけど、ゴルフに打ち込んだ経験は今もすごく生きていると思います。やっぱりメンタルスポーツなんですよね。ライバルの女の子と4時間一緒に回って、結構バチバチしていますし(笑)。私はもともと人前に出るのが恥ずかしいタイプだったんですが、ゴルフの試合で鍛えられました。このお仕事で、ゴルフより緊張したことはまだないですね。

 オーディションに合格した時は、このまま両方頑張ろうって思ってたんです。でも事務所のレッスンで、うまくできないのが悔しくて。お芝居も、できないなりに純粋に楽しくて魅力を感じていたので、芸能一本で頑張ろうと決めました。

――転機を尋ねると、カメラに向かって叫ぶように歌いながら踊る姿が印象的な『ポカリスエット』のCM(19年)、そして道枝駿佑(なにわ男子)との共演でシェイクスピアの名作に挑戦した舞台『ロミオとジュリエット』(21年)を挙げた。悩みながらもやり遂げた経験が、達成感と学びにつながった。

 ポカリスエットのCMでは、毎日7時間くらい必死でダンスを練習しました。でも、踊れるだけじゃダメで。中高生の悩み、葛藤を表現することが全くできなかったんです。監督からも、前日まで「これじゃあまだダメだよ」って言われて、どうしようって悩んでいたんですけど、当日ふと「そっか、この悩みをそのまま出せばいいんだ」って思って、やり切ることができました。表現力の大切さを学んだ機会だったなって思います。

 『ロミオとジュリエット』で学んだことも多かったです。舞台は、もう少しお芝居の経験を積んでからと思っていたので、まさかこんなに早くやらせていただけるとは思っていなくて。演出家の森(新太郎)さんにビシバシと稽古をしていただいて、なんとかやり遂げることができました。お客さんの反応がその場で返ってくるっていうのは、ドラマや映画にはない、舞台ならではの魅力ですよね。実は、ジュリエットがロミオを思って短剣を刺して死ぬシーンで、短剣がないっていうアクシデントがあったんです。私、もう時が止まったかと思うくらい焦って……。他の演者の方のサポートで無事に演じたんですけど、私のあまりの焦りようを見た森さんからは、あとで怒られました(笑)。でも、すごく達成感のある舞台でした。

――挫折や葛藤も、推進力に変えていく茅島。未来予想図を聞いてみると、負けず嫌いな彼女らしい答えが返ってきた。

 明るいかクールか、分かりやすい役が多かったので、心に闇を秘めているような、二面性のある役に挑戦したいですね。音楽が大好きなので、いつかはそうしたお仕事をやってみたい思いもありますが、今はとにかくお芝居が大好きなので、女優業を頑張っていきたいです。目標は、朝ドラのヒロイン。やっぱり、演じたいですね。

 憧れの女優さんはたくさんいますが、憧れるだけではなく、自分らしさを大事にやっていきたいと思っています。私は、とにかく負けず嫌いなんです。だから、自分が好きなことに対して努力するのは全く苦じゃない。ゴルフをやっていた頃から、毎日練習するのが当たり前だったので、練習というものを嫌だな、苦しいなって感じることがないんです。女優は常にチャレンジしていく職業だし、怖がって失敗を恐れていたら何もできないじゃないですか。今後も、いただいた役に対して丁寧に、楽しみながら取り組んでいきたいですし、誰よりも努力して、誰よりも負けず嫌いでいたいと思っています。

――最後に、最近ハマっているエンタメについて聞いてみると、インタビューでの凛々しい受け答えから一変、17歳らしい素顔をのぞかせた。

 昨日、渋谷駅の広告に載っていたマンガが、すごく好みの絵だったんです。『スタジオカバナ』っていう作品なんですけど、早速読み始めてハマってます。ただ、まだ2巻しか出てなくて。結末まで出てから読みたいタイプなので、もうちょっとあとから読み始めたら良かったなぁって(笑)。少女マンガは大好きで、いつもスマホで読んでますね。あとハマってるのはサッカーゲームの『ウイニングイレブン』。高校サッカーの応援マネージャーをやらせていただいたのを、きっかけにより好きになって。スマホ版で、友達と通話しながら、フレンドマッチで勝負する時間が楽しいです。

/

(写真/佐賀章広、スタイリスト/井坂 恵、ヘアメイク/SAKURA)

1
この記事をいいね!する